ポン・ジュノ監督の映画をドラマ化…“階級闘争”を描くノンストップSFアクション「スノーピアサー」シーズン1を振り返り
映画「パラサイト 半地下の家族」を手掛けたポン・ジュノ監督が製作総指揮を務めるノンストップSFアクションドラマ「スノーピアサー」。動画配信サービス・Huluでは本作のシーズン1~3に加え、シリーズファイナルとなるシーズン4(全10話)も11月1日より全話独占配信中。そこで本記事では、ハラハラドキドキな展開が待ち受けるシーズン1のストーリーや見どころを振り返っていく(一部、ネタバレを含みます)。
アカデミー賞助演女優賞のジェニファー・コネリーらが出演、ドラマ「スノーピアサー」とは
ポン・ジュノ監督が2013年に製作した同名映画のヒットを受け、新たなキャストとストーリーでドラマ化された本作。アメリカ合衆国のテレビドラマシリーズとして、2020年から2022年3月にかけてシーズン1~3が、2024年7月にファイナルシーズンとなるシーズン4が放送された。
生存をかけた階級闘争や社会的不公平、政治的駆け引きが迫力満点に繰り広げられる本作は、地球が凍りついてから7年後の荒廃した世界が舞台。わずかに生き残った人類が、永久に地球を回り続ける1001車両の列車“スノーピアサー”の中で苦闘する様子が描かれる。
キャストには、映画「ビューティフル・マインド」で第74回アカデミー賞助演女優賞に輝いたジェニファー・コネリーを始め、実写映画「リトル・マーメイド」でセバスチャンの声を演じたダヴィード・ディグスや、映画「フランシス・ハ」に出演するミッキー・サムナーなど豪華な顔ぶれが集結している。
階級制度が敷かれた列車“スノーピアサー”でさまざまな出来事が巻き起こる…シーズン1あらすじ
戦争によって温暖化が加速した世界では、氷が溶けて生物が絶滅の危機に瀕した。そこで地球を冷却するために化学薬品が散布された結果、地球に氷河期が到来。そんな未来を予測した富豪・ウィルフォード(ショーン・ビーン)は同じ富裕層を救うため1001両編成の列車“スノーピアサー”を開発。温暖化の事実を隠し戦争を起こす元凶となった富裕層は率先してスノーピアサーに逃げ込むが、貧困層も必死にスノーピアサーにしがみつき――。
スノーピアサーでは、チケットを持っている富裕層の乗る車両前方ではきめ細やかな接客が施され、十分な食事が与えられる。また、病院や学校などの生活に必要な機関も充実していた。一方、チケットがなく無理矢理乗り込んだ人たちは、最も低い階級である最後尾車両“テイル”で生活を送っており、最後尾人“テイリー”として、少ない配給の中で苦しい生活を強いられる状態だった。
そんなある時、“テイリー”の中心的存在であるレイトン(ダヴィード・ディグス)が列車の体制側に呼び出される。どうやら3等車両で猟奇的な殺人事件が起きたようで、元殺人課の刑事だったレイトンは接客係長のメラニー(ジェニファー・コネリー)により捜査責任者に任命される。
そんな中、“テイル”で暮らす最年長の男性・イヴァンが自ら命を絶ってしまった。レイトン不在で無秩序となったテイリーらは富裕層に対する暴動を起こし、前方車両に乗り込む。しかしこの反乱は失敗に終わり、“テイリー”の1人が“片腕を凍らせ切断される”という処罰を与えられ――。
列車内での階級制度による格差社会を主軸に、物語が展開していく本作。シーズン1では、列車で起きた殺人事件の真相に迫る様子も同時に描かれている。
ポン・ジュノ監督ならではのリアルな“階級闘争”が見どころ
本作におけるメインテーマは“階級闘争”。映画「パラサイト 半地下の家族」では“家”、本作では“列車”という分かりやすい物理的な構造を舞台に、ポン・ジュノ監督は人間社会の縮図を描いているのだ。
先頭車両では接客係が付き、デザートまで用意された豪華な食事や学校まで完備されているという贅沢ぶり。しかし“テイリー”に配られる食事はプロテインバーのみで、日々労働力を搾取される“テイリー”の中には自殺者も出てしまう始末…。第1話でレイトンが呼び出され3号車に行き、久しぶりに光を浴び、パンとスープを与えられ、噛みしめるように食事をおかわりをねだるシーンからは、“テイリー”が普段どれほどひどい扱いを受けているのかが伝わってくる。
また、イヴァンが自殺した直後に画面が切り替わり、列車内の生けすで食料を調達し酒と豪華な食事を楽しむメラニーらが映し出されるなど、本シーズンでは格差を描く演出が数多く散りばめられている。「パラサイト 半地下の家族」のときも半地下の家族と豪邸で暮らす家族の生活ぶりが対照的に描かれていたが、本作でもポン・ジュノ監督は“社会にはびこる格差問題”に真正面から切り込んでいるように感じる。
そして、謎多き接客係長・メラニーも、レイトンに加えて本作のキーパーソンだ。彼女は乗客によって引き起こされるトラブルに対応したり、列車を統制するウィルフォードと唯一コミュニケーションを取れる存在。いわば“中間管理職”のようなメラニーだが、実は彼女は大きな秘密を抱えており、物語後半ではこの秘密を巡って一波乱が起こる…。
また、スノーピアサーに関する“ある秘密”を知ってしまったレイトンは、車内の刑務所に収監されてしまうのだが、周囲の協力により決死の脱出劇を試みる。この手に汗握るスピーディーな展開は、シーズン1における見どころの一つと言えるだろう。
“列車内で起こる階級闘争”は映画版と同様の設定ながらも、全く新しい物語に仕上がっているドラマ「スノーピアサー」。最後まで何が起きるか分からず、濃密なエンターテインメント作品となっている。
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