爺ちゃんが残した言葉とは…”竜語”を操る祖父と孫の心温まる話に「感動した」「読み応えある」の声【漫画】

コミックの映像化や、小説のコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、兼竹槿さんが描く読切作品『ノイギアと竜』をピックアップ。こちらは「小学館 第96回新人コミック大賞」の少年部門入選作品だ。

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「サンデー読切」の公式Xが6月6日に本作を投稿したところ、3万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、兼竹槿さんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。

竜語しか話さなくなった祖父

15歳の少年・ノイギアは、少し呆けてきてしまった祖父と一緒に暮らしていた。「竜はいる」という祖父の言葉を幼いころは信じられていたノイギアも、月日が経つと「いない」という他者の方を信じるようになっていた。

ある時、往診を受けていた祖父は突然竜語を話し始める。それ以来、祖父は人の言葉を話さなくなってしまった。医師が帰ってしまうと、祖父は出かける様子を見せる。ノイギアが黙ってついて行き広い草原に出ると、そこに大きな竜が現れた。

驚いて言葉をなくしているノイギアの前で、祖父は流暢に竜語を話し、巨大な竜と会話する。その様子をただ見守っていたノイギアに、今度は竜が人間の言葉で話しかけてくる。そして、祖父が15年もの時間を竜と過ごし、竜語を習得したことを知る。それでもすべてを理解することは難しい、と竜は言う。

それからノイギアは、祖父ともっと話がしたいと竜語を覚えることに。竜と祖父と過ごすうちに、少しずつ竜語を覚えていくノイギア。祖父とも会話ができるようになっていく。そして3年後、最後に竜語を一言残して祖父は亡くなる。最後に言った言葉を「人語に訳してやろうか」と言う竜に、「いつか必ずわかるはずだから」とノイギアは優しく断るのだった…。

作品を読んだ読者からは、「新人読み切りでこのクオリティは凄い」「言語体系も造り込まれてるの読み応えある」「おもしろくてあたたかかった」など、反響の声が多く寄せられている。

作者・兼竹槿さん「人の複雑さを、否定ではなく肯定する物語を描いていきたい」

――『ノイギアと竜』は、どのようにして生まれた作品ですか？きっかけや理由などをお教えください。

『ノイギアと竜』は、実を言うと、私自身の発案から始まった物語ではありません。

「こういうテーマで描いてみませんか？」というご提案をいただいたことがきっかけでした。

ただ、与えられたテーマをどう咀嚼し、どこに自分の想いや解釈を込めていくかは、自分にしかできない作業だったと思っています。

そこに向き合いながら、自分なりの物語を探し、形にしていきました。

――本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい！」というポイントがあればお教えください。

「竜語」の存在です。

作中では、ジャレドとノイギアの間で交わされる言葉として、翻訳付きの“竜語”を複数回登場させました。ですが、ラストシーンの竜語にはあえて翻訳をつけていません。

創作において、すべての答えを提示するのではなく、あえて“余白”を残すことが大切だと考えています。余白があることで、読者の想像力が動き出す――それこそが物語の余韻や深みになると信じているからです。

最後にジャレドが発する竜語は、それまで登場していた翻訳済みの竜語と、まだ作中で訳されていない“新しい竜語”を組み合わせています。

実際にX(旧Twitter)で意味を考察してくださる方もいて、そこから物語が続いていく感覚がとても嬉しかったです。

――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

ラスト2ページのシーンです。

新たな旅に出るノイギアの心情を、セリフを一切使わず、絵だけで表現することにこだわりました。彼の表情、しぐさ、景色の広がり――そういった“語らない”部分から、どんな感情や決意があったのかを、読者に想像してもらえたらと思っています。

彼はどのような想いを胸に、空へと飛び立ったのか――

ぜひ、彼の旅路に思いを馳せてみてください。

――今作は「小学館 第96回新人コミック大賞」の少年部門入選作品とのことですが、受賞された際の感想をお聞かせいただけますか？

受賞できたことが、とても嬉しかったです。

作品は決してひとりでつくったものではなく、友人や担当編集さんの支えがあってこそ、今回このような形に結実したのだと感じています。

これまで、誰かに見せることもなく、ただ黙々と創作を続けてきました。そんな中で、「絵を人前に出してもいい」と背中を押してくれた友人や、作品として形に導いてくださった担当編集の方の存在には、本当に感謝しています。

――兼竹槿さんご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。

人は少なからず、矛盾や闇を抱えて生きているものだと思います。

そうした人の複雑さを、否定ではなく肯定する物語を描いていきたいです。

答えのない様々な問題について考えることが好きです。昨日と今日とで考えが変わることもあります。そんな中、悩みながらも言葉にした“自分なりの答え”を物語に込めることで、悩める誰かの問題解決への“小さな近道”になれたらいいなと思います。

また、自分の思いをできるだけ純度高く届けるには、個人サイトのような静かな場で活動するほうが向いているのかもしれない――そう思うこともあります。

けれど今は、見つけてくださった編集の方と共に、作品を形にしていくこともまた、大切な挑戦だと感じています。

――最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。

このたびは、見つけてくださりありがとうございます。

誰かが人生を歩むうち、ふとできてしまった靴擦れに、そっと絆創膏を貼るような物語作りを目指します。ページをめくる時間が、少しでもやさしく、やわらかなものでありますように。

これからも、どうぞよろしくお願いいたします。