匿名の書き込み＝SNSの闇にゾッ 13年前の長澤まさみ主演ドラマ＜高校入試＞

2025.03.05 11:30

「告白」や「Nのために」などヒット小説を生んだ湊かなえ脚本、長澤まさみ主演のオリジナルドラマ「高校入試」(2012年、フジテレビ系)が、現在FOD・TVerで順次全話が配信されている。放送からは13年という時が経つが、この作品は風刺が効いており、現代の世の中で問題になっていることの先駆けを描いている。地元で有名な県立高校に「入試をぶっつぶせ！」という貼り紙が出現。何者かによって計画された事件の犯人はネットの匿名掲示板の中に潜んでいるようだが、今回紹介する第9・10話と終盤になっても教師たちは尻尾がつかめずにいる。(以下、ネタバレが含まれます)

受験当日、トラブルが相次いで帰れない教師たちが苛立つ

今作は、入試を目前に控えた県立高校を舞台に、新任教師の春山杏子(長澤まさみ)をはじめ、犯人不明のまま謎の事件が連鎖していくミステリー。FOD・TVerで開催中の「#ドラ活浸れ、超自分的ドラマ生活。」キャンペーンにより、3月17日(月)まで第1～3話が無料公開されている。

第9話は、英語の答案用紙が依然見つからず、杏子ら教師たちは職員室で待機し続けていた。2枚存在する受験番号55の答案用紙と紛失した受験番号46の答案用紙について、杏子が推測を始め、教師たちは耳を傾ける。途中、食料の買い出しにコンビニへと向かう者や、厄介なモンスターペアレントたちを相手に苦戦するなど、教師たちは対応に追われる。そんな中でも、受験の最中に起きた出来事やその場にいなくては分かるはずもない教師たちの言動が何者かによって事細かく掲示板に書き込まれ続けていく。

受験を無事に終えたい教師たちの中に裏切者が？

続く第10話。校長室に、杏子ら教師たちが集められ、2枚存在する受験番号55の答案用紙をどのように扱うかという話し合いが行われる。また、受験番号59つまり松島(羽場裕一)の息子(高杉真宙)の答案用紙に、携帯騒ぎ中に『受験番号55が受験番号61の答えをカンニングしている』という告発文が書かれていたことに話が及んだ。水野(阪田マサノブ)は松島に、松島の息子は沢村幸造同窓会長(入江雅人)の息子(清水尋也)にいじめられていたのではないかと問いかけ、松島を動揺させる。

薄気味悪い展開がジワジワと続き、教師たちは自分たちの中に犯人とつながる者がいるか疑心暗鬼になっていく。教師の中にも受験生の親がいて、我が子の受験結果が人生を大きく左右することが分かっているだけに、職員室も緊張感が休まらないムード。

放送当時、スマホは普及しておらず、それぞれが携帯電話を持ってはいるものの、誰でも気軽に投稿ができるSNSのようなものはない時代。それでもネットの世界には「裏サイト」や特定の情報だけをオモチャにして騒ぐ「裏掲示板」のようなものがあり、匿名で誰かをおとしめていく悪い輩というのはすでに存在していた頃だ。便利なものが出てくると必ず悪用する人々が現れる。13年経っても変わらない、むしろ悪化しているそんな人間の闇を巧みに描くドラマである。主役の杏子を演じる長澤まさみの動きが、ただ振り回されているだけの立場から何か事情を知っているような動きへと変化し、ここに来て怪しくなってきた。最後まで見て確かめたいところだ。