便利であることは、自由であることではない。神尾楓珠と桜田ひよりが見つけた「不便の美学」

便利であることは、自由であることではない。神尾楓珠と桜田ひよりが見つけた「不便の美学」

2025.02.05 11:10

取材・文:ミクニシオリ

撮影:渡会春加

編集:杉田穂南/マイナビウーマン編集部

SNSにマッチングアプリ。数十年前と比べて、出会いの形は一気にユビキタス化し、どこにいても環境の遠い誰かと話したり、知り合ったりすることが容易になりました。その一方で、若者の「恋愛離れ」は社会問題化しつつあります。

「便利な世の中にも、不自由さはあるよね」

そう語ってくれたのは、映画『大きな玉ねぎの下で』でW主演を務めた神尾楓珠さん、そして桜田ひよりさん。令和時代を生きる現役学生と、平成初期を生きた親世代の青春時代を行き来しながら進むストーリーを演じる中で、彼らが感じたのは「不自由だった時代の自由さ」でした。

■不便さこそ、運命の恋を演出してくれる

『大きな玉ねぎの下で』は、1980年後期〜90年代に一斉を風靡したロックバンド・爆風スランプが、1989年にリリースした曲でもあります。まだ会ったことがない、ペンフレンドの2人の恋模様を描いた曲にインスピレーションを受けて、お互いに「顔を知らない」2人が出会い、恋に落ちていく様子を描くヒューマンラブストーリーとして、映画『大きな玉ねぎの下で』が誕生しました。

神尾さんが演じた丈流(たける)は、就職活動に苦戦中のちょっぴり意地っ張りな大学生。一方、桜田さんが演じた美優(みゆう)は、現実的で真面目ながらも、恋には不器用な看護学生。同じバイト先ではありながら、昼のシフトと夜のシフトで、顔を合わせることはなく、職場のノートを通してお互いに惹かれ合っていきます。

1999年生まれの神尾さん、2002年生まれの桜田さんはまさにインターネットネイティブ世代。昭和や平成中期までの文化にあまり触れることがなかった2人は、作品を通してどんなことを感じたのでしょうか。

神尾 『大きな玉ねぎの下で』は、僕たちが演じた大学生たちが過ごす令和と、文通やペンフレンドが流行った平成初期を行き来しながらストーリーが進んでいきます。僕は正直、平成にうらやましさを感じましたね。今はスマホを使えば、誰とでも簡単につながれるけど、関係の希薄さを感じることもあります。あの頃は不便で、ある意味不自由な時代だったからこそ、運命の恋も生まれやすかったんでしょうね。

桜田 ペンフレンドなんていたことがないけど、スマホで文字を打つのとは違う、手書き文字の暖かさを感じました。文字だけを通して自分の想いを伝えたり、相手がどんな人なのか想像したりするのって、エモいものなんですね。

神尾 人に借りたバイクで走り出すとか、今だったらあり得ないですよね。晒されるかもしれないし(笑)。そんなことをしなくてもスマホで連絡を取り合えるのは便利だけど、がむしゃらに行動できちゃう時代性に、憧れがありますね。

桜田 平成初期の学園パートを見て、あの頃ならではののびのびとした青春時代に憧れました。平成は今の時代にはない良さに満ちあふれていたんだなって、改めて考えさせられました。

2人との対話を通して「あの頃と今の違い」に向き合ってみると、やはりスマホ、ネットの普及が私たちの人間関係に大きな影響を及ぼしていることが分かります。物心ついた時からネットでのコミュニケーションが身近だった神尾さんと桜田さんですが、窮屈さを感じることもあるといいます。

神尾 ネットは本当に便利だけど、特有の息苦しさみたいなものも感じます。いつでも誰かに見られている感じがするし、こうやって会話する時より、さらに言葉を選んでしまう自分もいます。

桜田 楓珠くんはインスタも全然更新しないもんね。

神尾 実は、SNSがちょっと苦手なんだよね。応援してくれる人に直接気持ちを伝えられるのはすごいことだと思う。だけどどんなことで人を傷つけちゃうか分からないから、正直怖い気持ちもあります。

