

漫画『妹なんか生まれてこなければよかったのに』が描く“きょうだい児”の現実…婚約破棄、葛藤、孤独
近年、大きな注目を集めている「きょうだい児」。障害のある兄妹姉妹がいる人を指す言葉で、テレビドラマなどにも取り上げられ、社会的テーマとして注目されるようになった。そんな中、きょうだい児を主人公にしたコミック『妹なんか生まれてこなければよかったのに』がSNSを中心に、じわじわと話題になっている。社会福祉士の資格を持ち、様々な福祉現場での勤務経験を持つ著者のうみこさんに、本作を描いた経緯や、きょうだい児の現状を聞いた。(前後編の前編)
――うみこさんは福祉現場での勤務経験があるそうですね。
うみこ 社会福祉系の専門学校を卒業して、社会福祉士という国家資格を取得して、卒業後は介護施設、児童養護施設、病院の相談員など、ずっと福祉業界にいました。
――「きょうだい児」という言葉は、いつ知ったのでしょうか?
うみこ 2、3年前ぐらいに旧Twitter(現X)で話題になっていたのをきっかけに知りました。福祉業界で働いていても、「きょうだい児」という言葉を聞いたことがなくて。障害者の方や、そのご両親との交流はあったのですが、ご家族のきょうだい児の方々と接する機会がなくて、気にも留めていませんでした。
――きょうだい児をテーマにした経緯をお聞かせください。
うみこ 旧Twitterの投稿で、大人の立場になったきょうだい児の皆さんが自分の気持ちをつぶやかれているのを拝読して、「こんなにしんどい思いをされていたんだ」と衝撃を受けました。ある日、今回の担当編集者の方から、「一緒に本を出しませんか?」というメールをいただいて、最初の打ち合わせで幾つかテーマを提案していただいたのですが、その中にきょうだい児があったんです。私の中でずっと心に残っていたものだったので、「このテーマで描かせていただきたいです」とお伝えしました。
――担当編集者の方は、うみこさんの経歴をご存知だったのですか?
うみこ 知らなかったです。というのも当時はプロフィールなどに社会福祉士であることを前面に出していなかったんです。実際、提案されたきょうだい児以外の他のテーマは福祉とは全く違う分野でした。だから、たまたま、提案されたテーマの中の一つにきょうだい児が入っていたので、運命だったのかもしれません。
――執筆にあたって、編集部を通じて複数のきょうだい児の方に取材をしたとお聞きしました。みなさんに共通するものはありましたか。
うみこ 環境やその方の性格によっても変わってくると思うのですが、私がお話ししたきょうだい児の方は良い子が多いというか、そうならざるを得なかった環境があって。我慢しているというよりも、障害のある兄弟姉妹の面倒を見るのが当たり前という感覚で。他人にしんどい思いを言っちゃいけないという中で生きてきたと感じました。だからSNSでしかつぶやけないみたいな胸の内が伝わってきて、そういうことを広い世界に知っていただく必要があるんじゃないかと感じました。そのためにも微力ながらお力になりたいなと。
――どうして広く知られなかったと思いますか。
うみこ かなりの数の当事者の方がいらっしゃると思うのですが、そもそもきょうだい児の方の中には、学校や会社などの社会生活できょうだい児であることを隠している方もいますし、いろんな思いを抱えているんだけど、周りからの見られ方を気にして、それを隠して生きていらっしゃる方が多いんだろうなと感じます。
――あまり本音を表に出したくないということでしょうか。
うみこ 身近に健常者の長男と、障害のある次男を持つご家族がいらっしゃって、今回の作品を描くにあたって、個人的にお母さんのお話を聞きに行ったんです。両親の立場で悩んでいる方は多いのですが、支援学校でつながりが増えて、そこで友達ができて、深い関わりになる。そうすると当事者同士で悩みを共有できるのですが、きょうだい児にはそれがないから、そういう場が増えて欲しいと仰っていました。そのお母さんはできるだけお兄ちゃんに迷惑がかからないように支援していきたいと仰っていて、いろいろな法制度を調べていました。
このご家族は意識的にきょうだい児のお兄ちゃんに負担がいかないように気遣っていますが、生活の中で自然な流れで健常者の兄弟姉妹にケアや家事を頼るご家庭もあると思うんですよね。
――きょうだい児には横のつながりがないから、同じ立場の人がどういうことを考えているかも分からないんですね。きょうだい児のための法制度はあるんですか?
うみこ 去年、ヤングケアラー支援に関する法制度の提案があって、ヤングケアラーときょうだい児は近しいものがあるんですけど、きょうだい児のための法制度というのはありません。それだけ、まだ広く知られていないんですよね。
――今回の取材は、どのような方々にお話を伺ったのですか?
うみこ 一人はブログなどで発信をされているきょうだい児の方で、知的障害のある兄弟に対して複雑な感情を抱かれていました。もう一人も自閉症のある兄弟を持つきょうだい児の方で、関係性は良好でした。もう一人は、支援団体に所属してきょうだい児のサポートをしている当事者の方で、福祉のお仕事をされています。また、監修に入っていただいたsibkoto運営者の3人の方もきょうだい児当事者の方でしたが、同じきょうだい児でも、それぞれ立場も考え方も本当に違うのだなと感じました。
――妹に複雑な感情を抱かれている方は、どのような様子でお話しされていましたか?
うみこ 障害のある兄弟に対してマイナスな感情はあるけれど、ブログに書かれているので心の整理はついた状態で、冷静にお話しいただけました。一方で、関係性が良好な方も、客観的に見るとうまくいっているように見えても、お母様との関係で、やはり辛い思いをしたという話が出てきました。最後の方は他のきょうだい児の方のサポートもされているので、達観されているというか、俯瞰して見られているという印象を受けました。
――取材をする上で意識されたことはありますか?
うみこ できるだけ否定はしたくないなと思いました。障害者の方も、当事者の方も、ご両親も、兄弟姉妹の方も、それぞれ仕方のない環境があるので、誰も悪者にしたくなかったんです。だから誰に対しても、否定をせずに話を聞くことを心掛けました。
――本作の主人公・松下透子は、結婚を約束した男性の両親に、きょうだい児であることを理由に破談を言い渡されるところから物語は始まります。現実にこういうことはあるのでしょうか。
うみこ 取材した方々にはなかったエピソードですが、きょうだい児あるあるで、婚約破棄を経験されている方は少なくないんです。結婚直前で、出産のリスクがあるからという理由で断られたという体験談をいくつか読み、今回の物語の中心に置くエピソードに決めました。
――透子は成長とともに、きょうだい児であるからこその困難な出来事に次々と直面します。
うみこ できる限り、この漫画を手に取った当事者の方々には傷ついて欲しくないと思っていました。でも、それだと誰にも届かない、ぼんやりした話になってしまうだろうと担当編集者の方とお話して。どうしても両親の立場で読むと傷つく部分もあると思いますし、そこも気をつけつつ、きょうだい児の方の心が少しでも軽くなればいいなと、きょうだい児ファーストで描こうと決めました。ハッピーエンドにしたいけど、きょうだい児に終わりはないので、ちゃんと現実も見据えたストーリーを意識しました。
『妹なんか生まれてこなければよかったのに』著者:うみこ監修:Sibkoto|シブコト障害者のきょうだいのためのサイト出版社:飛鳥新社定価:1,200円(税別)
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