愛と居場所を求めてファッションモデルを目指す少女の物語

母から暴力を受け、闇を生きる少女…モデルの道を目指し、光へ向かうストーリーに「心にナイフ突き刺してくる漫画」の声【作者インタビュー】

2025.02.03 09:00
愛と居場所を求めてファッションモデルを目指す少女の物語

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、電撃マオウとカドコミにて連載中で1月27日には第1巻が発売されるDormicumさんの『カムパネルラの塔』をピックアップ。

2024年11月23日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、5.4万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、Dormicumさんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。

母から愛を向けられなかった少女、自分の居場所を求めて輝かしいモデルの世界へ

女子高生のミサキはモデルの世界に憧れていた。心を患っている母から暴力や暴言を浴びせられる日々にいっぱいいっぱいだったミサキにとって、ファッションに没入することが唯一、正気を保つための“光”になっていた。好きなファッションに身を包むと理想の自分に生まれ変わり、自信が生まれた。そして、心の奥底では、変身した新しい自分として生き、今の“ミサキ”から解放されたいという思いが強まっていることを感じるのだった。

そんなある日、ミサキに大きな転機が訪れる。母がミサキの大切な服を捨て、モデルになるという夢を否定したことで、強く反抗し、母親からの愛情を諦めてモデルの道を目指すため、家を出ることを決意したのだ。

そして、血の滲むような努力を経てやっと手に入れた“ファッションモデル”という自分の居場所。彼女は夢の舞台で輝き続けることはできるのか――。投稿には、「雰囲気好きすぎる…!」「心にナイフ突き刺してくる漫画」などストーリーに引き込まれる読者からのコメントが寄せられた。

作者・Dormicumさん「読者に『この作品最低だけど最高!』と言わせられるような作品に仕上げれば」

――『カムパネルラの塔』を創作したきっかけや理由などをお教えください。

正直申し上げますと前作の『少女戎機』(マリアチルドレン)が実力不足で売れ行きがよくなかったことがきっかけです(笑)。オリジナリティが出せなかったからなのか、時代に合ってなかったのか、単に才能がなかったのか、新しい企画に変えた方がいいのかなど何度も何度も悩み心を壊してしまいました。入院して療養もしたのですが寛解せず、退院後も暗い部屋で真っ白なキャンバスを前にして地蔵になっているだけの日々でした。

そんな時、私を心配したオタクの妹がコスプレイベントに誘ってくれたのが大きな転機です。引きこもりで髪も眉毛もぼさぼさな汚い私を綺麗に整え私の好きなキャラクターに大変身させてくれたのです。その変身っぷりはまるでシンデレラのようで、完全にそのキャラクターになりきった時、今まで感じたことのないような多幸感に満たされました。おそらく自分という不完全な存在から解放された気分になったのでしょう。それがきっかけでコスプレやファッションに興味を持ちました。それからメイクしたり普段着ない派手な服着たりして一人ファッションショーを行い満たされることで無事、心も元気になっていきました。

このことがきっかけで“洋服”を題材にした作品にしようと決めました。ただ人は強いストレスを抱えると変身願望が沸くらしいので今思うと心をあの行動は守る生理的な防衛反応だったんだな、と感じています。急に髪を染めたり派手になったり自分の体を傷つけたり等々もその一つで、もしかしたら皆さんもアルスや私同様に経験したことがある事かもしれません。

――本作は家庭内での“闇”の部分とモデルとしてステージに立つ“光”の部分のコントラストが大変印象的でした。作品を創作する中で、特に心がけているところ、大切にしていることなどをお教えください。

光と闇のコントラストは一番心掛けています。前作の経験も活かして近年で過去の暗い題材をテーマにし、かつヒットした作品を研究した結果、明るい作風×暗めな展開の融合作品が注目されている事に気付き、私の作品にも明るいラベリングの必要性を感じました。

