ありがとう、ミスタープロ野球…レジェンドたちが語る長嶋茂雄の知られざる素顔と記憶＜プロ野球レジェン堂＞

2025.06.24 12:00

6月3日に放送された「プロ野球レジェン堂」（毎週火曜夜10:00-10:55、BSフジ）。今回は、令和7年6月3日に天国へ旅立ったミスタープロ野球・長嶋茂雄を偲ぶ特別編成で届けられた。番組冒頭、MCの徳光和夫は「長嶋茂雄という存在は学生時代からの憧れであると同時に、自分をテレビの世界へと導いてくれた恩人、神といっても過言ではない」とその存在の大きさを語る。スーパースターとして輝き続けた姿と、人間味あふれる素顔の数々をさまざまなレジェンドたちの言葉からひも解いていく。

「いかにも長嶋さんらしい活躍」王貞治が語る伝説の天覧試合と守備の妙

長嶋を語る上で欠かせない存在といえば、かつて読売ジャイアンツでともに黄金時代を築いた王貞治だ。王にとって長嶋は1つ先輩にあたり、「入団当初から輝いていた」と振り返る。ONアベック弾は実に106回にものぼり、その1回目が伝説の天覧試合。この試合で長嶋は2本のホームランを放ち、うち1本は劇的なサヨナラ弾であったため「いかにも長嶋さんらしい活躍でしたよね」と笑みを浮かべながら語った。

また、王は一塁手として見てきた長嶋の守備についても言及。長嶋の守備を「普通にできることを華麗に見せる」と評した。たとえば平凡なゴロの時は緩い球が、ダイビングの後は鋭い球が飛んでくるなど、状況に応じた巧みな送球に関心することが多かったという。

「平松はすごくいいピッチャーだったな」と思ってもらいたくて

現役時代、長嶋を苦しめた元大洋ホエールズの投手・平松政次も忘れられない思い出を明かした。学生時代から長嶋を見てきて憧れの選手ではあったが、プロ入り後のある日の試合で長嶋から場外ホームランを打たれたことがきっかけで“目覚めた”という。それ以降、平松は「長嶋さんがユニフォームを脱ぐ瞬間、“平松はすごくいいピッチャーだったな”と記憶に残らせたい一心でプレーしてきた」と心境を明かした。

結果的に通算打率1割9分3厘、33奪三振に抑えたが、平松は長嶋もまたこの苦手を乗り越えようと工夫を凝らしていたエピソードを語る。それはたとえば平松の指からボールが離れる瞬間、バットを短く持ち替えるというもの。平松は当時の様子を振り返ってｍ「バットを持ち替える様子はピッチャーには見えているが、ファンには見えていないと長嶋さんは考えていたのではないか」と分析。いかにも長嶋らしいセンスと隠れた工夫があふれるエピソードに、MCの徳光と遠藤から笑いがこぼれた。

また、長嶋ファンだった元中日・谷沢健一の証言も印象的。早稲田大学4年生の時、田淵幸一を含めた谷沢、長嶋の3人で対談する機会があったそう。その席で長嶋に色紙を差し出したところ快く応じてくれ、サインの代わりに「誰にも負けない大きな拍手を送る」と締めくくられた心のこもったメッセージを書き込んでくれたというのだ。その色紙は今でも谷沢の自宅で大切に飾られており、色紙を頼んですぐにその場で心のこもったメッセージを書いてくれる長嶋の感性にも感動したと振り返った。

篠塚が放った一言に現場が凍りつくも…心を打った長嶋の行動

監督としての長嶋にまつわるエピソードも紹介された。伊東キャンプの最終日、選手たちが辛い走り込みをする中で、談笑する監督とコーチ陣を見た篠塚和典は先輩であった中畑清からそそのかされ「監督！腕組みなんかしてないで一緒に走れよ！」と叫んだことがあったという。

しかし中畑は篠塚が本当に声をかけるとは思っておらず、周囲の空気も一瞬凍りついた。なにせ相手はあの長嶋茂雄だ。しかし長嶋はなんと篠塚たちの後を追って、本当に一緒に走ってきたというではないか。その姿に篠塚は心を打たれたと同時に、「この出来事がきっかけで長嶋さんとの距離が近づいた」とも振り返った。

この他にも元巨人の柴田勲や高田繁、元阪神の掛布雅之、元中日の権藤博、元広島の山本浩二など錚々たる顔ぶれが登場し、それぞれの長嶋像を語った。どの証言にも共通していたのは、長嶋に対する深い尊敬と愛情、そしてエピソードを語りながら自然と笑みがこぼれる姿だった。

プロ野球ファンのみならず、多くの日本国民の記憶に深く刻まれる存在、ミスタープロ野球・長嶋茂雄。その偉業と人柄は、これからも語り継がれていくに違いない。徳光は番組の最後に「プロ野球レジェン堂も、長嶋さんが愛したプロ野球の素晴らしい記憶をお届けしていきたい」と締めくくった。なお今回の特別編は配信されないものの、TVerやFODでは「プロ野球レジェン堂」の過去放送回が配信されている。