「アンサンブル」第10話より

<アンサンブル>90年代の恋愛ドラマを意識し制作、ドラマPが語る作品に込めた思い 最終話にはコメディー要素も

2025.03.21 06:00
「アンサンブル」第10話より

川口春奈が主演を務め、松村北斗が出演するドラマ「アンサンブル」(毎週土曜夜10:00-10:54、日本テレビ系/Hulu・TVerにて配信)の最終話が3月22日(土)に放送される。本作は、弁護士の瀬奈(川口)と真戸原(松村)がバディとなり、恋愛トラブル裁判を通して互いを理解し合い交際を始めるが、それぞれのトラウマや元恋人、家族が二人の恋の邪魔をする明るくてちょっと切ないリーガルラブストーリー。この度、WEBザテレビジョンでは、本作のプロデューサーを務める後藤庸介氏にインタビューを実施。視聴者からの反響や、キャスト陣の魅力、最終話見どころなどについて話を聞いた。

恋愛ドラマを描くにあたっての思い

――放送が始まってからの視聴者の反響をどのように受け止めてらっしゃいますか。

配信では、第1話以降視聴者が減っていくことが多いですが、「アンサンブル」は非常に好調です。継続して見ていただけているのを感じる一方で、ラブストーリーだから見ないという方も一定数いるんだな~ということも実感しています。

――「アンサンブル」はオリジナル作品ですが、ラブストーリーが企画の出発点だったのでしょうか。

そうですね。でも出発点は、ラブコメでした。そこから川口春奈さんと松村北斗さんをキャスティングしたいと思い、この二人で何をやるべきなのか検討していく中で、ゆるやかに今の形になっていきました。

――「アンサンブル」はラブストーリーではありますが、そこに法律や家族の問題、さまざまなお話が絡んできます。ピュアなラブストーリーにしなかったのはなぜだったのでしょう。

今って恋愛に対しての想いも、恋愛的なものに触れる機会も減ってきている。昔ほど恋愛の優先順位が高くなくなっていると思うんです。だから生活を描く中で恋愛に偏重しすぎると、リアルじゃない気がして。

今は女性も仕事をして、自立しているのが基本としてありますよね。その中で、仕事と恋愛が互いに良い影響を与えあう「恋愛的生活」を描けたらいいなと思いました。

ファンタジーでもいいから「恋愛してみるのもいいかも」とか、「こんな恋愛があったら意外と仕事も楽しくなるかも」ということを描きたいと考える中で、今の時代はもしかしたら二人だけで恋愛するよりも、家族や友人、自分に近い人を巻き込んだほうが恋愛しやすいんじゃないかなと思ったんです。そういう恋愛が増えたらいいな…って。

――恋愛の優先順位が低くなったのは、コロナの影響などもあると考えていますか。

どうなんでしょう。二人きりになりづらい、気軽に誘えないような環境になっていると思います。マッチングアプリの登場もあり、条件を確認し合える時代になって、効率化を求める感じにもなっているし。相手に合わせてみたら自分の違う一面が出て楽しくなったとか、そういうのは少なくなっているかもしれないですね。だからヒロインの瀬奈が、真戸原という男子に、自分を変化させてもらうファンタジーを取り入れるのはどうかなと思ったんです。

――脚本作りにおいて意識したのは、そういうところだったんですね。

そうですね。二人きりの恋愛だけではなく、仕事と恋愛、生活と恋愛、家族と恋愛がやりたかった。でも、ちょっと詰め込みすぎたかな(笑)。

「90年代の恋愛ドラマのような盛り上がりを若い人にも見てもらいたい」

――ということは、「アンサンブル」というタイトルは、恋愛と仕事、生活、家族、そのほかさまざまなものとの調和…ということになるのでしょうか?

