真木よう子“たま子”が見た“全員協力的な職場”の夢が理想的すぎる「問題のあるレストラン」第9話＆最終話

2025.07.02 17:30

今から10年前に放送された、坂元裕二脚本のドラマ「問題のあるレストラン」(2015年、フジテレビ系)は、職場で理不尽な目に遭った主人公の田中たま子(真木よう子)が、友人や元同僚とビストロレストランを開店させるストーリー。セクハラやパワハラなどにより、世の男性から傷付けられた女性たちの怒りと戦いを描いている。10年という時が流れて、世の中は良くなってきているだろうか。少し前の作品を観るというのは、そんな楽しみ方もできる。FOD・TVerで現在配信中の第9・10話の紹介をしよう。(以下、ネタバレが含まれます)

働いていた会社の社長からセクハラを受けた五月が立ち上がる

FOD・TVerでは「#ドラ活浸れ、超自分的ドラマ生活。」キャンペーンを開催中で、「問題のあるレストラン」は第1〜3話が無料公開されているほか、全話を順次無料配信している。

第9話。たま子は、弁護士・奈々美(YOU)の手伝いをするため、しばらくの間、“ビストロフー”を休むことになった。奈々美は、元社員の五月(菊池亜希子)に対するパワハラに関して、ライクダイニングサービス社長の雨木(杉本哲太)に謝罪と慰謝料の支払いを要求する通知書を送っていた。一方、五月の一件を知った門司(東出昌大)は、店にやってきた雨木にその話を切り出し、相手にきちんと謝ってほしい、と訴える。すると雨木は、会社として対応しているので心配しなくても店がつぶれるようなことはない、と返す。

“ビストロフー”は、離婚調停が始まる鏡子(臼田あさ美)も休んでいるため、ハイジ(安田顕)を中心に、結実(二階堂ふみ)、藍里(高畑充希)、千佳(松岡茉優)がたま子たちの仕事を分担して営業していた。結実たちはたま子の抜けた穴の大きさに気付かされる。

たま子の仲間が集結して働く夢を見る

そして、物語は最終話となる第10話に続く。“ビストロフー”は、今日も大勢の客でにぎわう。海外転勤を前に恋人にプロポーズしようとしている常連客、結実の元同級生で東大卒であることをひけらかす女性、鏡子の息子・洋武(庵原匠悟)の初恋相手だという女の子もいた。店には、予約の電話もひっきりなしにかかってくる。だが、たま子はある理由があり、翌日以降の予約を受けなかった。そこへ門司が星野(菅田将暉)とともに“まかない”を持って現れる。門司は、雨木を殴ったことが原因でシンフォニック表参道をクビになっていた。千佳は、門司とオムレツ作りで対決することに。

たま子が新規予約を受けなかった理由が、最終話の大きなカギとなる。店に起きた重大なハプニングによって、彼女たちは店を閉じて解散しなくてはいけない展開となるのだが、最後の日、仕事仲間の皆でお酒を飲みながら過ごす夜がなんともいえぬ尊い時間として描かれていた。人間関係において少し不器用な人たちが集まる“ビストロフー”。しかし、一人ひとりはただ一生懸命に周りの人を思いやりながら、自分のやるべき仕事をコツコツこなしている女性たち(女装するゲイのハイジを含む)だ。

恋で痛い目を見た結実や、出会ったころは触るもの皆傷付けるような闇を抱えていた千佳が、キャッキャしながら恋バナで盛り上がる姿は見ている方もほのぼのしてしまう。そして、酔いつぶれて皆が寝てしまったあと、眠りについたたま子が見た夢の内容がまた良かった。ライバル店同士の“ビストロフー”メンバーと門司や星野が同じキッチンで和気あいあいと働く様子は、まるで“たま子の理想の店”。パワハラ社長だった雨木も社員思いの熱意ある姿で登場して、お客さんのためにおいしい料理と温かい時間を提供する素晴らしい店として描かれていた。

現実はすべてがうまくいくことは少ないかもしれない。しかし、戦う姿は美しいし、動く者に幸せは舞い込むことになっているのだろう。始まった物語は閉店という形になってしまうけれど、その先の希望まで見せてくれる良作である。