

被爆者の高齢化と「はだしのゲン」に吹く逆風――それでも日本へ、世界へ原爆体験を語り継いでいく人々がいる<「はだしのゲン」の熱伝導 ~原爆漫画を伝える人々~>

「『はだしのゲン』の熱伝導 ~原爆漫画を伝える人々~」が、12月10日(火)の夜6時より、BS12 トゥエルビ(BS222ch、全国無料放送)の「BS12スペシャル」にて放送される。「はだしのゲン」のエピソードを交えながら、原爆の真実を知る被爆者と、「はだしのゲン」を通じて原爆と戦争の恐ろしさを伝える人たちの想いにスポットを当てたドキュメンタリー番組だ。本番組で語られる“熱”と、日本人が共有すべきメッセージを番組のあらましと共に綴っていきたい。
2人の被爆者が語る壮絶な原爆体験
今年10月、日本原水爆被害者団体協議会(以下、日本被団協)が日本で50年ぶりにノーベル平和賞を受賞したことは記憶に新しい。第二次世界大戦の原爆投下から11年後に結成された日本被団協は、核兵器廃絶や被爆者のサポートを国に訴え、核兵器禁止条約の交渉においては約300万人分の署名を集めて採択への道筋を拓いた。一方で、被爆者の高齢化は著しく、悲惨な記憶を語り継ぐことは年々難しくなっている現状がある。
そうした被爆者に代わり、被爆体験を後世へ伝える役割を担っている1つが、中沢啓治さんによる漫画「はだしのゲン」だ。同作は中沢さん自身の体験を基に描かれた作品で、現在25ヵ国で翻訳出版されている。
主人公ゲンは、戦争反対を訴える父により家族ぐるみで非国民のののしりを受けるが、明るくたくましく生きる少年。しかし、原爆によって父と姉弟を失い、地獄絵図と化した広島で母と共に過酷な日々を送ることになる。
「はだしのゲン」には、全身が焼けただれた人々や累々と積み重なる死体といったショッキングな場面が頻出する。本番組に出演する2人の被爆者は、この漫画が自分の体験に重なると言い、自らの壮絶な原爆体験を語り始める。
巨大なキノコ雲、遺体を焼くときの強烈な臭い、被爆による火傷の後遺症。被爆者による証言に、それらと重なる漫画のエピソードが織り交ぜられ、平和に慣れきった私たちの胸に生々しく迫ってくる。
「はだしのゲン」を世界へ広げる語り部たち
番組では、「はだしのゲン」に衝撃を受け、原爆体験を語り継ぐ活動を始めた人々が紹介される。講談師の神田香織さんは、サイパン旅行の際に多くの日本人が集団自決した悲惨な歴史を知り、戦争を伝えていこうと決めたのだという。38年間に渡って「はだしのゲン」を語り続けているという神田さんの講談は情感たっぷりで、ゲンが目にした光景が脳裏に浮かぶようだ。
生前の中沢啓治さんから原爆体験を聞いた渡部久仁子さんは、広島の街を案内しながら、その体験を人々に伝えている。40代の渡部さんにとって、原爆を考えたり語ったりするとき、「はだしのゲン」がイメージソースになっているのだという。筆者は小学校の学級文庫で初めて「はだしのゲン」に触れた経験があり、渡部さんの話には大いに共感させられた。
番組では、46年前に制作された「はだしのゲン」英語版にまつわるエピソードも実に興味深く語られている。書籍編集者の大嶋賢洋さんは、アメリカで平和運動に参加した際に、現地のほとんどの若者が広島・長崎の原爆を知らないことに驚き、仲間を集めて英語版の制作を始めたのだという。
大嶋さんと共に番組に出演するアラン・グリースンさんはアメリカ人。日米の2人が語らう姿から、「はだしのゲン」が持つ力と平和を願う心は、国境を超えるのだと再認識させられる。
世界へ“熱”を広げるため、私たちに今できること
本番組を視聴するにあたって「はだしのゲン」を読み返してみたが、原爆の恐ろしさのみならず、戦争がもたらす狂気と分断、家族愛、生き残った人々の苦難などが生々しく描かれていることに驚いた。
しかし近年、ゲンが生きるために行う窃盗行為などが教育現場にふさわしくないとの理由から、同書が小中学校の図書館から撤去されたり、広島市の平和教材から姿を消したりしている。生々しい描写があることで、アニメ版も放送されにくくなっている。その一方で、アメリカで中沢啓治さんの功績が認められ、手塚治虫や宮崎駿に続いて漫画のアカデミー賞といわれるアイズナー賞の殿堂入りを果たすという明るいニュースもあった。
「はだしのゲン」の“熱”は、国境を越え、人種を越えて広がり続けている。被爆体験を世界に広げ、平和への願いを育てていく種となっているのだ。1人でも多くの人がこの漫画を読み、平和の尊さを心に刻むこと。そして、次代へと受け継いでいくこと。世界から戦争がなくなり、核兵器が消える日まで、「はだしのゲン」という種をまき続けることが、今、必要なのではないか。本番組を見て、若年世代にも語り部たちの想いを受け止めてほしい。
◆文=帆刈理恵(スタジオエクレア)
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