実は最初は、「アンサンブル」というタイトルではなかったんです。もうちょっとラブコメっぽいタイトルで進んでいたのですが、キャストが決まってきて、ビジュアルが分かってきて、その中で「恋愛って二人でするより、みんなとすれば怖くないかもよ」という思いが沸いてきたので、タイトルを変えようとなりました。

――第1話のラストの雪が降ってくるシーンでは真戸原が恋に落ちる瞬間が描かれて、すごくロマンチックでした。ファンタジーというお話もありましたが、1話に必ず1キュン以上が仕込まれているのも意識したところですか。

はい。チャレンジとして。今の恋愛ドラマのトレンドではないけれど、僕が見てきた90年代の恋愛ドラマのような盛り上がりを若い人にも見てもらいたいなと思って制作しました。

――スケートをしたり、気球に乗ったり、少女漫画のようなシーンもたくさんありましたが、そのあたりの撮影裏話があったら教えてください。

スケートに関しては、キャストの皆さん滑ったことがなかったんですよ。本番の前に1時間くらい練習しました。気球のシーンは、朝3時に集合して真っ暗で何も見えない中でリハーサルをして「大丈夫なのかな?」という不安もあったのですが、好天に恵まれて、本番はバッチリでしたし、撮影もすごく楽しかったですね。

川口春奈、松村北斗、田中圭の演技の魅力

――小山瀬奈を演じた川口春奈さんの演技の魅力について教えてください。

川口春奈さんは、表情の繊細さや、気持ちの揺れ具合や仕草がいいですよね。自信がなくて自己肯定感が低いけれど、ギリギリ卑屈になりすぎないから、瀬奈がすごく可愛いなと思える。

真戸原と出会って瀬奈の自己肯定感が上がったところで、後半は真戸原の物語になっていきます。真戸原に支えられていた瀬奈が、支えていく側になる。自分に向いていた関心を相手に寄せるフェーズに変わっていく。川口さんが演じるその微妙な変化がまたすごくいいんですよ。

――真戸原優を演じた松村北斗さんについてはいかがでしょうか。

興味深い役者さんですよね。川口さん、松村さん、田中圭さん、三者三様というのも面白いのですが、松村さんは独特のセンスというか、才能が憎いくらいで(笑)。一気にまくし立てるところと、考えながら言うところの節回しが、僕らのイメージと毎回違うんですよ。いろいろなお芝居がありますが、節回しって実はあまり変わるものではなくて。本人が意識しているであろう、家族と喋るときと、家族以外の人と喋るときの演技は明らかに違いますが、意識していないところでも、松村さんはその節回しが違ってくる。そこがすごいなと思います。

とにかく、川口春奈さんと松村北斗さんのコンビネーションが良い。川口さんがどちらかというと豪快な兄貴肌で、松村さんが穏やかで楽しく受け入れてくれるタイプで。そのピースが見事にはまっている印象があります。

――三者三様というお話もありましたが、宇井修也役の田中圭さんはいかがでしょう。瀬奈と真戸原の恋を応援する視聴者からすると、毎回宇井の登場にモヤモヤさせられますけれど(笑)。

圭さん演じる宇井って、芝居もセリフも「普通こんなこと言う?」というキャラクター。それを直球で表現して、リアリティーのあるものとして見せる力が圭さんはすごい。まさになりきる力というか、役に説得力を持たせてくれるんですよね。90年代ドラマのファンタジーな部分をうまくやっていただけている気がします。

最終話にはコメディー要素も

――後半は真戸原の物語になっていくということですが、実の親に翻弄されたり結構ハードモードですよね。

生きていくって大変じゃないですか。そういうことを無視して、イチャイチャだけするのもな…と思って。あとは松村くんが魅力的な役者なので、彼がやったことないような、見たことないものを僕らが見たいという想いが確実にありますね。この展開には。

――最終話に向けての注目ポイントを教えてください。

当初はラブコメを想定していたので、良くも悪くもラブコメっぽいところが残っている部分がありますが、特に最終話にはあっけらかんとしたコメディーみたいなところが出てきますので、お楽しみに。

皆さんに感じてほしいのはやはり、「アンサンブル」というタイトルの意味ですね。二人だけの世界も大事だけれど、二人だけじゃない世界も大事。逆に言えば、みんなといることを前提とすると、恋愛も悪くないということを少しでも感じてもらえたらいいなという想いです。仕事も恋愛も、生活も恋愛も、家族も恋愛も一緒にできる。ファンタジーかもしれないけれど、そんな希望を感じてほしいですね。瀬奈と真戸原が二人でつらいことを乗り越える結末をしっかり見て、楽しんでもらえたらうれしいです。

◆取材・文=坂本ゆかり

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