偶然の出逢いから始まった恋。好きになった相手が女性だった…山本美月と栗山千明の切なく苦い恋の軌跡を振り返る＜おとなになっても＞

2025.05.17 12:30

多くの人が新たな生活をスタートさせ、さまざまな人との出会い、恋が始まる季節とも言われる春(4月26日)にHuluで配信がスタートした「おとなになっても」は30代の女性同士の恋愛を描いたドラマ。仕事や家庭、人間関係…多くの“おとな”はそのような壁に阻まれて、素直に恋へ全力を注げない。同ドラマは現在5話まで配信されているが、主人公たちの等身大でリアルな悩みと苦しみに、多くの共感を集めている。6話の配信を前に、綾乃と朱里のこれまでの軌跡を振り返っていく。

恋愛観や結婚、仕事、将来のキャリア…人生の難しさや生きづらさをテーマにした「おとなになっても」

Huluの最新オリジナルドラマ「おとなになっても」は、志村貴子原作のコミックを映像化した作品。主演の大久保綾乃役に山本美月、彼女が出会うダイニングバーの店員・平山朱里を栗山千明が演じる。

30代半ばの大人の女性同士の恋愛をテーマに制作された本作品は、現代社会特有の生きづらさや思うようにいかない人生の難しさなどを丁寧に描写していく。ありきたりな恋愛ドラマとは一線を画す“おとなの恋愛”ならではの苦みと、登場人物たちのリアルな葛藤を映し出す。

30代といえば重要な仕事やポストを任されたり、プライベートでは結婚や子育てなど大きな責任も伴う人も増えてくる世代。一方で将来のキャリアに不安を感じたり、理想的な人間関係を築けなかったりすることで「自分はこのままで良いのだろうか」と思う人も少なくない。そのような不安や悩みを抱えるすべての“おとな”に寄り添い、背中を押してくれるのが本作品だ。

綾乃と朱里の運命を変える出会い

第1話は小学校の教員として働く綾乃が、ある日偶然立ち寄ったダイニングバーで朱里に出会うシーンから始まる。2人は初対面から惹かれ合い、出会ったその日にキスを交わすまでの仲に。しかし後日、夫の渉(濱正悟)とともに再びダイニングバーに訪れた綾乃。その姿を目にした朱里は彼女が既婚者であったことを初めて知り、激しく動揺する。女性が恋愛対象の朱里は「よくあるいつもの失恋だ」と自分に言い聞かせ、一晩の思い出としてそっと胸にしまうことを決めた。

その夜、帰宅した綾乃は朱里に謝罪する。夫に正直な気持ちを打ち明けようとするが、朱里は「不誠実だから正直になりますって？そりゃあなたは満足するだろうけど、一方的に打ち明けられた旦那さんはどうなるの？たまったもんじゃないよ」と強く反対。だがこれまでそうした衝動的な恋をした経験がなかった綾乃は、無性に朱里へ惹かれる気持ちを持て余すばかりだ。

後日、気持ちを抱えきれなくなった綾乃は渉に「気になっている人がいる」と告白。そして相手が女性であることも打ち明ける。衝撃の告白に動揺を隠せない渉。そんな中、朱里は綾乃と渉をバーベキューに誘う。当然綾乃は断るつもりだったが、渉はあえて参加したいと申し出る。

渉は綾乃が気になっている相手が女性とはいえ、どんな人なのか直接会って確かめてみたいという気持ちもあったのかもしれない。あるいは最愛の妻から突然思いもよらない告白を受け、冷静な判断ができなくなっていたとも考えられるが…。

一方の朱里も、まさか夫婦が2人そろって来るとは思っていなかった。当日バーベキュー会場に現れた2人の姿を見て、朱里は「私は何がしたいんだろうか」と動揺が隠せない。渉はそんな朱里に対し、「妻の片思いなんでしょうかね？」と問いかける。朱里は、何も答えられない。

バーベキューからの帰り道、渉は綾乃に対して「正直、墓場まで持っていってほしかったよ」と率直な気持ちを打ち明けた。また朱里も綾乃に対して「あんたが人妻なんて知らなかった。こっちは騙された被害者なのに、“なんだこの女”みたいな目で見られて、悪いのはそっちじゃん！」「…でも、好きになっちゃったんだよ。あんたも私が好きなら、最後まで責任もってよ」と涙ながらに迫る。「会いたい。会いに来て」と静かな泣き声を聞いた綾乃は、イチもニもなく家を飛び出して朱里の家へ飛び込んだ。