最初は万人受けを狙い、夢を目指して熱狂的になれる主人公が登場する“ガラスの仮面”、“帝一の國”のような作品を書こうとしたのですが、私は人の生死を題材にした作品が一番かきたいものだったのでこの光と闇をどうにか融合できないか試みてできたのが『カムパネルラの塔』です。私は“白い巨塔”が大好きなのですが、この作品こそ光と闇のメリハリがいい塩梅になるように作られていて参考にしています。しかしながら、私という存在が闇に全部ステータスを振り切ってしまった猛毒な人間であるため光の部分を描くのが本当に難しくて訓練中です。経験を重ねて最後には読者に「この作品最低だけど最高!」と言わせられるような作品に仕上げればいいなと思います。

――投稿には、キャラクターの表情や作画に対するコメントを寄せる読者も多くいました。中には「感情が乗ってる感じがする」という感想もあります。人物の表情を描くにあたり、特に意識していることやこだわっていることはありますか?

私はキャラクター表情の描き分けに関しては苦手なのですが、自分が経験したことある感情を表現するのが好きでおそらく創作が続けているのも行き場のない感情を昇華したいからだと思います。なので、キャラクターを描くときはそのキャラクターになりきってみて描いています。そのせいか感情的なシーンを描くときはこれまで感じた喜び怒り悲しみが走馬灯のように再生され嫌な記憶がフラッシュバックしてしまうので定期的に頭が壊れてしまいます。だから時々変なツイートを連投してしまったり毎回原稿がギリギリだったりするので皆様、編集者様これからもご迷惑おかけします(笑)。しかし、その感情が読者に伝播したときようやく読者とコミュニケーションがとれたんだなと感じとても嬉しくなります。この瞬間が人生で一番幸福かもしれません。

――今回ご投稿されたお話の中で特にお気に入りのシーンやセリフを理由と一緒にお教えください。

お気に入りのシーンはやっぱアルスが母親に反抗するシーンですね。私は病を抱えた親を支えるヤングケアラーといわれる子供たちに関心がありアルスもその一人だったのかなと思います。アルスの場合は親の暴力に耐えかね夢を選び旅たち立ちましたが、家族仲が良好なパターンもありそして多くの子供たちが色んな感情を抱え大切な家族のために支えています。アルスも母親との関係が良かったら幸せだったのかな?など考えさせられるためこのシーンが好きです。

お気に入りのセリフは『これからはもっとたくさんの人から愛してもらうの』というセリフです。アルスは親の愛で心を満たしたくて、でも叶わないから沢山の人に愛されることを選びました。お恥ずかしながら私にもこの気持ちがあります。沢山の人に作品を愛され読まれる事に幸せを感じるからです。せめて漫画だけでもうまく行けばいいんですけど。私は不器用な人間なためなかなか仕事も私生活も両方うまく行きません(笑)毎日小さなかわいいペットのハムスターや熱帯魚たちに慰められながら過ごしてます。でも、こういう小さな幸せを積み重ねてく人生でも十分幸せなのかな、と思うようになりました。

――今後の展望・目標をお教えください。

目標は2つあります。一つ目は作品のメディア化が目標です。二つ目は読者と作品を通してコミュニケーションをとることです。

私は同業者の知人もいないしリアルの友達もいません。頑張ってネット友達を作ろうとゲームVCをやってみましたが緊張のあまり話が滑りまくって楽しめずそのために作ったディスコードはたったの三日しか使わずに終わりました。結局ペットのハムスターしか友達がいないし、もう作る勇気もないのでせめて、せめて少しでも作品を通して皆様と繋がりたいです。

――最後に、読者やファンの方へメッセージをお願いします。

皆さんのおかげで私は生かされています。ありがとうございます。なので皆さんに少しでも作品を読んで笑ってほしくて、読んでよかったと思わせたくて必死になってるところです。見守ってくださると幸いです。ここまで読んでくださりありがとうございます。

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