日本一カッコいい水道メーター蓋、島根県で見つかり話題に 地元民からは「知らなかった」の声も

2026.01.20 11:00
提供:Sirabee

島根県出雲市の水道メーターに刻印された「謎のクリーチャー」の姿が話題に。出雲市上下水道局は「出雲の水と関係が深いヤマタノオロチ」と、説明する。

日本には古来より伝わる数多くの神話・伝承が存在する。しかし、あまりに身近すぎると、その歴史的価値を見過ごしてしまうことも。


X上では、島根県出雲市の水道メーターのデザインに驚きの声が多数上がっていたのをご存知だろうか。



この水道メーター蓋、何かがおかしい...


今回注目したいのは、Xユーザーのソータさんが投稿したポスト。こちらの投稿には、水色を基調とした横長の、いわゆる「水道メーター」の蓋が写った写真が添えられている。


ヤマタノオロチのデサイン蓋
画像提供:ソータさん

一風変わっているのはそのデザインで、無数の頭を持つ蛇のような生き物が放射線状の形に描かれていた。思わず首を傾げてしまうが、ポスト本文を読んで即座に納得。


https://twitter.com/sootan14/status/1991062458967208233?s=20


そこには「島根の水道メーターがヤマタノオロチでかわいい」と、綴られていたのだ。


確かに言われてみれば、蛇の頭の数は8つ。島根県出雲市は日本神話と密接な繋がりのある土地であることから、こちらはヤマタノオロチと見て間違いないだろう。


当該のポストは瞬く間に話題となり、Xユーザーからは「デザインが素晴らしすぎる」「ヤマタノオロチのモチーフを知った上で見ると、感慨深いものがある」「この水道メーターの蓋が欲しい!」「こういう遊び心あるの本当好き。これだけでもその土地・その街に行ってみたいと思えるし、こういう些細なことが素敵すぎる」など、称賛の声が多数上がっていた。



出雲市は「2001年から使用開始した」と説明


ポスト投稿主・ソータさんに話を聞いたところ、当該の蓋は島根県出雲市にある十六島(うっぷるい)という岬で発見したものだという。


島根県、出雲市それぞれに確認すると、当該のデザインは出雲市にて使用されているものであると判明。そこで今回は、市内の水道を管理する出雲市上下水道局に詳しい話を聞いてみることに。


その結果、出雲の人々の「地元愛」を強く感じさせるエピソードが多数明らかになったのだ。


当該の蓋が誕生した経緯について、水道局の担当者は「市内の給排水・水道設備工事等の専門事業者で組織された『出雲管工事事業協同組合』が、2000年11月にデザイン蓋の作成を企画・公募したところ96点の応募があり、その中から選ばれたデザインを2001年4月から使用開始しています」と、説明する。


これは2001年が「旧出雲市制60周年」であること、および21世紀を迎えることを記念して企画されたものだという。


担当者は「出雲市においても、市民の水道事業への関心を高めることができる企画であることから、公募に関する広報を行なうなどして制作に協力しました」とも補足している。


ヤマタノオロチのデサイン蓋(右が旧デザイン)
画像提供:出雲市上下水道局

なお、デザイン蓋は現在も現役バリバリで市内の水道を見守っているが、今回Xで話題になったFRP(繊維強化プラスチック)製は既に生産が終了。現在は鋳物製が生産・使用されているそうだ。



それにしてもこの市、ノリノリである


デザイン蓋が誕生した経緯は分かったが、なぜヤマタノオロチのデザインを採用したのだろうか。


「スサノオのオロチ退治」
画像提供:出雲中央通商店街

その理由について、水道局の担当者は「ヤマタノオロチ(八岐大蛇)は、日本最古の歴史書『古事記』に記されている出雲神話のひとつに登場します」と、前置き。


「スサノオのオロチ退治」
画像提供:出雲中央通商店街

続けて「ヤマタノオロチ伝説の解釈は諸説ありますが、出雲市を流れる斐伊川(ひいかわ)がヤマタノオロチの正体だとする説もあります。この斐伊川の地下を流れる伏流水は、出雲市の一部地域の水道水の水源にもなっています。このように出雲地域とヤマタノオロチの関連性は深く、水道メーターボックスの蓋だけでなく、下水道のマンホールにもヤマタノオロチがデザインされています」と、出雲という土地とヤマタノオロチの関連性について説明してくれたのだ。


出雲市のマンホール蓋
画像提供:出雲市上下水道局

さらに、2020年から開始している自動車の「図柄入りご当地ナンバープレート」でも、「出雲」プレートはヤマタノオロチをデザインしていることが判明。それにしても出雲市、ノリノリである。


図柄入りご当地ナンバープレート「出雲」
画像提供:出雲市上下水道局

かつては人々を恐怖のどん底に叩き落としていたヤマタノオロチ。そんな恐怖の象徴が1000年以上の時を経て、地元の顔である「ご当地キャラ」に定着したことを思うと、胸が熱くなってこないだろうか。



出雲市民も「オロチだとは知らなかった...」


なお、水道局および出雲管工事事業協同組合からは「導入してから20年以上経つが、今までほぼ話題になってこなかったので嬉しい」「導入当初は『好みでない』という批判の声もあった」とのコメントも寄せられており、世の中何がきっかけでバズるか、改めて分からないものである。


そこで続いては視点を少し変え、出雲市の人々に「水道メーター蓋のデザインがヤマタノオロチと知っていたか?」と、質問してみることに。


出雲市・須佐神社
画像提供:出雲中央通商店街振興組合

取材に協力してくれたのは、出雲中央通商店街振興組合の皆さん。同商店街には須佐之男命(スサノオノミコト)の御霊を祀り、『出雲風土記』にも登場する由緒ある古社・須佐神社や、その分祀・八雲神社といったパワースポットが存在する。


出雲市・八雲神社
画像提供:出雲中央通商店街振興組合

また、八雲神社へのお参りで、願い事を書いた御札を高瀬川の流れに委ねる「ねがいびな」も有名である。


https://www.instagram.com/p/DLyYsEEBVN1/?img_index=1


質問に対しては、「全国の水道メーターが話題になっていることは知っていたが、出雲市がオロチをモチーフにしていることは知らなかった」「柄に見覚えはあるが、オロチがデザインされているとは知らなかった。花か何かだと思っていた」などの回答が得られた。


もちろん「オロチのデザインを認識していた」という人もいたが、「当たり前のように見ていたので不思議に思ったことはない」ともコメントしている。


「インフラ」は我々の生活になくてはならない重要な存在だが、1周回って「あるのが当たり前」の存在として、注意が払われないケースも多い。特に、それが毎日のように見かける「地元」のものであれば、尚更である。


地元のインフラ設備にまつわるデザインを注視してみると、地元の歴史や文化の再発見があるかもしれない。



執筆者プロフィール


秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。


新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。


X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。道路・鉄道ネタに関する取材で、国土交通省や都道府県警、全国の道路事務所、鉄道会社に太いパイプを持つ。


(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ)

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