日曜劇場「ブラックペアン シーズン2」第6話より

<ブラックペアン>伊與田英徳Pが語る二宮和也の妙味「二宮さんだったら別人をうまく演じてくれる」 続編の可能性にも言及

2024.08.16 13:00
日曜劇場「ブラックペアン シーズン2」第6話より

二宮和也が主演を務める日曜劇場「ブラックペアン シーズン2」(毎週日曜夜9:00-9:54、TBS系)が現在放送中。同作は、2018年4月期に二宮主演で放送された日曜劇場「ブラックペアン」の続編。海堂尊の小説「ブレイズメス1990」「スリジエセンター1991」(講談社文庫)を原作に、シーズン1から6年後の物語を描く。

同作で二宮が演じるのは、6年前に東城大学医学部付属病院を去った天才外科医・渡海征司郎とうり二つの世界的天才外科医・天城雪彦。また、シーズン1に出演していたなじみのメンバー、外科医・世良雅志役の竹内涼真、看護師・花房美和役の葵わかな、看護師・猫田麻里役の趣里、外科医・高階権太役の小泉孝太郎、病院長・佐伯清剛役の内野聖陽らが続投している。

このたび、WEBザテレビジョンでは、同作のプロデューサーを務める伊與田英徳氏にインタビューを実施。作品への思いや制作裏話、キャスト陣の成長、最終回に向けた見どころなどを聞いた。

「キャラクターたちが過ごした年月を大切に表現したい」

――まずは、続編製作にあたり特にこだわったポイントをお聞かせください。

前作を見てその要素を楽しみにしていただいている方もいらっしゃるだろうなと思いますし、前作キャストのほとんどの方に出ていただいているので、そのキャラクターたちが過ごした年月を大切に表現したいと思いました。

また、天城という新しいキャラクターが入ってくるので、懐かしさと同時に全く新しいものが同居するといったところの化学反応が起きるといいなと思って作っています。

――前作から6年空いたことで、何か影響はありましたか?

すぐにシーズン2ができたとすると、同じようなことが繰り返されている印象になっていたかもしれません。6年たっているからこそ違った表現ができるようにもなっています。

6年も経っているので、それぞれのキャラクターが感じることがやっぱり少し違っていて、例えば、手術が自分でできるようになった世良だからこそ分かること、自分でちゃんと器械出しなどをできるようになった美和だからこそ分かること、病院長になって全体を見据えなくてはいけなくなった佐伯だからこそ分かることなど、それぞれの見方が変わっていて、その辺の楽しみ方ができるようになったのが良かったかなと思います。

勢いでそのまま見られるのも良かったかもしれないし、1つ先のフェーズで違った角度で見られるのも良いですよね。医療ドラマなので、命の大切さを描くのは普遍的なテーマとしてあるのですが、キャラクターの目線や味付けが変わっているところは見どころかなと思います。

原作者・海堂尊からの提案に驚き「そんなことができるのかな」

――主人公を渡海征司郎から天城雪彦に変更した経緯や意図をお聞かせください。

実は、シーズン1の打ち上げのときに、海堂先生から「すごく良かった」というふうに褒めていただいて、そこで、「この天城というキャラクターをやってみたらどう?」という提案をいただいたんです。大変光栄なことですよね。

はじめはそんなことができるのかなと一瞬思いましたが、面白そうだなと思ってチャレンジしてみました。でもこれは二宮さんじゃなかったら踏み出さなかったことかもしれなくて、二宮さんだったら別人をうまく演じてくれるのではないかと思って、やらせていただきました。

――それは、シーズン1で渡海の人生を描き切ったという思いもあってのことでしょうか?

そうですね。原作では、渡海はもう出てこないので。そんな中、天城というまたとんでもない新しいキャラクターが出てきて、それを同じ役者・二宮さんがやったら面白いなと思ったし、これから後半に向けて渡海も少し出てくるので、渡海と天城の交わりといった原作にはない要素も楽しみにしていただけたらなと思います。

――渡海もまた出てくるのですね?

はい。第6話では、猫田がなぜ仮眠室にいるのかその秘密が描かれるのですが、やっぱりあの仮眠室といえば渡海なので、そこにちょっとしたエピソードが散りばめられていて、 “なるほど”という形になっていると思います。

渡海と天城は全くの別人ですが、猫田を通して2人の共通点を感じ取ることができるはずです。その上で、渡海と天城、2人の秘密が最終回に向けて明らかになっていくので、楽しみにしていてください。

原作と異なる、渡海と天城の交わり

――天城が渡海とうり二つであるというドラマオリジナルの要素は、今後の物語に関わっていくことになるのでしょうか?

