撮影/松山勇樹

「地獄の下積みも青春やった」見取り図・盛山が語る“勘違いから始まった芸人人生”

2025.10.24 06:03
提供:ENTAME next

見取り図・盛山晋太郎の『しばけるもんならしばきたい』(幻冬舎)が10月4日に発売された。2020年5月から約5年間にわたって『小説幻冬』で連載していたエッセイをまとめた盛山初の著書で、活躍の場を広げてきた盛山の歴史を知ることができる。また、撮り下ろしのグラビア8ページにはサッカーをする様子や敬愛するブラックマヨネーズ・吉田敬のエッセイを読む様子なども収められている。今回は、著書発売に合わせ盛山にインタビューを実施。前編では、これまでや芸人としてのターニングポイントなどについて話を聞いてみた。(前後編の前編)

――盛山さんの少年時代から聞かせてください。子供の頃、どのようなタイプでしたか。

「大阪のベタな子供でしたね。目立ちたがりでふざけたり、文化祭では漫才したり。大阪の『じゃりン子チエ』みたいなお笑い好きの子供でした」

――昔から周囲を笑わせていたんですね。

盛山 笑わせようとしていたんですけど、体感では8割スベっていました。チャレンジしていただけで爆笑とかはなかったです。こういうやつって地元で明るいってだけで、普通はプロ目指さないですよね。何を勘違いしたのか、そこで芸人の門を叩いてしまったタイプです(笑)。

――芸人になろうという思いは元々あったんですか。

盛山 中学の頃は漠然とお笑い芸人ってかっこええなと思ってはいたんですけど、なりたいというのはなかったですね。卒業文集には「学校の先生になりたいと」とか書いていたかもしれない。明確にお笑い芸人を目指したのは高校ぐらいかな。

――そんな盛山さんが養成所のNSCに入ってみて最初に感じたことは何だったのでしょうか。

盛山 みんなオモロイなと思いました。今のNSCとは違って、当時はもうどうしようもないやつが入るような場所で、地元のオモロイやつが集まっていた。最初はちょっとびっくりしましたね。

――盛山さん自身はどうだったのでしょうか。

盛山 入ってからもずっと勘違いしていたかもしれないですね。漫才やりたいとかコントやりたいとかもなく、漠然と芸人になりたいと思っていたので。まさかツッコミ役をやるとは思っていませんでした。

――いわゆる下積み時代が始まるわけですが。エッセイによるとその時代も青春として楽しんでいたように思えます。

盛山 でも、10代の頃と違ってその最中にいるときは地獄やと思っていましたね。ほんまに人生捨ててるかもしれんと。今振り返れば楽しかったなとは思うけど…。大人になるってそういうもんなんですかね。カネ無いなりにルームシェアして、毎日どうしのぐかと考えるのは楽しかったですね。

――やはり金銭面は苦しかった。

盛山 むちゃくちゃ苦しかったですよ。今はお給料いただいていますけど、まだ20代の頃のマイナスを取り返せていないと思います(笑)。

――そこから浮上するきっかけはなんだったのでしょうか。

盛山 やっぱりM-1(グランプリ)ですね。1回出て大フィーバーというタイプでもないし、飛び道具のある漫才をやっていたわけでもないから、3回(2018年~20年)出てやっと地に足ついたというか、仕事をいただけるようになった感じですね。

――最初に決勝に勝ち上がったとき(18年)は、やはり特別な思いがありましたか。

盛山 そうですね、恥ずかしながら泣きました。やっぱり僕らの世代は、もうとにかくM-1がすべてで、その舞台に行けたのは嬉しかったです。借金返せるかも! とすぐに頭をよぎりましたけど(笑)。

――ただ、実際に見取り図さんがブレイクするのはもう少し後になります。当時は「アレ?」となりましたか。

盛山 めちゃめちゃなりました。思ってたんと全然違うって。ただ、最下位やったらまだしも9位なんでイジられませんし、誰の脳裏にも残っていなくてまずいなとは思いました。初めて決勝出たときはトップバッターだったので、体感2分で終わりました。もちろん、状況が変わりはしましたけど、激変したかというとそんなことはなかったですね。