桜田 私はSNSをよく使いますが、楓珠くんの気持ちも分かります。フォロワーさん全員を把握できるわけじゃないし、一人ひとりに配慮するのって、すごく難しいですよね。

神尾 だからこそ、ノートから始まるアナログな出会いに良さを感じちゃいましたね。仲良くなるのに時間はかかるけど、通じ合った時のうれしさは大きいと思います。

■気持ちを素直に伝えられないもどかしさも、恋の醍醐味

ペンフレンドのような、なかなか進まない恋。平成を生きたアラサー世代でも、もう懐かしさを感じる人が多いのではないでしょうか。誰もがスマホを持ち、いつでもチャットできる現代には感じることのないもどかしさがあります。

だけど、スマホがなかったからこそ、会える瞬間を何より大切に思えたのかもしれません。大切な想いはいつでも伝えられるわけではないからこそ、一言の重みと愛が、今よりずっと重く感じられたのでしょう。

しかし丈流と美優は、将来を見据える若者としても対立構造が描かれています。就活がなかなかうまくいかず、社会に対して反発を抱えている丈流と、目標のために看護学校に進学し、すでに実習を始めている美優。選んできた道の違いもあって、2人の恋路は難航します。

神尾 僕は、丈流の気持ちにも共感する部分がありました。僕も学生時代、進路に悩んで将来に希望を持てない時期があったんです。本当は優しいところがある人も、環境次第で周囲に反発しちゃう気持ちは分かります。

桜田 でも個人的には、丈流みたいな男子は嫌だなーって思う(笑)。ちょっと面倒くさくないですか?

神尾 本当は好きなのに、照れ隠ししちゃうことってあるじゃないですか。そういう人が心を開いて素直に話してくれた時こそ、キュンとするものじゃない?

桜田 たしかに、みんなに優しい人より自分にだけ優しい人の方がキュンとしますよね。でも、そこを引き出すまでに時間と労力がかかりそうだと、心が折れちゃう。友達になれずに終わることも多いんじゃない?

神尾 家族と一緒にいる時の表情を見ていれば、丈流が優しい子なのが伝わると信じています……!

共演経験がある2人のやり取りは自然で、見ているこちらも癒やされてしまいます。もどかしい恋について話す2人を見ていると、苦くも楽しい恋をしていたあの頃、青春の1ページを思い出してしまいそう。

私たちが生きる現代はとても便利で、待ち合わせに失敗することもなければ、伝えたい物事をシームレスに人々に届けることができます。それでも、マッチングアプリで初めて会う人にデートをドタキャンされることもあるし、ネットで見かける知らない誰かの一言に一喜一憂することも……伝えること、届けることが簡単だからこそ、傷つく瞬間もあります。

海外の若い世代の中には、インターネットから距離を置くために、あえて電話機能しかないケータイを持つ人々もいると言います。不便だからこそ奇跡が生まれ、運命の恋が始まることもある――作品に向き合った神尾さんと桜田さんが教えてくれたのは、そんな「不便の美学」でした。

作品は2025年2月7日から、全国の映画館で公開予定です。デジタルで溢れる今だからこそ、本作を通して改めて手書きの温もりに包まれてみてはいかがでしょうか。

『大きな玉ねぎの下で』

丈流と美優は、夜はバー、昼はカフェになる「Double」でそれぞれ働いている。2人をつなぐのは、連絡用のバイトノートだけ。最初は業務連絡だけだったが、次第に趣味や悩みもつづるようになった。お互い素性を知らないまま、2人は大きな玉ねぎの下で(武道館)初めて会う約束をするが――。

一方、あるラジオ番組では30年前の文通相手(ペンフレンド)との恋が語られていた。顔は知らないけど好きな人と武道館で初めて会う約束をして……

2組は大きな玉ねぎの下で出会うことができるのか? 令和と平成2つの恋が交錯し、やがて1つの奇跡が待ち受ける――。

2025年2月7日(金)全国ロードショー

©2024映画「大きな玉ねぎの下で」製作委員会

神尾楓珠

ヘアメイク:井下成美 、スタイリスト:大内美里

桜田ひより

ヘアメイク:池上豪 、スタイリスト:前田涼子

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