『本の世界に入ってゆっくりする話』より

古書店を訪れたと思いきや…そこは懐かしい絵本の中だった話に「疲れた現代人の憧れ」の声【漫画】

2025.03.10 18:00
『本の世界に入ってゆっくりする話』より

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、「ダ・ヴィンチWeb」にて連載中であり、2月26日に書籍が発売された『古書店ミチカケ 心晴れぬ日はいまを忘れてひとやすみ』(KADOKAWA刊)を紹介する。作者のかんさびさんが、『本の世界に入ってゆっくりする話』と添えて12月10日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、2000件を超える「いいね」やコメントが多数寄せられた。本記事では、かんさびさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。

本の中に入る、不思議な力を持つ店主が営む古書店を訪れた男性

古書店「ミチカケ」を営む男性・サクは本の世界に遊びにいき、登場人物や世界と触れ合えることができるという不思議な力を持っている。その力を気に入っているサクだったが、ずっといることはできないため、いつかは本の世界に永住したいと考えていた。

そんなサクが営む「ミチカケ」に、ある夜男性が訪れる。仕事で帰りも遅くなり、家に帰れば食事をして眠るだけ…。そんな日常に沈んだ表情をしていた男性は、「ミチカケ」の本棚にあったある絵本を見つける。

それは昔読んだ絵本で、懐かしみながら読んでいると、気が付けば男性はその絵本の中にいた。あまりにも現実味のないことに混乱していると、先にその本に入っていたサクが男性を迎える。これは夢だからのんびりしようと言い、サクと男性は本の世界で砂浜に寝転がることに。子どもの頃に想像していた楽園の色を持っている世界で、男性は忘れていた記憶を思い出しはじめ…。

この優しい世界を描いた漫画を読んだ人たちからは、「発想が素敵」「幸せな気持ちになる話」「疲れた現代人の憧れ」「私も本の中に入りたい…」など、多くのコメントが寄せられている。

本の世界はいつでも開かれており、いつでもそこにあるもの

――本作は本の物語の中に遊びに行けるという斬新さがありながら、読み進めていくうちにほっこりするストーリーでした。お話の発想の源はどこだったのでしょうか?

人が本を読む理由のひとつに、現実逃避があると思います。ただ、それは決してネガティブな意味ではなく、現実から少し距離を置き、本の世界に没頭することで心を休め、活力を得て、再び現実に戻る——そのようなプロセスだと考えています。私自身も、これまでに出会った本に励まされ、癒されながら知識や人格を形成してきました。そんな私にとっての大事な本、思い出の本を思い出し、見返すことで作品を作りました。本の中で気づきを得ることで、現実の問題に立ち向かう力を得られる。そんな思いを込め、古書店ミチカケのサクの本当の使命を描きたいと考えました。

――本作では、物語の中の動物たちが「またおいで」と店主を見送る姿に安心感を感じました。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。

こうした異世界に入り込むファンタジーでは、「一度出ると二度と戻れない」という設定がよくありますが、本の世界はいつでも自分の好きなときに戻れる扉のような存在だと思っています。そのため、本作では「本の世界はいつでも開かれている」という前提を大切にしました。また、こだわったというより、むしろ避けたのは「意地悪な人」や「絶対的な悪」を登場させることです。悪意のある人物ではなく、ただ考え方が違うだけ——そんな世界観を描きたかったのです。

――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

ロマンス小説の回で、小説の中で老夫婦が会話する場面が特に気に入っています。この話は少し自分の両親をモデルにしました。父はだいぶ前に亡くなっており、生前は難しい本を読むのが好きでした。母は若いころにハーレクイン小説を買っていました。父は昔気質の人だったので、母の趣味は理解できていなかったのではないかと思います。しかし父が亡くなったとき、「母が人生でこんなに泣いたことはない」と言っていたのを覚えています。子供の私からみたら、たいして仲良くも悪くもない普通の夫婦だと思っていましたが、言葉にしなくても深い絆で結ばれていたのだと感じました。その想いを、このエピソードに込めました。

――ストーリーを考えるうえで気をつけていることや意識していることなどについてお教えください。

できるだけ他者を傷つけるような表現や、嫌な性格のキャラクターを登場させないようにしています。勧善懲悪の物語を読むのは好きですが、自分で描くとなるとどうしても心が痛みます。考え方の違いによって生きづらさを感じることの多い世の中ですが、だからこそ「違い」によって気づきを得られるのが本の魅力だと思っています。それを物語の中で表現しようと意識しています。

――かんさびさんにも本作の店主と同じ能力があったら、どのような物語の中に遊びに行きたいですか?

子どもの頃から絵本の世界に憧れていたので、文章が少なく、美しい絵が広がる物語の中に入ってみたいです。たとえば、たむらしげるさんの『ファンタスマゴリア』や『銀河鉄道の夜』など、静かで幻想的な世界を旅人として訪れてみたいですね。

――今後の展望や目標をお教えください。

読む人に気づきを与えられる物語を描くのは難しいかもしれませんが、少しでも心を癒せるようなお話を作り続けていきたいと思っています。次は、不思議な絵本のような物語を描いてみたいですね。

――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!

物語の中で込めたメッセージや意識していたことが、どれだけ伝わるかはわかりませんが、何よりも「読んでホッとできる」「癒される」と思っていただけたら嬉しいです。これからも、本を通じて私が味わってきた感動を、読者の皆さんにもお届けできるような作品作りを続けていきますので、応援していただけたら幸いです。

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