<ドラマフェス>を企画したNHKコンテンツ制作局ドラマ展開プロデューサーの郷原陽介氏

テレビ業界全体を盛り上げる「制作陣には視聴者の声を、視聴者には新しいドラマ体験を届けたい」<ドラマフェス>企画担当者、NHK郷原陽介氏インタビュー

2024.11.01 12:00
<ドラマフェス>を企画したNHKコンテンツ制作局ドラマ展開プロデューサーの郷原陽介氏

NHKが2024年秋から放送中の4つのドラマ作品(土曜ドラマ「3000万」、夜ドラ「未来の私にブッかまされる!?」、ドラマ10「宙わたる教室」、連続テレビ小説「おむすび」)の魅力を新たな切り口で楽しむPRイベント「NHKドラマフェスティバル2024秋 in 東京/in 福岡」を11月2日(土)からスタートする。様々な体験ができる本PRイベントを企画したNHKコンテンツ制作局ドラマ展開プロデューサーの郷原陽介氏に、NHKのドラマにおけるチャレンジや可能性、さらには「ドラマフェスティバル」のこれからや企画に込めた思いについて語ってもらった。

「放送するだけでは埋もれる」知ってもらうための新たな切り口探し

――郷原さんはドラマ展開プロデューサーという肩書きがついていますが、どのような役割をされていますか?

連続テレビ小説と大河ドラマ以外のドラマを展開して、多くの人に知ってもらうという立ち位置です。実はNHKのドラマの数って結構多いんです。それぞれの作品毎に、少しでも良い作品をと制作していることを知ってもらうためには、一つのドラマに肩入れするのではなくより多くのドラマをPRするための戦略として、複数のドラマのそれぞれの良さをどう伝えていけばいいかを考えています。

そういう考えがきっかけで、今のクールに放送している土曜ドラマ「3000万」、夜ドラ「未来の私にブッかまされる!?」、ドラマ10「宙わたる教室」の良さをまとめて感じてもらいたいと思って「NHKドラマフェスティバル」を企画しました。ちょうど放送が始まったタイミングでもあったので連続テレビ小説「おむすび」も一緒に企画を用意しています。同時期放送のドラマを集めることにより、それぞれのファンの方が自然と他の作品に触れる、その輪が広がり結果として応援団になっていただけるのではと考えました。

今は、テレビ以外にも国内、海外問わず配信コンテンツもあふれている時代です。魅力的な作品を制作しても「放送しているのを知らない」とならないために、アナログな要素をあえてPRイベントとしてやることに意味があるんじゃないかと思っています。

意外なNHKの自由度の高さ 業界全体を盛り上げるきっかけにも

――ドラマの数が多いということですが、連続テレビ小説、大河ドラマの他に、土曜ドラマや夜ドラ、ドラマ10など、ドラマ枠が多いですし、内容的にも結構チャレンジングな作品もあったりする印象です。

そうですね。今のクールだと「3000万」はかなりチャレンジングな企画だと思います。2、3年前から脚本家の方を募集して、応募数は2000を超えていました。世の中には本を書きたいけど出しどころがないという方がたくさんいると思うんです。そこで、原石の方を募集して、その中から4人で脚本を書くという形で進めていきました。複数の脚本家で進めるというのはアメリカのドラマでよくあるスタイルと知り、とても興味を惹かれました。

――ドラマも個性的で思っている以上に攻めた内容、かなり自由な発想で作られている印象を受けました。

はい。目が離せないリアリティを追求されている感じがしますよね。それも4人の脚本家が各話別々に書きつつ、お互いに意見を出し合って制作しているということのメリット、特徴なのかなと思います。

もしかしたら、(NHKというと)制限が多くて自由に作れていないんじゃないかと感じている方もいると思うんですが、実は自由度はかなり高いんです。ルールに則っていれば基本的にはなんでもできる。私はドラマに来てから1年ちょっとくらいですが、徹底した戦略と情熱、そしてコスト意識をもってやれば意外なほどの自由度の高さに(NHKのみならずドラマやテレビ業界も盛り上げる)可能性を感じている部分でもあります。

「視聴者のリアルな反応を制作現場に還元していく」制作陣と視聴者を繋ぐPRイベントに込めた思い

――「ドラマフェスティバル」も恒例にすることを狙っているんでしょうか。

そうですね。2024年1月に放送されたドラマ「正直不動産2」の放送に先立ち、2023年12月から2024年3月に行ったのがドラマ関連の最初のPRイベントだったんですが、この時は「正直不動産2」の1作品だけで行いました。そのPRイベントの中で様々な“体験会”を行いまして、反響も良かったことが夏と秋の2回の開催に繋がりました。

「正直不動産2」のPRイベントは当初3か所での開催予定でしたが、好評だったことで「うちの県(局)でもやってほしい」という形で、全国の視聴者とNHK各局からの要望もありまして、最終的には9か所で行いました。これも私にとって貴重な経験でしたし、来場してくださった視聴者からの反応を制作現場にも還していくことが私の役割なんじゃないかなと思いました。

来場者の方が「NHKのドラマの人と話せた」とか「いろんな話が聞けた」ということをSNSに書き込んでくださいましたし、今の時代だからこそこういうアナログ的なPRイベントだったり、直接会って話をしたりするコミュニケーションが距離感を縮めるというか、親近感を持ってもらうために大事だということを改めて感じました。

――季節ごとに開催するということも可能だと思いますが、将来的に「ドラマフェスティバル」をどんなふうに発展させていきたいですか?

開催するタイミングは悩みどころですね。本当は新ドラマが始まる直前に開催したいと思っているんですけど、それだと続編じゃない限り、全く知らないドラマばかりになる可能性があるので足を運んでもらうのが難しいんじゃないかと思ったりもするんです。今回のようにドラマが始まって、数回放送された後であれば、そのドラマを見た人が来てくれますし、こちらとしても安心感があるんですが(笑)。どのタイミングがいいかなというのは色々な選択肢を検討していきたいですね。

また、これは夢というか、個人的な大きな目標ではあるんですが、民放各局と一緒に開催できる「ドラマフェス」があると業界も盛り上がるんじゃないかなと。これだったら毎クール、第1話が始まる前に大きな会場で開催して、NHKと各局が「今シーズンのドラマはこれだ!」みたいな感じで打ち出して、いい意味で競い合うようなPRイベントができたらいいなと思っています。いろんなドラマの第1話をそこで上映して興味を持ってもらうということもできますし、ドラマやテレビ業界全体がより視聴者と熱量を共にして盛り上がっていけるんじゃないかと思うんです。

――今後の展開を楽しみにしています。

ありがとうございます。まずは「NHKドラマフェスティバル2024秋」に是非多くの方に足を運んでいただきたいと思っております。よろしくお願いします。

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