人里に降りたきつね族…ある日クラスメイトに正体を知られる話が「関係性がすごく好き」と話題に【漫画】

2025.06.27 18:10

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、「今日、好きっていいます」(フロンティアワークス刊)に収録されている『恋はきつね模様』を紹介する。「雑誌Daria」で「その目で見てつかまえて」を2025年8月号より新連載する、ちゃのき杏さんが4月25日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、7000件を超える「いいね」やコメントが多数寄せられた。本記事では、ちゃのき杏さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。

つがいを見つけるため人里に降りたきつね族のいなり

きつね族のいなりは、年頃になると人里に降りて“つがい”を見つけるならわしに従って、人間の学校へ転入した。しかし頑張ってつがいを見つけようと意気込むものの、数週間経っても友達ができないままでいる。

ある日外のベンチで弁当を食べていると、突然上から近寄り難い印象のクラスメイト・和羽が降ってきた。驚いているいなりに、起き上がった和羽は「それなに？」と尋ねる。慌てて確認したところ、いなりからは耳としっぽが出ていて…。

本作を読んだ人たちからは、「関係性がすごく好き」「恋の始まりにドキドキする」「幸せがたくさん」「いなりくんがかわいい」など、多くのコメントが寄せられている。

2人の心情を丁寧に描写した本作

――本作のお話の発想の源はどこだったのでしょうか？

昔から人と人ならざるものの交流のお話が好きで、自分でも描いてみたいと思ったのが始まりです。小学生の時に読んで大層衝撃を受けた小説が妖狐と人間の異類婚姻譚だったので、いつかきつねモチーフの話を描きたいなとずっと思っていました。それをベースに「身長差」「ほくろ」「つり目」など大好きな要素をたくさん詰め込んで「恋はきつね模様」ができあがりました。ちなみに、初期案では和羽が朗らかで愛情表現豊か、いなりがクールなキャラクターでした。

――本作では、耳としっぽがいなりの感情を豊かに表現しているところが非常に印象的でした。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい！」というポイントがあればお教えください。

動物ってすました顔をしていても耳やしっぽで感情がわかるのが愛おしいなと感じていて、それをいなりにも取り入れました。和羽が表情変化に乏しいので対照的な2人がすごくかわいいと思います。本作は一見正反対な2人がお互いの抱える寂しさに寄り添っていくお話です。本来であれば交わることのなかった彼らの人生(狐生？)が交錯したとき、どんな変化がもたらされるかな〜と思いながら描いていました。2人の心情を丁寧に描写しようと心掛けたので、そこを楽しんでいただければ嬉しいです。

――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

作中後半、和羽の「つがい候補、オレじゃダメ？」というセリフです。和羽はあまり多くを語らず、必要以上にいなりの事情を聞き出すこともありませんでした。そんな和羽がいなりにぐっと踏み込んだことがわかる言葉で、彼の心境変化をよく表していてとてもお気に入りです。「オレじゃダメ？」とお伺いをたてていなりの選択を尊重しているのもかわいいポイントです。私はおっきい攻めの殊勝な態度が大好きです。試し読みに載っていない部分なのでぜひ単行本でご覧ください。

――普段作品のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか？

日頃から本や映画などで自分が好きだなと感じたものを集めてノートに残しています。それを眺めながら日々妄想していて、それが着想に結びつくことが多いです。あとは担当さんと電話しながら盛り上がると自然とたくさんお話案が出てきます。人と会話するのが一番いいかもしれません。

――ちゃのき杏さんの作品は、繊細でありながらかわいらしさが同居しているように感じます。作画の際にこだわっていることや、特に意識していることはありますか？

まさにかわいいと思っていただけるような表情や絵のタッチを意識しています。なのでクールなキャラクターがいつの間にかかわいらしい絵になっていたり……かわいいものが好きなんだなと思っていただければ…。それから、私の作品に出てくるキャラクターたちはなるべく他者に対して優しくあってほしい、あるいは作中で他者を尊重できる精神に育ってほしいと思っているので、そういった雰囲気を伝えられればと思っています。

――今後の展望や目標をお教えください。

右も左もわからないままデビューして、最近ようやく自分の中で漫画の描き方が板についてきた気がします。もっとたくさんの漫画を描きたいですし、読んでもらうのが目標です。私のメンタリティは小さい頃から変わっておらず、今でも「みてみて！これってよくない？」の気持ちで漫画を描いています。たくさんの方と好きを共有できるように、魅力を感じていただけるような作品を生み出していきたいです。

――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします！

いつも読んでくださっている読者の皆さま、本当にありがとうございます。連載中いただける言葉にいつも元気をもらっています。作品でお返しできるように努めてまいりますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。