湊かなえ脚本、13年前の“入試”ミステリー作品で長澤まさみ“杏子”が罪を告白＜高校入試＞

2025.03.11 11:30

時を経てから改めて再会するドラマというのは、自分の立場や視点が変わったことによる新たな発見があり面白い。学園モノや学校を舞台にした作品だと、当時興味を持って視聴した頃に中高生だった場合も、再放送やサブスク配信時には自分が親世代になっていたりして、生徒だけでなく保護者や教師の言い分までも楽しめるようになるものだ。長澤まさみ主演のオリジナルドラマ「高校入試」(2012年、フジテレビ系)が、現在FOD・TVerで順次全話が配信されている。放送から13年が経過し、初めて見る人も再視聴し直す人も共に楽しませている。物語のクライマックスとなる第11話・第12話・最終話を紹介しよう。 (以下、ネタバレが含まれます)

校内に侵入した女子生徒を恋敵の同僚教師が激怒

「高校入試」は、「告白」や「Nのために」などヒット小説を生んだ湊かなえが脚本を担当している。地元で有名な県立高校で起きた「入試をぶっつぶせ！」という何者かによって計画された事件が発生。ネットの匿名掲示板の中に潜む犯人が特定されていく様子にドキドキしたり、受験で気持ちがゆがんだ子どもたちや入試によってかつて苦しんだ経験がある大人たちの本音が垣間見られたりする作品だ。新任教師の春山杏子(長澤まさみ)が主人公で、受験生役には高杉真宙、清水尋也、美山加恋らが名を連ねる。back numberの歌う主題歌「青い春」も印象的。FOD・TVerで開催中の「#ドラ活浸れ、超自分的ドラマ生活。」キャンペーンにより、2025年3月17日(月)まで第1～3話と最終話が無料公開中である。

第11話は、受験当日に校内に中学生の制服を着て侵入していた在校生・衣里奈(山崎紘菜)がキーパーソンに。応接室で杏子と相田(中尾明慶)が校内で発見された衣里奈から、これまで一体何をしてきたのかを聞き出す。衣里奈は掲示板への書き込みやこれまで行ってきたこと、そして動機を語り始める。廊下では、聞き耳を立てていたみどり(南沢奈央)は衣里奈の言い分に憤慨し応接室へ飛び込む。相田はみどりと交際しながら、衣里奈にもちょっかいを出していたのだ。

一方、淳一(柾木玲弥)の家では淳一が兄で引きこもりの光一(中村倫也)から「おまえ、何をしているの？」と聞かれる。淳一は「復讐」と答え、こちらの空気も不穏でいっぱいだ。

「入試をぶっつぶせ！」の真相を知る杏子がついに語り始める

続く第12話。応接室で揉めに揉めるみどりと衣里奈の激しいののしり合いを杏子ら教師たちが必死に止めに入る。それを見ていた村井(篠田光亮)が突然「いい加減にしろ！」と叫び、応接室はしんと静まりかえった。村井は自分の子ども時代の受験に対する苦しかった思いを語り始める。そして村井は、受験をぶちこわそうとしている人物の名を口にした。

最終話となる第13話。村井が名を出したのは、杏子だった。杏子は、過去に交際をしていた教師の死の理由と、杏子が教師になることを決意した経緯を語り始める。赴任以来ずっと抱いてきた本校教師たちへの思いもぶちまけ、杏子の意図や受験当日に何を計画したのかが徐々に明らかになっていく。杏子は教師たちに、とあるウェブサイトを見せて事件のきっかけと、もう一人の“犯人”を指摘する。

普通と思われていた人物が異常さを放ってきたり、平和な教室にはある人物の黒い思惑が渦巻いていたりといったことが同時多発し、最後にはすべて明らかになっていく。のんびり描かれていた中盤の展開さえも、不気味さが増した印象へと変えていくのは、まさに脚本担当・湊かなえの得意とするところ。人間の見えている世界には必ず裏があって、さまざまな人物の気持ちや行動がつながっているということが描かれていた。受験や高校にまつわる“あるある”ネタもふんだんに散りばめられている今作、春休みに一気見してみるのもいいかもしれない。