

「いい子にしていたら愛されるの?」――漫画『妹なんか生まれてこなければよかったのに』が描く心の傷
近年、大きな注目を集めている「きょうだい児」。障害のある兄妹姉妹がいる人を指す言葉で、テレビドラマなどにも取り上げられ、社会的テーマとして注目されるようになった。そんな中、きょうだい児を主人公にしたコミック『妹なんか生まれてこなければよかったのに』がSNSを中心に、じわじわと話題になっている。社会福祉士の資格を持ち、様々な福祉現場での勤務経験を持つ著者のうみこさんに、本作を描いた経緯や、きょうだい児の現状を聞いた。(前後編の後編)
――障害を持つ桃乃を描く上で意識された点はありますか?
うみこ 私は学生の時には障害者施設にボランティアに行ったり、児童養護施設でも働いていたので、障害のある方は身近だったのですが、健常者の登場人物とキャラクターデザインで比較するのは難しくて。特に桃子は知的障害で、外見からは障害があることはわかりません。
ただ、私が働いていた時の実感として、障害者の方は食べることに執着があったり、偏食だったり、薬に副作用があったりで、太る方が多いんです。だから、桃乃も年齢とともに太っていくように描きました。また桃乃には、同じ服しか着たくないというこだわりがあって、服が汚れているという裏設定もあります。
――透子は幼稚園の頃に妹の桃乃が普通ではないことに気づき、小学生になって周囲の目を気にするようになります。
うみこ 環境にもよると思いますが、比較的に小学校の頃は、周りも受け入れているようです。小学生は純粋ですし、障害理解の授業もあって、障害のある子がいても当たり前みたいな環境ですから。中学校ぐらいから少しずつ変わってくるんですよね。桃乃のように異質な存在と、どう接していいか分からず、腫れ物に触るような状態になってしまう。それで、きょうだい児も本音を言うことができず、関係性もフェードアウトすることが多いんじゃないでしょうか。
――きょうだい児の方と、どう接していいのか分からない気持ちも分かります。
うみこ きょうだい児の方も一人ひとり、どう接して欲しいかが違うので、「こうすればいい」というマニュアルはないんです。接していく中で、障害のある兄弟姉妹がいるということを言える人と言えない人がいます。だからこそ表面ではなかなか分からないという現実があります。
――きょうだい児の支援について、どのような取り組みが必要だと思われますか?
うみこ 同じ立場のきょうだい児たちと関わる機会を作ることが大切だと思います。取材を受けてくださった中にも、きょうだい児のイベントを開催されている方がいて、すごくいい取り組みだと思いました。普通に生活していると、同じ立場の子たちと関わることってあまりないので、そういうオープンな場所があると本音を言いやすいのかもしれません。一番は親御さんの理解やサポートが重要だと感じます。障害のあるお子さんの育児は本当に大変だと思うのですが、きょうだい児も気にかけてサポートしていただきたいです。
――両親はきょうだい児のことを、どの程度理解しているとお考えですか。
うみこ 深く理解している方もいらっしゃるでしょうが、よく分かっていない場合が多いのではないでしょうか。障害のある子どもの世話に一生懸命で、どうしても健常者の子どもは後回しになってしまう。中には、本当に大変すぎて、きょうだい児のお子さんの手伝いなくしては、日々の生活を回せないと思っている親御さんもいると思います。
――透子の母親はパート勤めを始めて、その間は透子が桃乃の世話を見ます。後にパート勤めは家計のためではなく、桃乃の育児から逃れるためと知って、透子は深く傷つきます。
うみこ 大袈裟に描いたつもりだったんですが、Xに試し読みを投稿したときに、きょうだい児の方から「私の母も、障害のある兄弟の育児から離れる時間を作るためにパートをしていた」とご感想をいただいて。だからといって、きょうだい児にしわ寄せが行くのはよくないことですが、自分の時間も取れないほどに大変なのが、障害児の育児やケアなのだと感じます。
