ラグビー日本代表キャプテン・リーチ マイケル選手が“挫折”を乗り越えて至った境地「(挫折とは)自分のキャラクターを試す時期」<NumberTV>
福士蒼汰がナビゲーターを務め、トップアスリートたちの輝かしい「現在」とそれに至るまでの「挫折」をアスリート本人が語るリアルドキュメンタリー番組「NumberTV」(全24回)。9月12日にLeminoで配信された第4回は、ラグビー日本代表をキャプテンとしてけん引するリーチ マイケル選手が登場。日本代表のキャプテンとしてラグビーワールドカップ2015イングランド大会、南アフリカ戦での歴史的大金星や、ラグビーワールドカップ2019日本大会での初の決勝トーナメント進出など、日本ラグビーの快進撃に貢献してきた彼が、引退までも考えた最大の“挫折”について語った。(以下、ネタバレを含みます)
名キャプテンが語る“最大の挫折”
同番組は数々のアスリートのドラマを伝えてきたスポーツ総合雑誌「Sports Graphic Number」と、Leminoの共同プロジェクトによって誕生した、トップアスリートの人生にフォーカスを当てるオリジナルドキュメンタリー。苦難を乗り越えてきたプロアスリート本人が、個々の競技人生を変えた「最大の挫折」と「復活」の物語を自らの言葉で語るリアルドキュメントとなっている。
第4回に登場したのは高校時代、ニュージーランドからの留学生として来日し、大学2年生で日本代表に初選出後、2011年から4大会連続でラグビーワールドカップに出場し続け、2015年の南アフリカ戦での歴史的勝利や2019年の悲願のベスト8入りなど、日本ラグビーの躍進に貢献しているリーチ選手。35歳となりベテランとなった現在も、日本代表のキャプテンとしてチームをけん引している彼だが、「選手として引退かなと思いました」と明かすほどの“最大の挫折”について、現在までのキャリアとともに振り返った。
「生活もガラッと変わりました。前は何しても声をかけてくる人はいなかったのに、(日本に)帰った瞬間に声をかけてくれる人が増えました」とリーチ選手が振り返る、2015年の南アフリカ戦での歴史的勝利をきっかけに環境が劇的に変化し、ラグビー界の強化が増進。周囲の期待も高まる中で迎えた自国開催となるラグビーワールドカップ2019では、日本ラグビーの悲願である決勝トーナメントに進出して日本中を熱狂させた。
リーチ選手はラグビー選手として最高のタイミングでこの大舞台に立ち、獅子奮迅の働きでチームの快進撃を支えた。だが、その裏では、体は満身創痍でボロボロだったという。股関節を痛めてなかなか復帰できず、大会直前に痛み止めの注射を打って出場しており、第2戦のアイルランド戦ではリザーブスタート。パフォーマンスが上がらず、ゲームキャプテンを他の選手に託していた。
ヘッドコーチからの打診に「選手としても引退かなと思いました」
翌年、リーチ選手は両股関節の手術を決断。しかし、術後も理想のパフォーマンスには程遠く、リーチ選手は「どちらかというと精神的につらかった。思い通りのプレーができない。体が付いていかない。思い通りのプレーができないとネガティブなことを考える」と回顧する。
日本代表には返り咲いたものの、自身のプレーに自信が持てず、彼は「口だけのキャプテンになりたくない」と代表のキャプテン就任を固辞。自分の中で「引退」の文字が大きくなる中、2021年にジェイミー・ジョセフヘッドコーチから「ロック(4番)でプレーできないか」と打診される。それまでフランカーの6番にこだわり、守り続けてきたリーチ選手は「代表選手としてもそうだし、選手としても引退かなと思いました」と振り返る。
そんな中で、高校時代共に留学生として来日したイーリ ニコラス氏に引退の意志を伝えたところ、彼から「まだできる。ネガティブなことを言うと、体も反応してどんどん悪くなっていくから、とにかく自分のポジティブな声をかけ続けろ」と鼓舞される。
その言葉を実践していくことで、それまでかなり高い位置に設定していたハードルを、もう一度“ゼロ”から作り上げていき、新境地に到達。過酷なリハビリを経て、けがを克服する。体力と自信を取り戻し、所属チームの「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE(リーグワン) 2023-24」初制覇をキャプテンとして成し遂げたことで“キャプテンとしての自信”も取り戻す。そして、2024年から再び日本代表のキャプテンを務めている。
そんなリーチ選手は、「あなたにとって“挫折”とは?」という問いに、「自分のキャラクターを試す時期だったなと思います」と明かし、「そこで諦めるか、方法を変えてもう一回立ち上がってやるか。諦めるのは簡単。もう一回ゼロから作り上げてトップまで持っていくという経験ができたことが人生の財産になると思います」と述懐した。
なお、9月26日(木)にLeminoで配信される第5回は栗山英樹氏が登場する。
◆文=原田健
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