芸人・川西賢志郎、M-1で戦い続けたあの頃「本当は勝敗をつけることと、お笑いは矛盾していると思う」
「和牛」として漫才に向き合ってきた芸人・川西賢志郎。漫才コンビを解散し、漫才師として歩んできた“これまで”と、芸人としての“これから”を綴るエッセイ『はじまりと おわりと はじまりと ―まだ見ぬままになった弟子へ―』を上梓する。インタビューでは改めて漫才とどう向き合い、これまでの芸人人生がどのようなものだったか語ってもらった(前後編の後編)。>>前編は下の関連記事からご覧ください。
──漫才師としてのイメージが強い川西さんですが、そもそもテレビへの憧れが強かったんですよね。
やっぱり大阪に生まれて面白いものが正義という土壌で育ったこともあったので、すぐにテレビでお笑いを見るのが好きになりました。関西ではおもろいやつがモテるんですよ。僕も文化祭でネタみたいなことをして、ちやほやされたこともありました。お笑いに触れてみていいなと感じた経験もあったし、お笑いをやることで承認欲求を満たしてくれる快感も覚えました。
──テレビに出るために川西さんが選んだのが漫才という“武器”でした。最初からうまくできる感覚はありましたか?
こんなにうまいこといかへんかと思いました。こうすればうまくいくと、具体的に課題が見えてきて、それが実際にできるかできないかで苦労することってあるじゃないですか。その手前の問題で。「なんで面白くないんやろ」、「ウケへんのやろ」みたいなお笑いが何もわかっていない状況だったんでしょうね。入ってみてうまくいかないを経験してからが本当のスタートだと感じました。
──それが何をきっかけにどう好転していったのでしょうか?
場数もそうですけど、準備と実践ですよね。単純に舞台に立つのはもちろんですけど、映像を見るとかもそうですし、なんでウケているのか、なんで今面白いと感じたんだろうとか考える時間も準備のひとつです。準備の伴った実践のほうがもちろん意味があるし、そのどちらもが必要であり、それに関わる作業はすべて必要。そう考えると結果が出てきました。
──「準備と実践」のような考え方にたどり着くのも簡単ではないと思うのですが、何かきっかけがあったのでしょうか?
2014年の春にそれまで所属していた劇場を卒業になると宣告されていたんですよ。「やばい」と焦りましたね。賞レースで決勝に残ったりはしていましたけど、優勝しないとNGKの出番をもらうのは難しかったですから。ネタをする場所がないとネタが良くなるわけがないので、このまま放り出されたらどうなってしまうんやろという思いがありました。そこから1年くらい、とにかくネタを作って試して結果を出すことに集中していたら露骨に良くなっていきましたね。それが糧になって、土台ができたんちゃうかな。
──話を伺っていても思考が深いというか、しっかり成功への道が見えている印象を受けます。昔からよく考えるタイプでしたか?
どちらかと言えば、考えることは元々備わっていた性質なんじゃないかな。後天的になるやつおんのかな(笑)。でも、芸人になってキャリアを重ねていって如実に濃くなっていく感覚は確かにあるけどね。
──なるほど、元々なんですね。子供の頃からそうした意識はあったのでしょうか?
考えるというか、対話を大事にしていたと思います。小さいときにお年玉ってもらうけど、なんか知らんうちに消えていくじゃないですか。親が子供の将来のためにって回収しているから。わざわざ子供に詳しくは言わないけど、僕はなんか消えているって思っていたんです。だから、あるときのお正月に親戚からもらったとき、僕は「どうせこれお母さん取るもん」って言ったんです。
親戚は笑っていたんですけど、親戚がいなくなった瞬間にお母さんに「なんであんなこと言うの!」ってめちゃくちゃ怒られて。説明されて僕のために残しているっていうのがわかったんですけど、僕としては「聞いていないからわからんやん。言うといてくれや」と。そういう意味では、コミュニケーションや対話は昔から意識していたのかもしれないです。
──改めて漫才の話になりますが、書籍の中で漫才で笑わせるためにテレビでは余計な色をつけないように振る舞っているというお話がありました。
そこはめちゃくちゃ意識していたと思います。他人と比べると意識しすぎやろってなるくらいかなと。
──だからこそ、川西さんが漫才コントの中で演じる女役はいつもすんなりと入ってきて、情景が浮かびました。
漫才で演じる女性についてはよく言われるんですけど、演じたまま役を抜けずにツッコミをするのが珍しいと。でもそれは気づいたら勝手にそうやっていただけで。気質の問題で、自分はあるテーマから話を広げるために、想像してその役に入って掛け合いを"ちょっとやってみる"ような性質はあったんですよね。だから、漫才でもその“ちょいやり”を続けていったら、“全やり”になっていたみたいな。
理論的には、役を抜かないで漫才を続けることで役の中で感情が蓄積していく、うっぷんがどんどん膨らんで最後爆発できるという強みはありますよね。抜けちゃうとスッキリしてしまうからね。だから一貫して役のまま漫才をやることになったのもありますが、それが見やすく思ってもらえたのは余計な色がなかったからなのかもしれません。
──努力が実を結び、2015年に「M-1グランプリ」が復活して、そこから5年連続で決勝へ進出しています。改めて、M-1グランプリとはどのように向き合っていましたか?