生活の変化、そして“自分らしく生きるためのヒント”

第3話から4話にかけては、綾乃と朱里の心模様や生活環境が大きく変化していく。朱里から「最後まで責任もってよ」という正直な気持ちを打ち明けられた綾乃は、渉に対して離婚の意思があることを伝えた。しかし渉は「綾ちゃんに決定権ないでしょ。俺からは離婚しないよ」と応じてくれない。

相手が男性であるなら明確な不倫と割り切れるが、相手が女性とあっては渉の心境も複雑だ。独り言のように呟いた「なんで女なんだよ、よりによって」という言葉に、渉の本心が凝縮されている。

綾乃は夫婦で住み続けたマンションを引き払い、義両親が暮らす渉の実家で同居することとなった。実家には渉の妹・恵利(錫木うり)も暮らしていたが、綾乃の素朴な人格のおかげで徐々に良好な関係性を築いていく。一方、朱里はかつて勤めていた美容室から戻ってきてほしいとスカウトされるものの、綾乃と出会ったお店を去るべきか決心がつかない。

心が揺れ動く朱里に、ダイニングバーの店長は「物事がスムーズに動く時っていうのは、逃したらダメなのかもしれないよ」と美容師としての再スタートを後押し。ただ朱里には「前職は色々あって逃げたんで、戻るのには不安もあるし…」と後ろめたさのような気持ちも残っていた。

30代ともなればさまざまな職場を経験し、転職を繰り返す人も珍しくないだろう。しかしバーの店長は「それって“逃げた”のかな？いや、また古巣に繋がったんなら、ここは前に進むための寄り道だったのかも」と問いかけ、優しく背中を押す。

引っ越し先でまさかの再会を果たす2人…断ち切ったはずの恋心の行方は

時は移ろい、季節は再び春を迎えていた。朱里は住居を変え、綾乃の連絡先も消去して関係を断ち切ろうとしていた。ところが、驚くべきことに朱里が引っ越したアパートは綾乃の自宅と目と鼻の先。そうしてある朝、偶然家の前で鉢合わせた2人は驚きの表情で固まってしまう。朱里は「違うから！ストーカーとかじゃないから！」と必死に訴える。

そして朱里が近くに住んでいることは、ひょんなことから渉にも知られることとなり、疑心暗鬼に陥る。

渉の心配をよそに、2人は元の関係に戻ることはなく、それ以上の関係に進むこともない。朝に玄関先で会ったときは挨拶を交わし、途中まで一緒に通勤する…という仲の良いご近所程度の関係。客観的に見ればご近所に住む同年代の仲の良い2人だ。

ある日、雑談の中で「答えが出ないとき、どうしますか？」と綾乃に問われた朱里は「走る」と答えた。最初はきついが走っているうちに、急に思考がクリアになる瞬間があるのだそう。

そうして月日が経つ中で、朱里は初恋相手と綾乃を重ね合わせるようになる。一度は断ち切ったはずの綾乃に対する恋心。

朱里は、町内会のミニマラソンで走りながら「この先に、あなたとの未来があったらいいのに。そうしたらあたし、もっと早く走れるのに」と切ない想いを抱えながら、ゴールテープを切る。

第5話のラストでは、朱里は自分自身と向き合った結果の言葉を綾乃に改めて伝える。走る中で見つけた答えは「私はやっぱり綾乃ちゃんが好きみたい。だからさ、もう会わないようにしたい」その言葉に、綾乃の顔から表情が抜け落ちていった…。

続く第6話では、朱里が綾乃への想いを断ち切ろうと考えた切ない理由が打ち明けられる。自分なりに現状を打破しようと行動を起こすも、すれ違いや葛藤に苦しめられる2人。さまざまな悩みを抱える綾乃だが、周囲は待ってくれない。夫、義母、勤め先の学校が綾乃の思考を狭めていく…。原作ファン以外も楽しめる「おとなになっても」は現在Huluにて独占配信中。