恒松祐里が演じる若かりし頃の銀

<ガンニバル>恒松祐里“銀”起用の狙い「妖艶さ、意志の強さを併せ持っている」メイン監督・ 片山慎三氏が秘話語る

2025.05.01 08:10
恒松祐里が演じる若かりし頃の銀

柳楽優弥主演のヴィレッジ・サイコスリラー「ガンニバル」シーズン2の最終話が4月23日に配信され、2シーズン全15話に及ぶ物語が完結した。同ドラマは、二宮正明の同名人気サスペンスコミックを実写化したもので、ある事件をきっかけに左遷されて供花村(くげむら)の駐在となった警察官・阿川大悟(柳楽)を主人公に、人が喰われるという怖いうわさがある村に隠された真実が明らかになっていく驚愕(きょうがく)の物語が展開された。(以下、ネタバレを含みます)

最終話を直前に控えた4月中旬、原作とは違うラストが描かれた今作の演出を手掛ける片山慎三監督にインタビューを実施。シーズン1からシーズン2への流れや個性豊かな俳優陣との撮影秘話、日本の映画やドラマの今後について語ってもらった。

ドラマオリジナルの“終わらせ方”へのこだわり

――シーズン2は「完結編」と銘打っていますが、ドラマ版の終わらせ方で工夫したところはありますか?

漫画だとまだ物語が続くのかなというような、ちょっと後を引く怖さがある終わり方をしていて、それはそれですごく良かったなと思いました。ドラマ版の場合は、もう少し後味を残すようなイメージ。怖いという意味ではなくて、深い人間ドラマを見たなという余韻を感じてもらえるような終わらせ方を意識しました。

――シーズン1から続く大悟と供花村を支配する「後藤家」の当主・恵介(笠松将)のヒリヒリするような関係がどうなるのか気になります。

シーズン1から2人の“奇妙な友情”のようなものを描きたかったんです。どんな形で決着するのか、ラストシーンをどう描くのか。それを考えていく中で、拘置所での会話や大悟の決断など、しっかりと人間ドラマを見せることができたんじゃないかなと思います。

――その関係性を描く過程で柳楽さんと笠松さんにはどんなことを求めたんですか?

最初に2人が出会うシーンで大悟が自分の名前を言おうとするんですけど、恵介は「そんなものどうでもええ」って去っていくんですよ。その後、恵介はずっと大悟のことを「駐在」と呼ぶ。そんな恵介が最後の最後に「阿川」と言うんですよね。今回の作品は、恵介が大悟のことを名前で呼ぶまでの話なのかなと思っていて。

実はシーズン1の最初のシーンを撮っているときに、いつかどこかで恵介に「阿川」と呼ばせようと考えていたんです。それは、ラストのほうに持ってくればいいんだろうなと自分の中で設計していました。

柳楽さんも笠松さんも撮影中はなれ合うことなく、いい緊張感を持っていてくれて。その感じは“画”にも出ているんじゃないかな。2人とも自分自身のキャラクターが役に出るタイプの俳優さんなので、そういう意味では、きっと陰でうまくコントロールしてくれていたんでしょうね。

――いつか、恵介が大悟のことを「阿川」と呼ぶかもしれないということは笠松さんに伝えていたのですか?

撮影が始まったばかりの頃に何となくそうなるかもと軽い感じで言いましたけど、笠松さんも「あ、そうなんですね」くらいで本人も覚えていない程度の会話だったような気がします。だから、そこまで意識せずに演じてくれたんじゃないかなと思います。

――役のことなどで柳楽さん、笠松さんから相談されたことはありますか?

シーズン1のときに大悟というキャラクターの在り方みたいなことを柳楽さんと話し合いました。役が持つ狂気性が少しずつ明らかになっていきますけど、それをどういうふうに表現したらいいのかと。僕自身は途中でキャラクターが変わったように見えるのが嫌だったんです。

最初からいつもと違う雰囲気の奴が駐在としてやって来たな、っていう感覚を「後藤家」の人たちに持ってもらいたかった。だから、序盤から遠慮なく演じてほしいという話をしたと思います。シーズン2に関しては、前作からの流れが残っているので、そこまでキャラクターについての深い話はしませんでした。

恵介に関しては、シーズン1とは違う部分がシーズン2で見えてくるんです。笠松さん自身も脚本を読むだけではどういう立ち位置でいるのかつかみづらいところがあったと思うので、プロデューサーを交えて恵介の気持ちの流れみたいなものを話し合いながら作っていきました。このシーンは何を大切にしているのかということが一致していないとお互いが変な方向にいきそうになってしまう。僕も笠松さんも同じ気持ちだったんでしょうね。

警察VS後藤家の銃撃戦は「派手にやりたかった」

――シーズン2は警察と「後藤家」の“全面戦争”も見どころの一つですが、銃撃戦やアクションシーンで工夫した点はありますか?