まず大きく漫才というものの中にM-1や賞レースでの漫才が一つとしてある、という考え方で。でも、勝負においてはどうしても勝ちたいし、勝つために出るわけだから、どうやったら勝てるかということをすごく考えていました。本当は勝敗をつけることと、お笑いというものは矛盾していると思うし、できれば広義的な意味の、大衆演芸としての漫才に取り組みながら、この4分ならM-1グランプリでも勝てるんじゃないかというものを持っていくのが本当は良い付き合い方だと思います。
ただそれだけじゃ勝ちきれない。難しいバランスですよね。勝ちにいきすぎると本来の漫才から遠ざかる気がするし、でも出るからには勝たなければいけないし。どっちに転んでも矛盾が生じる。それがいいバランスでできた年もあって、勝つことはできなかったけど、漫才師として良いものを残せたとは思いますね。
──2018年に披露した「ゾンビ」と「オレオレ詐欺」は最高傑作のひとつとの呼び声も高いですよね。
バランスが整ったのが2018年でした。まず面白いものをやる、その上で使えそうなものを勝負に持って行く、結果笑いになる。あとはやっぱり、競技だとどうしても結果を念頭に置いちゃうから、そこにフィットさせようとしてしまったのはあったと思いますね。
──漫才を突き詰め続けた川西さんから見て、2024年の『M-1グランプリ』で何か真新しい漫才はありましたか?
新しいものはないんじゃないですかね。建築家のガウディが自然の中にあるものから着想をえて、それを建築に活かしていると言ってて、これって自分が作ったデザインや建築法は、すでに自然の中に存在したものだという考え方ですよね。例えばお笑いでいうと、あるあるネタはすでに存在していることの中からみんなが共感できることを探す作業で、新しく生み出したわけではない。笑いにしたという部分でいうと新しいのかもしれないけど、それも落語とか映画や小説の中に、昔からすでに存在した"あるある"と被っていることはあると思いますし。
ただ、漫才の精度は上がっていると思う。4分間でどうやって大きい笑いに持って行くかという組み立て方の部分ですね。無駄なものを切って最短ルートを通るのか、逆にここはすぐには処理をせずに溜めて後で大きな笑いに持っていくのかとか、そこの精度はすごく上がっていると思います。
──川西さんが昨年M-1グランプリを見ていて、率直に感じたことがあれば教えて下さい。
ここと、ここが上位に行くやろなと思ったら、順番通りに行きましたし、視聴者目線でいってもそうだったんじゃないかな。これは昨年のM-1とかではなく、漫才の大会というものに対して思ったことになるけど、ある程度笑いを理解している人が審査員をやったら、誰がやっても同じ結果になるもんなんじゃないかと思いました。
本来、審査員は自分の裁量で審査していいはずだけど、漫才は大衆のものであって、笑い声って無視できない。無観客でどれが一番面白かったですかだと結果は変わってくると思うけど、それは大衆に見せていないから漫才じゃない。大衆をどれだけ喜ばせるかというのが漫才師のやるべきことだから、客前でやる必要があるし、そうなると客の反応も加味しないといけない。好みはそれぞれあるにせよ、漫才というものが持つ性質や定義を考えていくと、理解ある審査員を並べれば並べるほど、誰がやってもそんなに順位に違いは生まれないのかなと思いましたね。
▽『はじまりと おわりと はじまりと ―まだ見ぬままになった弟子へ―』 川西賢志郎 KADOKAWA(2025年2月15日発売)
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