――3年連続で決勝に行けたのが大きかったんですね。

盛山 そのときは3回も出られて嬉しかったんですけど、今は3~4回が当たり前ですもんね。真空ジェシカやオズワルドを見てもそうですけど。ましてや令和ロマンはトップバッターで連覇ですから。それに比べたら3回出たなんてなんでもないです(笑)。

――M-1で変わった一方、大阪では決勝に行く前から劇場を中心に名が知られていましたよね。

盛山 確かにそのときはバイトもせず普通に生活できていました。ただ、自分が完全に悪いんですけど、ずぼらでマネーリテラシーがなさすぎてめちゃくちゃ借金していました。同じ給料のはずのリリーは貯金できていましたから。

――さすが芸人というエピソードですね(笑)。

盛山 いやいや。カッコつけてるわけじゃなくて、ほんまにだらしなかっただけです。芸人は周りもそんなやつばっかじゃないですか。だからそれがスタンダードに思えて麻痺していました。でも、地元に帰ってみて友達と話すと、「俺めっちゃやばいかもしれん」と思いましたね。お笑い仲間じゃない人と喋ると、やっぱり物差しになります。

――地元に帰ると、今や盛山さんも有名人として鼻高々なんじゃないですか。

盛山 1カ月前に帰って、その時は150人くらいと写真撮りました。年に1回は絶対に帰るんですけど、迷惑かからんようにとは思いますね。ただ、こんなに写真撮ってもらえる存在になったぞ! とかは一切ないです。

――チヤホヤされたい、というのはないんですね。

盛山 僕が憧れたときのお笑いの世界ともう全然違うじゃないですか。昔は「有名税1億円」と言われていたけど、今はSNSもあるし、1兆円超えちゃうかなと思います。僕は本名でやっているから、宅急便や出前でもSNSで「見取り図のデカいほうだった」とか言われて(笑)。まあでも、それ差し引いても目立ちたいというのはあるんかな。

――そう考えると、コンプライアンスもそうですが、芸人さんからすると生きづらい世の中になってきているかもしれません。

盛山 そうですね。ただ、番組中の発言でお叱りを受けたことはありますけど、今はもう辛さとか感じないかもしれない。だって、もし国から「今後コンプライアンスはなしになります」って発表があったとしても、やることは変わらないと思うんでね。一緒にこのコンプラでやっていくしかないし、逆になくなるほうが怖いですね。

◆劇場に住んだ日々——振り返る芸人の原点

――ところで盛山さんは劇場、賞レース、テレビと様々な場所で戦ってきましたが、一番成長した場所はどこだったのでしょうか。

盛山 劇場かもしれないです。当時は『5upよしもと』という名前で若手の劇場だったんですけど、あれがなかったらどうにもなってなかったです。それこそ住んでいたようなもんなんで。

――住んでいたんですか。

盛山 家追い出されてね。住所を劇場にしてて、まあ見たら大阪の一等地ですよ(笑)。そこでは当時一緒にやっていた霜降り(明星)とかコロチキ(コロコロチキチキペッパーズ)が世に出ているんで、間違ってなかったんやとは思いますね。

――当時切磋琢磨していたから、今があるんですね。

盛山 ほんまに懐かしいですね。当時は30分公演があって、30分休んでまた次の公演始まるみたいな感じでスケジュール真っ黒でした。あれは修行でしたけど、日々が血肉になりました。すぐネタ合わせしてネタ試して、ゲームコーナーやトークコーナーがあったり。モノボケとかギャグとか替え歌とか、世の中に出たら使うことないんですよね(笑)。でも、どっかでためになっていたんやと。

――当時の感情は楽しいなのか、しんどいなのか、忙しいなのかどうだったのでしょうか。

盛山 でもやっぱり「楽しい」が勝っていたかもしれないです。「青春時代シーズン2」っていやいう感じですかね。本当にみんなキラキラしてたんで。

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