『東京最低最悪最高!』が話題

私は最低、東京は最悪、最高…東京出身の彼と結婚の挨拶をしに行く、地方出身の女子を描いた漫画に「他人事とは思えない」の声【作者インタビュー】

2025.02.06 18:30
『東京最低最悪最高!』が話題

コミックの映像化や、小説のコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は『月刊!スピリッツ』で連載中、かつ1月10日に待望の第1集が発売となった、鳥トマトさんが描く『東京最低最悪最高!』より第1話をピックアップ。

鳥トマトさんが1月10日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、1.6万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、鳥トマトさんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。

地方出身のフリーデザイナーが、東京の男性と結婚を決めた理由

なんでも手に入る東京を舞台に、大切なものは手にできなかった大人たちの物語が詰まった今作。第一話は、フリーランスのデザイナー・アキが主人公の結婚に関するストーリーだ。

東京出身の彼氏と結婚することになったアキは、3年ぶりに福岡にある実家に彼と帰るこに。地方での価値観が強く残る実家では、男はずっと座っててよく、女は座ることを許されない。この地で女にとって大事なことは綺麗な洋服を着て、家事ができることなのだ、と改めて思うのだった。

実家に帰る前、アキは彼氏に演技でよいから「娘さんを僕にください」と言ってほしいと頼んでいた。しかし、夕食時に彼が言った言葉は、その言葉をかみ砕いて言った曖昧な言葉であった。

彼氏が寝室へ行った後も、アキは後片付けをしに階下へ。ごみを捨てに外に出ると、地元の夜は気持ちが良いことを思い出し、踊りだすアキ。帰宅した妹にその姿を見られたうえ、「お姉ちゃんもちゃんと働きなよ。」と言われてしまう。

デザイナーという仕事に家族が理解していないことを改めて感じ、「とりあえず結婚してれば無職になっても即実家に帰らなくて済む」と、東京出身の彼氏と結婚を決めたことを思い出す。さらに地方の価値観に囚われながらも人生を続けていく両親に、アキは感謝の気持ちすらおぼえる。

翌日は彼氏と観光へ。この街の良いところだけを見て、軽い気持ちで「移住したい!」などと言う彼氏。この街の素敵なところは自分とは無関係だ、と感じるアキは、こらえきれず彼氏の頬をたたく…という妄想を抱くも、結局ウソ泣きでしおらしくする。

帰りの飛行機の中で冷静に考えたアキは、自分の都合で彼氏をハンドリングする自分は最低だと感じていた。しかし、ウソ泣きは彼氏にバレており、バレたうえで理解してくれていた彼とならずっと一緒にいられそうだ、と改めて思うのだった…。

作品を読んだ読者からは、「地方出身者の色々な心境が全て詰まってた」「祖父母の価値観はこのまんまだった」「全く同じ意見過ぎて泣いた」など、反響の声が多く寄せられている。

作者・鳥トマトさん「この漫画は「人間」と「街」の話」

――『東京最低最悪最高!』は、どのようにして生まれた作品ですか?きっかけや理由などをお教えください。

2023年から週刊スピリッツでネーム原作者として漫画を連載していたのですが、自分の絵でも漫画をもっと描きたいな、と思って連載ネームと並行して全然関係ないネームを月一くらいのペースで描いてスピリッツの担当編集さんに見せ続けていました。最初の読切版の「東京最低最悪最高!」はそのうちの一つです。毎回主人公の異なる連作短編は1話1話が読者さんとのタイマン勝負のような感じで話を作るのが大変なので、途中で漫画家の方が息切れする可能性もあって、連載として立ち上げるのは担当編集さんとしてもけっこう勇気がいることだと思うのですが、毎月連載と並行して関係ないネームを出し続けていたガッツを買ってもらったんだと思っています。

僕は2024年半ばくらいまで、「自分の漫画の何が面白いのか」ということが正直全然よくわかっていなくて、そもそも勝手に描いたネームだから打ち合わせもしてないし、見せたネームに対する担当さんの反応は「全ボツ」または「ほぼ直しなしOK」の2通りしかなくていつも0か100のギャンブルみたいな気分でした。

最近はだいぶん自分がどんな漫画が描けるのかということと、担当編集さんの好みが把握できてきて、ギャンブルの打率が上がってきたのですが、お見せしたネームの中には、おそらく全然面白くないネームもあったはずで、根気よく見ていただいた担当編集さんには本当に感謝しています。(スピリッツ担当編集M木さんの好みの偏りについては「東京最低最悪最高!」一巻のあとがきを読んでみてください!)

