アメリカ社交界を揺るがすスキャンダル…“セレブ妻”による天才作家への復讐劇 “上流階級”の暮らしも忠実に再現＜フュード／確執カポーティ vs スワン＞

2025.05.13 07:10

華やかな上流社会の裏側を描いた海外ドラマ「フュード／確執カポーティ vs スワン」が、5月7日に一挙配信された。同作は「ティファニーで朝食を」などで知られる天才作家トルーマン・カポーティとニューヨークの上流階級に属し、彼がスワン(白鳥)と称した“セレブ妻”たちとの間に起こったスキャンダラスな争いを描いており、全8話で欲とプライドがむき出しのスリリングなバトルを展開している。(以下、第2話までのネタバレを含みます)

上流階級の“セレブ妻”たちを裏切った人気作家との争い

1960〜70年代のニューヨークを舞台に、作家のカポーティ(トム・ホランダー)の裏切りに激怒した富と美貌を兼ね備えたセレブ妻“スワン”たちの実話をベースにした復讐(ふくしゅう)劇。企画・製作総指揮はドラマシリーズ「glee／グリー」(2009-2015年)などを担当したライアン・マーフィーで、全8話中、計6話を監督したのは「グッド・ウィル・ハンティング／旅立ち」(1997年)などでも知られる名匠ガス・ヴァン・サント。そして、上流階級のセレブ妻たちにはナオミ・ワッツ、ダイアン・レイン、デミ・ムーアら豪華キャストが扮(ふん)し、アメリカの社交界を揺るがせた衝撃的事実の渦中にいた人物を体現している。

第1話、トルーマンとセレブ妻のベイブ(ワッツ)、スリム(レイン)、C・Z(クロエ・セヴィニー)らは、高級レストラン「ラ・コート・バスク」で上流社会のゴシップ話に花を咲かせ、パーティーに明け暮れる日々を過ごしていた。彼女たちは固い友情で結ばれており、中でもベイブにとってカポーティは良き相談相手だ。冒頭では、夫の浮気に悩むベイブから相談を受けたカポーティが、彼女の元に駆け付けて、慰める。

カポーティ、妻子持ちの銀行員と恋人関係に

時が過ぎ、1975年になると、カポーティはサウナで妻子持ちの銀行員のジョン(ラッセル・トヴィ)と出会い、やがて2人は恋人関係へと発展していく。ある日カポーティは、ベイブらとのランチにジョンを連れていくが、セレブ妻たちはジョンに対し自分たちとの階級の違いや態度にいら立ちをあらわにする。すると、そこにかつては友人の一人であったアン(ムーア)がやってきて、カポーティを叱責。どうやらアンは、カポーティによる「アンは夫殺しの犯人だ」といううわさ話の流布に悩まされており、彼女の登場でランチ会は修羅場となっていく。

早くもセレブリティー同士のエキサイティングな言い合いが幕を開け、この“確執”がきっかけに次々と物語が展開していく。

一方、現実離れしたランチ会を目の当たりにしたジョンは、帰りの電車で「あのランチ会はネタになる。彼女たちの本当の姿はあんたにしか書けない」と、酔いつぶれたカポーティに提案することに。

そんなある日、カポーティの新作小説がエスクァイア誌に掲載された。その内容は、ベイブが彼に相談した浮気性の夫についてを赤裸々に暴かれたものだった。信頼していたカポーティの裏切りに激怒したベイブは、スリムに怒りをぶちまけていると、夫殺しの濡れ衣を着せられていたアンが自殺したという衝撃的な事実を聞かされる。驚きを隠せないベイブだったが、彼女たちは結束し、裏切ったカポーティへの復讐を決意する。

劇中では一貫して、上質でゴージャスな世界観を演出している中で、あまりにもゲスく、しょうもないゴシップに人生を左右される“上流階級”の人たちの混沌とした様子が伝わってくる。

セレブリティーたちのゴージャスな暮らしぶりも

第2話では、復讐心に火がついたセレブ妻たちがカポーティを精神的に追い詰めていく様子が描かれていく。

アンの葬式後、今後の作戦会議をするベイブたち。カポーティの裏切りに憤慨した彼女たちは、彼と絶交することを決め、彼からのあらゆる連絡を拒絶。そんなこととは知らないカポーティは、いつもの通りベイブたちに連絡を取ろうとするが、全く連絡がつかない。ようやく事の重大さに気付いた彼は、ひどく動揺し、家中のお酒をトイレに集めては流すという奇妙な行動に出る。

またベイブは癌が進行しており、体調が優れない日々を過ごしていた。そんな彼女のもとにスリムが訪れ、彼女の気持ちに寄り添っているとベイブから「死ぬ前にカポーティに会いたい」という気持ちを伝えられる。

この年も感謝祭の日程が近づいてきた。今までは彼女たちと一緒に過ごしていたカポーティは、ようやく今の状況を把握し、C・Zになんとかベイブと仲を取り持ってほしいと懇願。しかしその思いも虚しく、彼は招待されず、計画的に仲間外れにされてしまう。

ついに感謝祭の日がやってきて、それぞれの家で豪華な晩餐会が開かれる。ベイブはC・Z宅でいつものメンバーで感謝祭を祝い、カポーティはジョンと共にロサンゼルスにいるジョアン(モリー・リングウォルド)の元を訪れることに。今の生活を大事にし、前に進もうと奮闘するベイブだったが、どうしてもカポーティのことが頭から離れない。一方でカポーティもパーティーの場に集まった人たちの前でジョンを侮辱し、その態度に激怒したジョンに暴行されてしまい、病院へ運ばれていく――というなんとも哀れな姿で第2話を締めくくった。

ドロドロの人間関係、復讐心むき出しのセレブ妻たちの反撃も見ものだが、彼らが属する上流階級のライフスタイルが丁寧に描かれているところも興味深い。きらびやかなファッションや上品な作法、彼らが住む豪邸のインテリアなどが忠実に再現されており、セレブリティーの世界観に没入できるのも本作の魅力の一つだろう。まるでヴィンテージ映画を見ているかのような映像美も存分に味わうことができる。

「フュード／確執カポーティ vs スワン」はディズニープラスにて全話配信中。

◆文=suzuki