一方で当事者ではない方のレビューに「毒親」と書かれていて、試し読みの部分しか読んでいないので仕方がないと思うのですが、簡単に毒親で切り捨ててほしくないというか、もっと深い部分を読んでほしいと思いました。桃乃はトイレも食事もお風呂も介助が必要で、パニックで自傷してしまうこともあり、目が離せません。特別支援学校や施設などを利用しながらケアをしている人のことを、果たして毒親と呼べるでしょうか。
単純な問題ではないからこそ、苦しんでいるきょうだい児の方がいるのだと感じます。
――透子の母親も家では吐き出す場所がないから、職場が息抜きになるのも理解できますよね。家族の描き方も、悩まれたかと思います。
うみこ お母さんだけを悪者にはしたくなかったというのはあります。前半では、お父さんが「透子の進路に口を出すな。好きな学校を選ばせてあげよう」と親らしいことを言ってくれます。でも実際に桃乃の面倒を見ているのはお母さんなので、お父さんも悪いところはあるんです。漫画は一人悪者を決めて書いたほうが、読者の方も読みやすいと思うんですけど、そうはしたくなくて。そこも意識したところですね。
透子も最初はいい子なんですけど、婚約破棄を始め、いろいろな経験をしたことによって、桃乃を手放してもいいんだという気持ちになります。周りからすると、つい「ちゃんと見てあげなよ」と言ってしまう人もいると思います。でも、それは当事者ではないから簡単に言える言葉ですよね。きょうだい児の人たちが、自分の人生を生きていけるように、しんどかったら自分を一番大事にしてくださいというメッセージを込めました。
――他に単行本発売後、どのような反応がありましたか?
うみこ 刊行前はデリケートなテーマなのと、タイトルの言葉の強さもあって、炎上するのではないかと心配していました。障害者差別につながると言われたらどうしようと思っていたんですが、肯定的な意見が多くて。共感しましたという声や、予想以上に当事者の方に読んでいただけているようで良かったと思いますし、きょうだい児の親御さんも読んでくださっているみたいです。
――きょうだい児の親の立場からの感想はいかがですか。
うみこ 親の立場ときょうだい児の立場は違うので、目からうろこで、新しい視点で読めたという感想がありました。「こういうふうにならないように気をつけたい」と書かれていたので、反面教師として読んでもらえたのかもしれません。
――予想外だった読者からの反応はありましたか?
うみこ ほとんど否定的な意見がなかったことです。実際にきょうだい児に取材して、監修も受けているので、リアルなお話になっていると思うんですが、当事者の方が読んで「これはありえない」と思われるんじゃないかという不安もありました。でも、当事者の方から「当事者のように繊細に書いてもらった」という感想をいただけました。
――否定的な意見もあったということでしょうか?
うみこ 今のところ1件だけありました。当事者の方が「透子が結婚できないのは妹のせいじゃないし、ちゃんと私は結婚できました。これがすべてだと思わないで欲しい」という内容でした。そのご意見も真摯に受け止めています。監修の方から言われたのは、透子のような考え方の人は多いと思うけれど、中には親や障害のある兄弟姉妹と絶縁した人、障害のある兄弟との関係が良好で、幸せだという人もいると。いろんな方がいるので、きょうだい児の代表のように描かないで、一人のきょうだい児の女性の人生を描いたというふうに出した方がいいというアドバイスをいただきました。
――今後もこのようなテーマで作品を描きたいとお考えですか?
うみこ ずっと福祉業界に携わっていたこともあって、きょうだい児に限らず、まだ福祉分野で声が小さいテーマを取り上げていけたらなと思っています。こういう作品が出たことで、また新たな声が世の中に届けばいいなと思います。
『妹なんか生まれてこなければよかったのに』著者:うみこ監修:Sibkoto|シブコト障害者のきょうだいのためのサイト出版社:飛鳥新社定価:1,200円(税別)
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