そうでしょうね、きっと。その辺のところがストーリーの1つの大きなポイントになってくることは間違いないと思います。起きている事件は原作のエピソードを使わせていただいていますが、このキャラクターのところに関しては、原作とは違います。

原作では、渡海と天城が交わることはないので、そこをどういうふうに描くかというのは、海堂先生と相談しながら進めさせていただきました。原作を読んでいる方も新しい世界として楽しめると思います。

――渡海と比較すると天城は“優しい悪魔”だとの感想もありますが、どのようにして今のキャラクター像を作り上げたのかお聞かせください。

基本的には原作の天城雪彦のイメージを中心に、それを二宮さんがどう演じるかに合わせてアレンジしていきました。例えば、「この髪型にした方がいいんじゃないか」「こういう服を着た方がいいんじゃないか」「優しく、でも流ちょうにいろいろなことを喋れる人がいいんじゃないか」など、二宮さんからもアイデアが来るし、こちらからも監督と一緒に相談したものを提案して、それを監督が最後撮影時にどう料理するか、そんなふうにしてみんなで相談しながらやらせていただいています。

――「台本を覚えるという概念がない。必要最低限のもの以外は全部変えている」と公言している二宮さんですが、現場でのアドリブについてはどのように感じていらっしゃいますか?

“かましてやろう”というアドリブではなくて、自然と出てくるアドリブだと感じています。現場的にも、“そのアドリブは駄目”、“アドリブをみんなでしよう”という雰囲気があるわけではなく、皆さん自然に出てくるアドリブをそのままお芝居として表現して、楽しんでいる感じがあります。

――天城のハイセンスなファッションも話題になっていますね。

天城は、自分のいでたちや趣味など、それらをちゃんと楽しんだ上でさらに仕事もするというところが、日本人的ではなくてかっこいいところだと思います。

その1つの象徴として、着ている服にもちゃんとこだわるキャラクターがいいなと思って、衣装さんや二宮さんと話して今のスタイルになっています。髪色についても、“髪の毛を染めている暇があったら勉強しろ”と思われそうですが、“これも1つの生き方だ”と示すためにそうしているのが面白いなと思いました。

スリジエハートセンターのこだわりのデザインについても、天城は「建物は残る。建物は歌なんだ」と発言していますが、そういう発想も日本人的な感覚ではないように思います。

――主要キャスト陣の役者としての成長については、どのように感じていらっしゃいますか?

二宮さんに関して言うと、別人格をひょうひょうと演じていらっしゃる感じがすごいなと思います。トップスターとしての威厳をしっかりと維持し続けていて、熟練味を帯びているなと感じます。

また、竹内くんやわかなちゃんは、明らかに違いますね。6年前もしっかりしていましたが、今は大人の役者としての風格があって、芝居の持っていき方も見ていて面白いです。以前は、その勢いがかわいいなと思いながら見ていたのが、今はなかなかしっかり“役を生きている”という感じに見受けられるところがすごいなと思います。

――撮影現場の雰囲気やチームワークはいかがですか?

久々に会ったという感じもなく、ずっと一緒に東城大にいたのではないかと思わせるようなチーム感があります。役としての関係性もあるし、役者としての先輩後輩の関係性もそのまま映像に乗っている感じがして、ほほ笑ましく、居心地がいい空気の中で私も過ごさせていただいています。

“心臓は美しい”と思える映像に

――手術シーンの撮影で一番工夫していること、こだわっていることを教えてください。

二宮さんには「心臓は美しい」と実際に思って演じていただいているので、そう思えるような心臓の映し方を意識しています。造形を作る方、監督、美術、カメラマンもひっくるめ、みんなで試行錯誤しながらやっています。

各セクションのスタッフが頑張っていますが、あえて言うと、心臓や臓器などの造形物を作っている方々のおかげというのはあると思います。やっぱり映像では誇張と省略があるので、血管などもきっとリアルなものとは少し違うと思うんです。でも、そこが分かりやすくかつリアルに見えるようにと、監督と何度も打ち合わせしているのを横で見ていて、すごいなと感じています。

――手術シーンで流れるクラシック音楽も話題になっていますが、それについてはいかがですか?

音楽に関しても、二宮さんからの提案ですね。二宮さんがいろいろと詳しくて、「こんな音楽ってあり?」といった提案を受けていく中で、本格的なクラシックもあれば、現代風にアレンジしたものなど、いろいろな曲があることが分かって、面白いと思う曲を使わせていただいています。

――シーズン2を経て、さらなる続編を作られる可能性はありますか?

現場で話が出ないわけではないですが、それがどこまでリアリティーがあるかは分からないです(笑)。その前に、海堂先生にOKしていただけるかどうかも分からないですしね。私としては、一緒に過ごしてきたキャラクターと長くいられる、そんな幸せなことはないので、またそういう機会があるのは願ってもないことでぜひぜひとは思いますが、具体的に何か話が進んでいる状況ではないですね。

――最後に、後半に向けての見どころと、視聴者へのメッセージをお願いします。

はっきりとは言えないのですが、原作を読んだときの読後感と同じ感じを、ドラマでも感じていただけたらいいなと思って作っています。あとは、海堂先生からアイデアをいただいた、天城という全く別のキャラクターを二宮さんが演じるというオリジナルの要素も楽しんでいただけるといいなと思います。

天城がどうしてこんなに腕がいいのに、縁起を担ぐような賭けをするのか、その辺りの彼の生き様が少しずつ見えてきます。彼の背負ってきているものがどう描かれているかを見ていただきたいです。

普通、天才っていいなと思うじゃないですか。でも、天才だからこその苦悩というか、渡海には渡海の、天城には天城の苦悩がそれぞれにあり、そこに注目していただくと、いつの間にか天才が身近な存在になったりして、人間らしさといいますか、彼らの生き様が見えてくると思います。

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