草彅剛だから成立した静かな激情『終幕のロンド』脚本家が明かす“演技の凄み”
最愛の妻に先立たれて、シングルファーザーとして生きる遺品整理人の鳥飼樹が、遺品に刻まれた“最後の声”に耳を傾けることで、残された者へのメッセージを解き明かすヒューマンドラマ『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』。鳥飼と大企業グループ専務の妻との許されざる恋愛の行方も話題の本作が、12月22日(月)にクライマックスを迎える。脚本を担当した高橋美幸氏に、制作の裏側を聞いた。(前後編の後編)
――草彅剛さんの演技については、どのように感じられましたか。
高橋 非常に難しいキャラクターをお願いしてしまいました。たとえば、第4話では真琴と二人でこはるを病院から連れ出したり、生前整理の一環で、真琴の父親を捜しに伊豆に行って図らずも一夜を共にする時でも、抑制された演技の中に鳥飼さんならではのキャラクターが滲む様に演じて下さいました。
二人とも自分の心に嘘をつけない人たち。一生のうちに本気で誰かを好きになる経験は限られるじゃないですか。たとえ結婚していて、この人のことが好きだと思う気持ちがあっても、それをどう行動に移すかは個々の判断。もちろん心が通じ合えば不倫という見方をする人もいますが、樹と真琴は、互いを思いながら必死に適切な距離を保とうとしている。草彅さんの演技は、どんなに激しいセリフがあっても、日常に溶け込むような静かさがあります。ところが、ある瞬間にマグマのような、抑え切れない感情があふれる。それがいつ出てきてもおかしくない静かさがあるのが素晴らしいなと思いました。
――真琴を演じる中村ゆりさんの印象もお聞かせください。
高橋 真琴はお金持ちの奥さんですが、婚家の価値観についていけなくて迷っています。回を追うごとに自分の意志が明確になっていきますが、未熟さが目立つキャラクターでもあるので、俳優さんによっては抵抗感のある役なのかなと思います。ちゃんと母親のことは思っているけど、うまく愛情表現できない。あまりにも樹が優しいから、思わず当たっちゃう。そういう未熟で優柔不断で意志薄弱な真琴から、中村さんは一歩も逃げずに演じているという印象があります。真琴の悪いところも嫌なところも、逃げることなく挑んでいるんですよね。
――真琴は回を重ねるごとに成長していきます。
高橋 樹の生き方が、真琴が本来持っている生き方と合っていて、それによって彼女も目覚めていく。中村さんが未熟さを真正面から演じてくださったからこそ、その変化が生きてきます。
――真琴は新人絵本作家でもあり、絵本がキーワードの一つです。
高橋 実の父親が絵描きで、子どもの頃から絵を描くのが好きというのもあって、真琴の唯一の拠り所が絵本であり、価値観が全く違う御厨(みくりや)家という環境の中で生き抜くためのアイデンティティでもあるんです。
――遺品整理についてもお聞かせください。樹は遺族が処分して良いという遺品に価値を見出し、その遺品の大切さを遺族に気づかせます。実際に、そういうことはあるのでしょうか。
高橋 親と離れて暮らしていたりすると、実家にはものがいっぱいあり過ぎて、「すべて捨てちゃってください」「価値のあるものだけ取っておいてください」というご遺族様が多いんです。そのような場合でも増田さんは、遺品整理をしながら、「これは必要なんじゃないか」という当たりをつけて、金目のものじゃないご遺品も含めて、幾つか取っておくそうなんです。たとえば、お花の先生の遺品整理を請け負ったときは、華道教室の看板を取っておいて、遺族の方に「いらない」と言われても、何度も説得して、取っておくことになったそうです。
――お節介と受け止められる可能性もありますよね。
高橋 亡くなったばかりだと、動転していたり、とにかく早く終わらせたいという気持ちになっていたりして、正常な判断ができないこともあります。樹のセリフにもありますが、思い出の遺品を一回処分してしまったら、もうお金では買えませんからね。
――遺族に寄り添っているからこそ、そこまでの心遣いができるのでしょうね。
高橋 地方の広い一軒家なんかだと、ご両親しか住んでいなくても、家を出て行った子どもの荷物や、亡くなったおじいちゃんとおばあちゃんのご遺品なども残っているので、とんでもない数の家財があります。それを片付けるのは大変なことです。しかも今は通販も充実していて、買うこと自体が日頃のストレス解消になるので、どんどん物が増えていきます。田舎は大きい家が多いから、いくらでも保管できますしね。そういう場合は遺品整理人の方の助言が大切なんです。
――少子高齢化で、ますます遺品整理人の需要も高まっていく一方です。ドラマでは孤独死の問題にも触れられていますが、こちらも年々増加しています。
高橋 去年、1人暮らしの自宅で亡くなった方は約7万6000人。また死後8日以上たって発見された「孤立死(孤独死)」のケースは、約2万1800人というデータもあります。孤独死は特殊なことではなくて、誰の身にも起こりうることです。子どもと別々に暮らしている親御さんも多いですし、ご夫婦で住んでいてもパートナーに先立たれたら一人ですし、結婚していない人もいます。高齢者に限らず、単身で住まれている方が多いので、ますます孤独死は増えていくでしょう。
――一人暮らしのこはるは余命3ヶ月を宣告されて、樹に自ら生前整理を依頼しますが、実際にそういうケースは珍しくないのでしょうか。
高橋 生前整理は、お父様やお母様が介護施設に入る前に、ご家族の依頼でやるケースが多いそうです。ただ、ご自身で生前整理をする方もいて、一人では大変だからと、ご依頼者と一緒に進めていくサービスもあるそうです。
――最後に最終回の見どころをお聞かせください。
高橋 どうやって、たくさんの伏線を回収するんだというご意見をいただいていますが、ちゃんと最終回で回収します(笑)。7話までの樹は、遺品整理を通して、ご遺族様の思いを受け止めてきました。ところが第8話に出てくる御厨ホームズの14人目の被害者・小林太陽の自死だけは受け止めきれなかった。プロとしての仕事は果たすけど、何か消化しきれない怒りの感情を樹自身も背負ってしまう。御厨ホームズの「ご遺品のない遺品整理」―――樹の怒りがどう爆発し、どこに向かっていくのか楽しみにしていて下さい。
▼『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』毎週月曜よる10時放送(カンテレ・フジテレビ系)
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