成宮寛貴８年ぶりの俳優復帰「毎日、新人のようにドキドキしながら目を覚まして。全てを出し切りたいという気持ちでした」

2025.03.12 12:00

誰も愛せない男と愛に飢えたものたちのラブサスペンスドラマ「死ぬほど愛して」(毎週木曜夜11:00、ABEMA) が3月27日(木)から放送開始。「金田一少年の事件簿」の天樹征丸が原作を担当し、人を愛することができない主人公の偽りの仮面が剥げ落ちていく姿を恐ろしくも切なく描いていく。人がうらやむ容姿のエリート・神城真人は美しい妻・澪と結婚して1年。幸せそうな結婚生活を送っていたが、近所で女性記者殺人事件が発生して2人の運命の歯車が狂い始める。一種のカリスマ性を持ちつつ犯罪を重ねていく神城真人を演じるのは、8年ぶりに俳優復帰をする成宮寛貴。今回は、久しぶりに演技をした感想や作品の魅力を語ってもらった。

8年のブランクはカメラの前で解けていった

――最初にドラマの脚本に触れて感じたことを教えてください。

愛についてのお話なのにこんなに振り回される作品ってなかなかないと思いました。役の魅力が止まらないというか。こういう役もあるんだなって。改めて原作者の天樹征丸さんのすごさを感じました。

――原作者・天樹征丸さんからの熱烈オファーがあったとのことですが。

ありがたいです。ずっと見てくださって、またこういう機会をいただけるとは…。そして主人公である真人を「ナリみたい」と言われていたのが印象的で。何を思っているかわからない、奇妙さが似ていていいとおっしゃっていて、天樹さんには僕はどんな感じで映っているのかな？とは思いました(笑)。

――真人はどういう人物だと思いましたか？

何のためにあれだけの事件を起こしたのかと考えたとき、彼には妹しかいないんですよ。その彼の置かれている状況は、想像を超えてすごいかなり切ないと思います。あと全然痛みを感じていないところはお芝居をしていてすごく楽しかったです。

そして真人の面白いところは、実際に言っている言葉がWミーニングになっていて、実は真逆のことを想像しながら言葉を発している…みたいなことが多いところ。例えば、「早く終わって本当によかった」と言っていて、一瞬、仕事に対して言っているのかと思ったら殺人のことだったり、「愛しているよ」と言っときながら次のシーンで違う女性を抱いていたり…。見ている方はかなりドキドキするんじゃないかな。

とんでもなさ過ぎて理解はできないけれど、彼の奥底にある孤独感みたいな部分には共感できるというか。大人になると孤独に鈍感になっていくけど、真人は子どものまま痛みを感じていて意外とピュアだなと思ったりしました。タイトルの「死ぬほど愛して」というのは、もしかしたら真人の秘められた思いかもしれません。

――8年ものブランクがありましたが、カメラの前に立ったときの気持ちはいかがでしたか？

全てを出し切りたいという気持ちでいっぱいでした。とくに真人はダマす側なのでもうずっとしゃべっていて。その膨大なセリフの量を覚えることだったり表現方法だったりは、少しずつ思い出しながらやりました。カメラを見ながらセリフを言うときは、ちょっと奥の方を見るようなイメージで演じるとか、これまではさりげなくやっていたことを思い出すような感じでカメラの前に立っていて。撮影しながら再びトビラが開いていくような、雪解けていく感覚に近かったです。

――改めてお芝居をすることに対して感じたことを教えてください。

作品に携わることがすごく楽しいって改めて感じました。まず脚本を読むところから楽しくて。今回は原作がマンガですが、色んな時間軸で物語は繰り広げられていて、それはマンガだから成り立つ部分は結構大きかったと思うんですよ。それを実写に落とし込んだ台本が出てくるのですが、こんな風にまとめたのか…とか、このシーンを増やしたんだ…みたいな楽しさがあって。色んな方の力が集結して作品を作っていく取り組みが見られて楽しかったです。

ドラマの作り方の変化「選んで見てもらう時代になった」

――夫婦役を演じた澪役の瀧本美織さんとのシーンも多かったと思いますが。

すごくかわいらしい、ちょっと天然なところがある俳優さんで、一緒に楽しい時間を過ごさせていただきました。そして何よりお芝居が天才的で、素晴らしかったです。現場は、物語の内容はピリピリとしていたのに和気あいあいとしていて、すごく居心地がよかったです。

――座長として気をつけた点はありますか？

とにかく現場は明るくとは思いました。これは昔から変わっていない考えです。ただ登場人物が少ないだけにそれぞれのセリフ量がかなり膨大だったり、力を抜くことができないシーンの連続だったので、実際は楽しみながらも、それなりに緊張感があったような気もします。僕自身も結構悩みながら演じていたので。

――実際の映像はご覧になったのですか？

それが現場にはモニターがなく、自分で演じた姿は見ていないです。こういう現場は新鮮でした。あとカット割りも少ないですし、撮り直しもほとんどなくすぐに終わってしまって。だから、大丈夫だったのかな？と思っているシーンが結構たくさんあるんですよ(笑)。それも今回はごまかしきれないようなカットも多いので、オンエアまでかなりドキドキ。どうなっているのか…。みなさんと一緒に確かめたいです。

――かなり研ぎ澄まされた現場だったんですね。

毎日、ドキドキしながら目を覚まして、「今日の芝居大丈夫かな？」って思いながら現場に向かっていました。こんなの久しぶり。睡眠時間も興奮してなのか、すごく少なかったですから。デビューしても間もない頃の感覚に近いというか…。またイチから始まったって感じです。新人のような気持ちでいっぱいでした。

――8年の間にエンターテインメントを取り囲む状況も変化していると思いますが、久しぶりに戻ってきて感じたことはありますか？

今回、配信ということもありますが、選んで見てもらう時代になったなと感じています。たくさんある情報の中で、自分が欲しいものを選択して見る時代、ぜひ選択してもらいたいです。あと作品のテイスト部分だと、1週間に1話ずつしか見られないドラマとイッキ見できるドラマは違うなって感じました。作り方としても、没頭して引き込まれることを意識した作り方をしていて…。なんか浦島太郎状態です(笑)。

――お休みしていたときはエンタメに触れていましたか？

もちろん。アニメやドラマは大好きでよく見ていました。結構、ホラーもよく見たかな、好きなんで(笑)。ドラマはシリーズものをそれこそ10話とかイッキ見したりして。見始めたらアドレナリンが出ているのか眠くなくなって一気に見切ったりしていました。で、そのとき思ったのがそういうアドレナリンを出させるような、次が気になる作品に参加したいなってこと。今回の作品がそうなっていればいいけど。僕もまだ見ていないのでかなりドキドキ。42歳になってもこんなにドキドキできるって幸せだなだと思います。

取材・文＝玉置晴子