今、日本のゲーム音楽が熱い。多様なライブ・コンサート、アプリやYouTubeで広がる楽しみ方

2026.04.30 13:20

今、日本のゲーム音楽が熱い。多様なライブ・コンサート、アプリやYouTubeで広がる楽しみ方

今、日本のゲーム音楽が多彩な広がり方を見せている。ゲーム音楽は作品の世界観やキャラクターの魅力を表現し、プレイヤーに深い没入感を与える要素として欠かせないものだが、昨今ではライブやコンサートなどが開催されたり、専用の配信アプリ・ストリーミング配信が登場したりと、ゲームをプレイしている時以外にもその音楽を楽しめる機会が着実に増えている。

本記事では、多様化するゲーム音楽のイベントや各社の関連サービスなどに触れながら、日本のゲーム音楽の持つ可能性について考えてみたい。

【多様化するゲーム音楽コンサート・ライブ】

ペルソナ

『ペルソナ』シリーズは、スタイリッシュで洗練された音楽や中毒性の高いボーカル入りの楽曲がプレイヤーから非常に高く評価されているゲームだ。同シリーズの世界観を歌やダンスで表現するステージ「ペルソナライブ」は日本国内にとどまらず海外でも上演されている。また、『ペルソナ3 リロード』のサウンドトラック「It’s Going Down Now」が、Billboardの世界でヒットしている日本の楽曲をランキング化した“Global Japan Songs Excl. Japan”にて首位を獲得したこともあり、グローバルな人気を誇っているのも特筆すべき点。

最近では、スピンオフタイトルも含めたシリーズタイトル全般を取り上げたシンフォニックジャズオーケストラ公演を2都市で計6公演実施。さらに、シリーズの中でも特に人気の高い『ペルソナ5』にフォーカスしたビッグバンド・コンサートの開催も決まっている。“ゲーム音楽を本格的な演奏で聴く”ことからさらに踏み込んだ、“アレンジを変えて楽しむ”イベントが続々と展開されていることに、ファンを熱狂させる『ペルソナ』シリーズの優れた音楽性が感じられる。

龍が如く

巨大な歓楽街に生きる男たちの生き様を描く大人気ゲーム『龍が如く』は、シリーズ20年目にして初の音楽ライブイベントの開催が決まっている。同イベントはシリーズのサウンドを象徴するカラオケ楽曲を中心に、バトルBGMやテーマ曲などを全編バンド生演奏で届けるというもの。メインキャラクターの声優である黒田崇矢、宇垣秀成、中谷一博に加え、これまでシリーズを彩ってきたゲストの出演も決まっている。公演は5月16日・17日だが、既に全席種がソールドアウトし、追加座席が出るという盛況ぶりだ。

総合プロデュースを担当する、シリーズのチーフディレクターの堀井亮佑氏は公式コメントにて、今回のイベントは「皆で歌って、盛り上がって、拳を振り上げる」「演者と観客の情熱がぶつかる、魂の『ロックライブ』」を目指すと語っている。男たちが熱い火花を散らす戦闘に加え、歓楽街に存在するさまざまな遊びも詰め込まれた「大人向けのエンタテインメント作品」である『龍が如く』だからこそできる独創的な音楽イベントと言えるだろう。

大神

日本画のようなタッチで表現された和の世界を舞台に、“大神”アマテラスとなって数多の生命を取り戻す冒険へ挑むアクションアドベンチャー『大神』。今なお世界中のゲームファンから愛され続けており、完全新作の制作も決定している同タイトルも、発売20周年を記念してシリーズ初となるコンサートを開催した。

『大神』は内容に加えて音楽面での評価も高く、中でも楽曲「太陽は昇る」は、ゲーム総合誌『週刊ファミ通』が2019年に行った、ゲームファンがもっとも心に残ったゲーム音楽を選出する企画で1位を獲得したほど。コンサートでは、「太陽は昇る」の作曲でも知られる近藤嶺氏が演奏される全曲の編曲を担当し、演奏には国内外で活躍する和楽器奏者ユニット「AUN J CLASSIC ORCHESTRA」が参加。和楽器と管弦楽の協演という形は『大神』の和の世界観とマッチしており、名作の思い出を鮮やかによみがえらせる効果的な試みだ。

スクウェア・エニックス

『ペルソナ』『龍が如く』『大神』は人気タイトルに特化したコンサート・ライブだが、複数タイトルの音楽を扱うイベントも開催されている。『ファイナルファンタジー』『クロノ・トリガー』『キングダム ハーツ』など、数多くの人気タイトルを有するスクウェア・エニックスは、同社のゲーム音楽をフルオーケストラで聴くコンサートを開催。先日行われた日本公演を皮切りにロサンゼルスやロンドンなどでの海外公演も予定されており、世界を見据えた展開をしている。

