「カストルとポルックス」

佐藤流司原案・脚本・演出舞台「カストルとポルックス」日本映画専門CHでTV初放送、役者だからこその作り手としての強み

2025.05.20 17:00
「カストルとポルックス」

「みなさん、今日から上を向いて歩いていけたらいいなって思いましたよね?」、舞台「カストルとポルックス」(2023年)の千秋楽で佐藤流司は客席に向かって、そう呼びかけた。同舞台は、佐藤流司が初めて原案・脚本・演出を務め、THE RAMPAGE・藤原樹主演で贈る兄弟の寓話。そんな貴重な舞台が、5月23日(金)23:10ほかより日本映画専門チャンネルにてTV初放送される。

「カストルとポルックス」とは?

そもそも“カストルとポルックス”とは、ギリシャ神話における双子の兄弟で、ふたご座を構成する2つの星の名前でもある。それを基に佐藤がアレンジした本作の舞台は、西暦2045年。繰り返された戦争や環境汚染によって、人類は地上から姿を消し、地下シェルターで共に生活を送っていた。そんな中、貧民街近くのオンボロアパートに、肩を寄せ合い暮らす兄弟がいた。喧嘩っ早いが仲間思いの兄・五十嵐総司(藤原樹)と、兄との生活を日記に綴る心優しい弟・翔(新谷聖司)。生まれた時からシェルターで育ち、星空を見たことがなかった二人の夢は、本物の星を見ることーー。

SF要素が含まれた本作は、そのあらすじだけでもワクワクするのではないだろうか。そして実際、この寓話が舞台上で生まれ、それを目にしたとき、あなたもきっと心が動かされるはず。佐藤が紡いだそんな「カストルとポルックス」の魅力をストーリーとアクションという2つの軸から紐解いていきたい。

笑いあり、涙あり、王道ありのSFストーリー

前述した通り、本作はふたご座の星の名前の由来となったギリシャ神話にSF要素を加えた愛の物語。ここで描かれる愛は、家族(兄弟)愛と友情の二種類だ。まず何と言っても、SFで近未来の設定に心踊る。今の私たちにとっては非現実的だが、絶対にない未来とは言い切れない絶妙な設定だからこそ、近すぎず遠すぎずのその距離感に興味をそそられる。

さらに冒頭、“舞台と客席”の関係性にフォーカスを当て、観客巻き込み型のメタ構造から始まることで、我々観客はその世界観へと瞬時にグッと引き込まれるのだ。そこにアドリブっぽい生感溢れる笑いも加わり、その軽やかさに警戒心は薄れ、心地よく舞台の中へと誘われていく。この冒頭のたった数分で佐藤の作り手としてのポテンシャルの高さも感じ、どんな展開が待ち受けているのかとワクワクが止まらない。

そして、シュールで軽快な笑いを混ぜながらも、物語はどんどん緊張感があるシリアスな展開へ。時に目を瞑りたくなるほどの痛くてつらいシーンも展開され、そうかと思えば、兄弟愛や友情・絆の深さに気付いたら涙が流れていた…なんてこともあり、これでもかと言うほど観客の感情を激しく揺さぶってくる。我々観客の心は、ジェットコースターのような激しい変動を経てスタートからゴールまで辿り着くのだが、ストーリーの根幹は王道で分かりやすく、土台がしっかりとしているため、頭にスッと入ってくる。

佐藤自身が第一線で活躍し続ける役者ゆえに、その特徴が強みとして原案・脚本・演出にも生かされているように感じた。これまでさまざまな役を舞台上で生きてきた佐藤だからこそ、一般的な作品よりも大きくて派手な物語と演出になっているように思う。そして観客の感情を激しく突き動かすのだ。感情の表現を大切にする役者・佐藤が“親”であるがゆえに、“子”である登場人物一人ひとりの言動がダイレクトに観客の感情に訴えかけてくる。

迫力ド派手な生アクションに注目!

個人的に本作で最も感動したのは、キレッキレなアクションである。“喧嘩っ早い”主人公ということもあって、とにかくアクションシーンが多く、見応えがあるのだ。舞台では、映画やドラマのように何度もテイクを重ねることはできないため、すべてが生で一発のみ。それなのに、主演の藤原や、本作に役者としても出演している佐藤をはじめ、出演者皆がスピードもキレも派手さもある実に豪快なアクションを披露してくれて、爽快感がハンパない。殴る方も殴られる方もその動きがあまりにナチュラルで美しく、プロフェッショナルとはこういうことか…と唸ってしまう。

さらに動きも音も見事にピッタリとハマっているからこそ、非常に気持ち良い。こんな考えは野暮だが、照明や音響も含めて一体どれほど練習したのだろうか…と舞台裏の稽古の様子を想像せずにはいられない。それほど完成度が高いのだ。

余談だが、「さすがTHE RAMPAGE…!」と思わずにはいられない藤原のキレッキレで美しいダンスシーンも必見だ。そんなファンにとってご褒美なシーンを用意してくれる佐藤も、流石としか言いようがない。佐藤は常にファンのこと観客のことを同時に考え、どうやったらより楽しんでもらえるのかと、この舞台に全力を注いでいたことがそのシーンだけでも伺える。同舞台を見終わったあとにはあなたも「上を向いて歩いていこう」と思うはずだ。

また現在、日本映画専門チャンネルでは、「2ヶ月連続 藤原樹にとらわれて」と題した特集を実施中で、同日22:30からは藤原主演オリジナルドラマ「欲望(蜘蛛の糸のように)」も放送される。佐藤流司が作り上げた世界でアツく美しく舞う藤原と、文学ノワールの世界で麗しくエモーショナルに生きる藤原という“藤原樹”のさまざまな顔を覗いてみてはいかがだろうか?

構成・文=戸塚安友奈

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