「人が死んでいるのに、原因を消してしまう社会」――『終幕のロンド』脚本家・高橋美幸が“遺品整理人”に託した視点
最愛の妻に先立たれて、シングルファーザーとして生きる遺品整理人の鳥飼樹が、遺品に刻まれた“最後の声”に耳を傾けることで、残された者へのメッセージを解き明かすヒューマンドラマ『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』。鳥飼と大企業グループ専務の妻との許されざる恋愛の行方も話題の本作が、12月22日(月)にクライマックスを迎える。脚本を担当した高橋美幸氏に、制作の裏側を聞いた。(前後編の前編)
――どのように『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』のご依頼があったのでしょうか。
高橋 大きな枠組みとして、遺品整理人が主人公で、1話完結ではない連続性のあるもの、資産家の妻との大人のラブストーリーという柱はご依頼の段階からありました。遺品整理人の生き様を描きつつ、いろいろな終幕を描いていくというものでした。
――主人公の遺品整理人・鳥飼樹(草彅剛)と、大企業グループ「御厨(みくりや)ホールディングス」次期社長の妻・御厨真琴(中村ゆり)との許されざる恋とともに、14人もの自殺者を出し、死の真相を隠蔽する御厨ホールディングスの闇も描かれています。
高橋 遺品整理の取材をする中で、実際にあったケースを幾つも出していただいたんですが、その中で強く印象に残ったのが御厨ホールディングスのような事例でした。ある組織で働いていた方が自死をされた時に、自死につながった労働時間や職場環境のことなど、もしかしたら機密事項にあたるご遺品を、ご遺族様より前に組織側が入って持っていってしまうという話を聞いたんです。それも1件や2件じゃないと。それを聞いた時に、このドラマで描くべきは遺品整理人の立場から見た社会だなと思ったんです。会社に不都合な人間、特に自死をした方に対して、企業なり組織なりが責任逃れをしているのではないか。それは、いじめ問題にも通じることです。
――いじめが原因で自死した生徒がいて、学校側が調査した結果、「いじめの証拠はありませんでした」と発表した事件は何度も繰り返されていますよね。
高橋 人が死んでいるにもかかわらず原因を消してしまう。自死だけでは証明になりませんからね。『終幕のロンド』をサスペンスにするつもりはなかったんですが、遺品整理人を描く上で、そうした部分も描きたくて、樹が働く遺品整理会社「Heaven’s messenger」の磯部豊春社長の息子が、勤務先の御厨ホームズが原因で自死したエピソードを1話から少しずつ入れていきました。
――ドラマの監修は、遺品整理や特殊清掃を行う「遺品整理クリーンサービス」の代表・増田裕次さんが務められています。
高橋 ご遺族様に寄り添ったきめ細かいサービスをされている増田さんの会社が、今回のドラマに向いているということで監修をお願いしました。1話につき3回くらいは通っていて、作業内容、仕事道具、一日のスケジュールなど、細かくお聞きしました、実際に遺品整理の現場にも一度同行しました。
――取材を通して、どのような印象を持たれましたか。
高橋 増田さんの他にも遺品整理に携わっている方にお話を伺ったのですが、介護関係や医療関係の方々とホスピタリティが似ているんですよね。「ここまでが業務です」と明確な線引きをしていないんです。業務とは関係のない相談事も電話で受けていますし、「兄弟はたくさんいるのに、遺品整理をするのは私だけなんです」と言った愚痴にも耳を傾けているんです。遺品整理は孤独な作業だから、そういうコミュニケーションが大切なんです。孤独だと、文句や苦情からじゃないと人とつながれないこともあるじゃないですか(笑)。受け止める良心や矜持を持っている人じゃないと務まらない仕事だと思いましたし、それが鳥飼樹という一本気なキャラクターにつながっていきました。
――そんな樹が真琴に惹かれていく描写にも説得力があります。
高橋 「大人のラブストーリー」については逆算して、恋愛とは一番遠い「今も亡き妻を思っている男性」というキャラクターにする事によって、より深い葛藤が生まれるのではないかと思いました。通常、許されざる恋は、その関係になってから悩むじゃないですか。でも樹と真琴の場合は、そうなる前に悩むんです。男と女として惹かれているけど、距離感を測りながら、少しずつ近づいていく。真琴が樹を公園に呼び出し、樹がペットボトルのお茶を渡すところから始まって、真琴の母・こはるの生前整理を通じて近づいていくけど、あくまで業者と顧客のご家族という立場を崩さない。
――お互いに惹かれているけれど、その気持ちを心の中にしまっておきます。
高橋 恋心はあるけど、お互いに家族がいます。真琴の母親のこはるは妻帯者と恋に落ち、駆け落ちをした過去があって、その人との間に真琴を身ごもります。そんな母親に対して真琴は嫌悪感を持っていますし、だからこそ樹の子どもへの影響も考えざるを得ません。そうやって人と人との関わり合いの中で、収まりきれない感情がどのように出てくるのか、そして二人はどういう落としどころを見つけるのか。煩悶することが、自分を守ることであるし、家族を守ることであるし、相手を守ることでもあるんですよね。
――第8話で真琴は、もう樹とは会わないと伝えて、別れ際にキスをします。
高橋 キスをするかどうかは脚本を作る段階でもたくさん議論した部分ですね。お互いにお互いが好きなんだけど、お互いがお互いに片思いするみたいな感覚のラブストーリーができないかなというのが頭にあったので非常に難しかったです。さらに遺品整理を絡めるわけですから、草彅さんだからこそ、より説得力のあるキャラクターになったと思っています。草彅さんをイメージして、生真面目で、自分に嘘がつけなくて、少し天然。そういう主人公にしたんですが、実は真琴も似たタイプで、同じように不器用なんですよね。だからこそ出会って間もない時点でシンパシーを感じ、樹に本音をぶつけられるし、素直になれるんです。
▼『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』毎週月曜よる10時放送(カンテレ・フジテレビ系)
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