また、7月に開催されるゲーム音楽ライブイベント『GAME MUSIC JAM – Level 1』にも注目したい。こちらはフルオーケストラで演奏される前述のイベントと異なり、選び抜かれた楽曲たちを、ゲストやボーカルを招きつつバンドアンサンブルで再構築するという形だ。スクウェア・エニックスは日本を代表する大手ゲーム会社の1つであり、人々の記憶に残る名作を世に送り出してきた存在。ことゲーム音楽に関しても、さまざまなイベントを打ち出し、積極的に魅力を発信しようという姿勢がうかがえる。

【ゲーム音楽に関する各社の動向】

ここで各社のゲーム音楽に関する近年の取り組みを見てみると、任天堂は2024年10月から、有料サービス「Nintendo Switch Online」加入者向けサービスとして『Nintendo Music』を配信開始。これは『マリオ』『ゼルダの伝説』『スプラトゥーン』『どうぶつの森』など、数々の任天堂のゲーム音楽が聴けるスマートフォン向けアプリだ。曲を聴く以外に、テーマに沿って作成されたプレイリストが公式で用意されているほか、設定した時間の間に音楽をループさせて作業用BGMにできる「ながさチェンジ」機能も搭載。ゲーム音楽を日常のさまざまなシーンで楽しむスタイルを提案した、画期的なサービスだ。

スクウェア・エニックスは2019年6月から、同社の音楽専門レーベル「SQUARE ENIX MUSIC」が国内外の各配信サービスでストリーミング配信を開始した。さらに2022年3月にはYouTube Musicでサウンドトラック150作品・全6106楽曲を一斉に解禁するという力の入れようだ。SQUARE ENIX MUSICの公式YouTubeチャンネルでは、ゲームのシリーズごとのプレイリストに加えて、ファンが楽しめるようなテーマに沿って作られたプレイリストも公開。音楽配信サービス・YouTubeというユーザーにとって身近なコンテンツを強化することで、新たな層がゲーム音楽に触れる機会を創出している。

また、2025年11月には、ユニバーサル ミュージック合同会社のパートナーシップビジネス部門VMGと、ゲーム領域に特化したサウンドプロダクション株式会社ノイジークロークが手を組み、新サービス「Game Music & Artists」を開始したのも興味深い。このサービスはゲーム制作会社向けに提供され、ゲーム音楽に関するクリエイター/アーティストのキャスティングを含む企画・制作・実装からマーケティングのサポートまで行うというもの。ゲーム音楽の国際的な需要の高まりとさらなる発展を見据えた、先進的な取り組みと言えるだろう。

【広がるゲーム音楽の多彩な楽しみ方】

2021年の“東京五輪 2020”の開会式で選手が入場する際のBGMとして、日本から生まれた人気ゲームの楽曲が使われるというサプライズ演出が記憶に残っている人も多いだろう。他にも、2023年の第65回グラミー賞では、ゲーム音楽を対象とする新部門「Best Score Soundtrack for Video Games and Other Interactive Media」が新設されるなど、ゲーム音楽の国際的な評価は目に見える形で高まっている。

そんな中で、ゲーム音楽がエンタメ・芸術方面と結びつくパターンも増えつつある。プロフィギュアスケーターで、かねてよりゲーム好きを公言している羽生結弦は、自ら企画・台本・出演・制作総指揮を務めるICE STORYの第3弾「Echoes of Life」にて、『ペルソナ3 リロード』の戦闘曲を用いたプログラムを披露。ゲームでキャラクターが“ペルソナ”を召喚する時の特徴的なモーションや、ラップに合わせたダンスを取り入れ、自身の表現と作品の世界観を見事に融合させて大反響を呼んだ。

2023年には、不朽の名作ゲーム『ファイナルファンタジーX』の物語が新作歌舞伎となって上演され、好評を博した。これは作品に魅了された俳優・尾上菊之助が歌舞伎化を熱望して実現したもので、中村獅童・尾上松也ら豪華な顔ぶれが、『ファイナルファンタジーX』と歌舞伎が織り成す新たな世界観を提示。海外の『ファイナルファンタジー』ファンからも関心が寄せられ、世界配信も行われた。この歌舞伎では、ゲームの印象的な楽曲は和楽器を用いたアレンジで披露されており、その魅力を再発見したファンも多かったのではないだろうか。

日本のゲーム音楽は今、趣向を凝らしたコンサート・ライブで本格的な演奏を味わうことができたり、専用アプリやストリーミング配信で日常的に聴くことができたりと、実に多彩な楽しみ方が広がっている。これまで以上に、人々にとって身近で親しみやすい存在に進化していくことだろう。

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