相手のことを自分のこととして感じられることが、愛。上白石萌音が語る「理想の夫婦像」

相手のことを自分のこととして感じられることが、愛。上白石萌音が語る「理想の夫婦像」

2025.03.05 11:10

取材・文:ねむみえり

撮影:大嶋千尋

編集:杉田穂南/マイナビウーマン編集部

これを「愛」と言うのだと、はっきりと分かった。

2025年3月7日(金)に公開される映画『35年目のラブレター』は、実話をもとにした作品となっている。幼少期にとある事情で文字の読み書きを習わないまま大人になった西畑保(笑福亭鶴瓶)と、そんな保を支え続けた西畑皎子(きょうこ・原田知世)の夫婦関係は、あまりにも温かく、だからこそ涙する場面も多くあった。

そんな夫婦の温かさは、2人が出会った当初から変わらない。35年前の保(重岡大毅)と皎子(上白石萌音)を見ていると、この2人は出会うべくして出会ったのだと思わずにはいられなかった。

今回お話を伺ったのは、若い頃の皎子を演じた上白石萌音さん。彼女は皎子を演じながら、どんなことを感じていたのだろう。

■言葉の選び方はその人を映す

――『35年目のラブレター』は実話を元にした作品ですが、西畑さん夫婦のエピソードや、映画全体のストーリーを知った時に、どのような印象を抱きましたか?

これが愛なんだな、というのを示してくれる、大きな力のある作品だと思いました。しかも、こんなに美しくて温かいお話が実話であるということが、とてもうれしかったです。

――上白石さんは青年期の皎子さんを演じられていましたが、皎子さんのことをどのような女性だと感じましたか?

皎子さんの職業はタイピストで、普段から言葉を扱っているお仕事をなさっているからなのかもしれませんが、言葉選びがすごくすてきな女性だなと思いました。難しいことや、奇をてらったことを言わず、相手のことを思いながらも、自分の心とも照らし合わせて、シンプルで温かい言葉を選んで手渡す方なんだなと。

――確かに、皎子さんの言葉からは、常に相手を思う気持ちと温かさを感じました。

言葉の選び方って、その人を映すと思うんです。皎子さんの言葉は、私の心も照らしてくれているような気がしていたので、皎子さんを演じることで言えたうれしい言葉ばかりでした。それと同時に、保さんにとっても大切な言葉がたくさんあるんだなということも感じていました。

――演じていた中で、一番すてきだなと思った言葉はなんですか?

保さんが、本当は自分が読み書きができないということを皎子さんに打ち明けた後に、保さんに向かって言う「つらかったなぁ」というセリフですね。それって、その人にしか分からないつらさがあることを分かった上で、最大限の寄り添いが乗っている言葉だと思って。つらかった人に対して、つらかったね、と言うのはすごく勇気が必要だと思うんですが、それをポンと相手のために出せる皎子さんはすごい人だなと思いました。

――「つらかったなぁ」は、短いながらも皎子さんの思いが詰まっている言葉ですよね。

だからこそ、演じる上ですごく難しかったところでもありました。でも、そのセリフが自然に出るくらい、重岡さんが演じる保さんに寄り添おうと思いました。

――本作を通じて、いくつになっても挑戦する勇気をもらう方は多いと思います。上白石さんは今作を通して何か学びや成長を感じたことはありましたか?

重岡さんから学ぶことはとても多かったです。役への臨み方やお芝居への取り組み方が本当に誠実で真剣で。撮影現場でしっかり自分の意見を伝えているんですが、その時の言葉選びが素晴らしくて、隣にいてずっと感動していました。約9年ぶりの再共演なんですが、またご一緒したいなと目標にしていたんです。今回再共演して、尊敬の念が深まりました。

■お互いを尊敬し合っている両親が、理想の夫婦像

――この作品では、「夫婦愛」があるからこそ、乗り越えられたことや得られたことが沢山描かれていると思います。上白石さんが思う「愛」について伺いたいです。

相手のことを自分のこととして感じられることが、愛なのかな、と思います。完全に分かりきることはできないにしても、相手の気持ちが手に取るように感じられたり、相手を分かりたいという歩み寄りができたりすることが、愛と言えるのかなと。

――ちなみに、上白石さんにとって理想の夫婦像はありますか?

両親ですね。

――すてきですね! どのようなところが理想ですか?

両親は2人とも教師なんですが、仕事の面でも人としてもお互いのことをとても尊敬しているんです。あることで父に相談すると「お母さんはなんて言ってる?」と言うし、母に相談すると「お父さんはなんて言ってるの?」と言うんです。決して人任せにするわけではなく、この人の意見だったら信頼できるという関係を築いている夫婦なんだなというのは、小さい時から感じていました。すごく対等な2人なので、かっこいいし、すてきだなと思います。

■祖母からの手紙は大切な思い出のひとつに

――作中では、「手紙」が大きな役割を果たす存在となっています。上白石さんは手紙を書くことはありますか?

私、普段から手紙を書くのが好きなんです。仲がいい友達にも手紙が好きな人が多くて、何かとカードを入れてくれたりします。家族間でも、誕生日や両親の結婚記念日に合わせてカードを送ることもあるので、手紙は結構身近な存在なんです。

――なかでも忘れられない手紙の思い出はありますか?

この前の誕生日に、92歳の祖母が手紙を書いてくれたのがすごくうれしかったです。私は小さい時に、祖母に手を取って字を教えてもらっていたんです。祖母は今でもすごくきれいな字を書くんですが、そんな祖母の文章を久しぶりに見て、すごく心が温かくなりました。貰った手紙は、すぐに手に取れる場所に置いています。

――お話を聞いていて、私も心が温かくなりました。今、上白石さんがこの人に手紙を送りたいなという方はいらっしゃいますか?

前にお仕事で私の娘を演じた子役の方が、小学校手前くらいにまで大きくなって、字を覚えてカードを送ってくれたんです。ずっと机の上に置いてあるのにまだお返事を書けていないので、今日帰ったら手紙を書きます(笑)。お仕事で一緒だった時は、まだ私がその子をおぶっていて、言葉もちょっとしか話せなかったんです。そんな子が、成長して覚えたてのひらがなで手紙を書いてくれたので、うれしかったです。

■温かくてすぐそばにあるお話として楽しんでほしい

――最後に、マイナビウーマン読者の方に『35年目のラブレター』をどのように観てほしいですか?

本作は思っている以上に笑える作品になっているかと思います。関西の独特のやり取りの楽しさが詰まっていて、お手紙だけじゃない、普段の会話での言葉の良さがすごくある作品なんです。

実話をもとにしているというと少し気構えてしまいそうですが、温かくてすぐそばにあるお話として楽しんでいただけたらいいなと思います。すごく笑ったり、ホロリとしたりしながら、人生の大切なことに気づかされたり、大事な人には今すぐ会いたくなったり、手紙を書きたくなったりするような作品になっていると思うので、気負わずに、大きめのハンカチだけ持って映画館に来ていただければうれしいです。

『35年目のラブレター』

戦時中に生まれた西畑保は十分な教育を受けることができず、読み書きができないまま大人に。保は自分を支え続けてくれた最愛の妻・皎子(きょうこ)への感謝を自身で書いた手紙で伝えようと、夜間中学に通い始めます。

一から文字を習い、妻へのラブレターを書くために奮闘する夫と長年支え続けてきた妻の心温まる感動の実話。

2025年 3月7日(金)全国公開

配給:東映

©2025「35年目のラブレター」製作委員会

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