――今作を描くうえで、特に心がけているところ、大切にしていることなどをお教えください。

この漫画は「人間」と「街」の話だと思っています。なので「街そのもの」が第二の主人公だと思っているので、印象的なシーンでは街の様子が分かるように描くことを心がけています。

また、人間は一度にたくさんの情報を処理できなくて、一コマに情報を入れすぎると見てもらえないということがわかってきたので、「このコマで一番読み取ってもらいたい情報は何なのか」というのを選別して画面作りをするように心がけています。

――今回の作品のなかで、特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

気に入っているシーンは3話の後楽園のスーパー銭湯にワーママが連れて行かれるところです。実際に夜の20時くらいにあの辺りに行くと、とてもキラキラしていて浮世離れした感じがするので、皆さんも精神が限界だと思ったら、後楽園にぜひ行ってみてください。疲れていると、本当にキラキラして見えます。

それから、4話の夢の話をしているところのシーンも好きです。ここの背景は実はシンガポールとマレーシアの風景が合体した存在しない風景なのですが、あんまり誰も気がついてないですよね。こういう美しい嘘がつけるのが漫画のいいところだと思いますし、漫画家として腕の見せ所だぜ!と思って頑張っています。

大人になると、人によって人生のステージが違ってきて、会話がうまくできなくなる友人が増えてくると思うのですが、そういう時にこの漫画を思い出して、人の縁はどこにでもあるし、切れないし、きっといつかまた繋がる日が来ることを思い出してもらえればと思っています。

――Xの投稿には多くの反響とコメントが寄せられていますが、その中で特に印象に残っているものはありますか?

「俺が会社で無能だと思ってるおじさんやおばさんにも若い頃や人生があったんだな」という内容のコメントがすごく印象に残っています。

昔から僕は「オーケストラの105人」という絵本が大好きでして、その絵本はオーケストラの105人のメンバーが演奏会に来るまでにそれぞれ別の人生がある、ということを淡々と説明してくれる絵本なのですが、自分もそのような物語を描きたいと思っていたので、描きたかった意図が伝わっているようでとても嬉しかったです。

それからXには僕をデビュー当時から応援してくれる精鋭読者の人達がいて、誰一人会ったことはないのですが、すごく勇気づけられます。僕は今でも自分の描く漫画が本当に面白いのか不安になる瞬間があるので、いつもありがとう、と思ってコメントを読んでいます。

――鳥トマトさんご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。

大きな目標としては、自分が死んだ後も誰かが読んで面白い!と思ってくれるような漫画を描き残したいと思っています。そのためにも、生きているうちは、一生漫画を描いて生きていきたいです。

先日、死ぬまでに漫画を毎年4冊刊行したら合計何冊出せるのかを計算したのですが、思っていたより少なくて、時間って貴重だなあと思うようになりました。

ということで、まずは今いただいているお仕事の一つ一つを大事に、毎回原稿をちゃんとしたクオリティで絶対期日通りに納品できるように、そしてそれを継続できるようにしたいです。

それから、5年以内に画集を出したいと思っているのですが、それにはだいたい150枚くらい絵が必要で、単純計算で年間30枚くらいカラーの絵を描かないといけないんですよね。僕は昔から、わたせせいぞう、江口寿史、永井博、鈴木英人、吉田博、川瀬巴水、葛飾北斎(いずれも敬称略)作品のような、線のはっきりしたカラフルな風景画が大好きでして、これからは背景の絵も力を入れて頑張っていこうと思っています。

ということで、漫画以外の絵にも挑戦したいと思っているので、絵の仕事をください!

あとは何か面白いことをやっていないと、面白いものが描けないのではないかという気持ちが常にあるので、音楽を作ったり、小説を描いたりという漫画とは関係ない面白いことも継続していきたいです。

漫画をコンスタントに描き続けるためには健康時間を伸ばさないと…と思って最近は毎日自炊もしています。その写真もSNSに上げてフォロワーの人に見てもらっています。自炊はSNSがなかったら続いていないです。もはやフォロワーさんは保護者の人みたいな感覚です。本当にありがたいです。

欲張りすぎる!自分でもドン引きです。でも言った方が実現可能性が上がると思うので取材で言いました。強欲ですみません。とにかく、絵と漫画の仕事をください!(2回目)

――最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。

これからも何らかの方法で読者の方に「面白いし、ためになるし、読んで良かったな」と思っていただける漫画を描いていきたいです。

夜景を見ていると、あの電気の一つ一つの下にそれぞれ別に残業している人間がいて、その人間には両親や子供がいて、それぞれが別の人を好きになって、別々の人生を一生懸命にがんばっているんだなあと思う瞬間がありますよね。僕の漫画を読んだ人にも常々そういう気持ちを味わってほしいと思っています。

つまり、僕もいつもがんばっているし、あなたもいつもがんばっています。今日も一日がんばりましょう!疲れたら僕の漫画を読んでください!笑

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