銃撃戦は派手にやりたかったので実写とCGを織り交ぜながら撮りました。1カット、1カットを点で見せるというよりは、同じカメラでシームレスに見せられるカットを増やしてアクションの奥行きを見せたいなと。こっちで何かをやっていて、カメラを振ったらそっちでも誰かが動いている。

そういう連続性を大事にすることで、どういう場所で戦いが行われているのか。それぞれのキャラクターたちの位置関係も見ている人には伝わりやすくなったんじゃないかなと思います。

それと、銃撃戦は恵介の目線でも語られるべきものなので、彼がどういうふうに見ているのかということも意識しながら撮影しました。

――今回は「ボディーマウント」(撮影者が装着する一体型のカメラ用マウント)という機材を導入されたそうですね。

視点が重要な話になってくるなと思ったので、より群像的な物語を描かなければいけない。大悟と恵介、大悟の妻・有希(吉岡里帆)、そして不気味な存在感を放つキャラ“あの人”(澤井一希)も含めていろいろな人にフォーカスを当てて語る必要がある。

このシーンは誰の立場で見るべきなのか。それを映像的に分かりやすくするために導入しました。ちょっとゲームっぽいというか、不思議な臨場感があって割とうまくいったんじゃないかなと思っています。

――演出の仕方も変わりましたか?

機材を装着すると、単純に可動域みたいなものが狭くなるんです。カメラを前に向けるとその人の視点でしか映らない。逆に自分に向けると、結局体の下のほうからカメラが出ている感じになるから、それを支えながら走ることになるんです。

だから、途中で横に倒れるアクションのときは結構危ない。機材を背負いながら倒れるから補助が必要なんです。笠松さんに着けてもらったときも相当負荷が掛かっていたと思います。

――動きといえば、劇中で“あの人”と呼ばれる大男・白銀(しろがね)の一挙手一投足は何とも言えない不気味な存在感を醸し出していますね。

“あの人”は、コンテンポラリーダンスの先生に振りを付けてもらいました。僕からは“2メートルの田中泯さんにしてほしい”というオーダーを(笑)。高い所から降りるジャンプの仕方、食べ方、体の傾き方、鎌の振り方など、細かい癖も含めてシーズン1のときから澤井くんに練習してもらいました。

シーズン2は感情を表現する芝居が多かったんですけど、澤井くんがうまく演じてくれて“あの人”というキャラに深みが出たような気がします。

吉岡里帆の起用は「どこか母性的なものを感じて」

――大悟の妻・有希を演じた吉岡さんの印象はいかがですか?

「泣く子はいねぇが」(2020年)という映画を見ていたということもあるし、どこか母性的なものを感じていたのでオファーをしたら、吉岡さん自身もお母さん役をやってみたいと思っていたらしくて快諾していただきました。

有希はヤンキーっぽい口調なんですけど、吉岡さんがしゃべることでマイルドに聞こえるようなところがあって。ただ怖い人っていう感じには見えないところがいいなと感じました。

――物語の重要なキャラクターの1人「後藤銀」の若い頃を演じている恒松祐里さんも強烈なインパクトを残していますよね。

倍賞美津子さんが演じる銀の若い頃ということで、誰に演じてもらうのかキャスティングは結構難航しました。

銀は欲深い女性というイメージ。恒松さんはいろいろな作品に出演されていて、“欲深さ”というかアグレッシブな印象を受けていたんです。体当たりの演技も求められる中、妖艶さや意志の強さを併せ持っている恒松さんがいいんじゃないかなとプロデューサーに提案してお願いすることになりました。

シーズン2の5話、6話という短い時間で回想シーンを描かないといけないし、時系列もバラバラに展開していくので物語の軸としての存在感が欲しかったんです。恒松さんがそこにいるだけで軸がしっかりとできたので非常に助かりました。

――「ガンニバル」は世界に配信されていますけど、日本の映画やドラマの未来についてはどのように考えていますか?

もちろん、映画もドラマも世界に向けてという意味では未来を感じています。日本的なものをいかに世界に届けるのかということも大事ですけど、どこの国の人が見ても面白いと感じられるものができたらいいなと。それがSFなのかホラーなのかスリラーなのかは分かりませんが、その国の文化を知らなくても楽しめる作品というものを意識することが大切です。

キャラクターをしっかりと描くこともそうですし、そこにどういうストーリーを持ってくるのか。予算的なことも含めていろいろ考えながら面白いものを作っていけたらいいなと思っています。

「ガンニバル」シリーズはディズニープラス スターで全話独占配信中。

◆取材・文=小池貴之

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