衣装や武器を自作"コスプレ日本代表"七星めろんさん「睡眠3～4時間、2ヶ月休み無しで制作に没頭」

――初めて造形した作品はなんでしたか？

七星めろんさん　最初は『仮面ライダーエグゼイド』に出てくる仮面ライダーブレイブという2号ライダーを、オマージュしたライダー少女・ブレイブちゃんっていうのを、（友達のコスプレイヤー）もいもいさんにサポートしてもらって作りました。彼が仮面ライダーブレイブを作成していて、型紙を一緒に使わせてもらう形でスタートしたんです。

――実際作ってみてどうでしたか？

七星めろんさん　意外と自分って器用なんだなと思いました。それから、誰の力も借りずに作りたい時期がきたんですけど、いざ1人で作るとなったらかなり手こずりましたね。シンプルな形を作るのに難しく考えちゃうんです。上手くできずに時間を無駄にして、結果ゴミを作り続けちゃって……。「これはやばいな、自分は器用じゃないんだ。造形向いてないな」と諦めそうになって泣いたことがあります。負けず嫌いだしプライドも高いし、完璧主義な性格なんですよ。

――ちょっとした挫折ですか。

七星めろんさん　もうお手上げ状態になったので師匠のもいもいさんに助けを求めました。すると型紙もない状態で、直接ボードを切り始めて、「ここをこうして、こうしたら、こんな形ができるよ」って私の横で、1分もしないうちに理想の形のパーツを完成させてて。改めて尊敬したけど嫉妬しました。もう悔しすぎて、泣いちゃった。自分のプライドだったりとか、いろんな想いが込み上げてきて、あのときは半日ぐらい口利けなかったです（笑）。

――どうやって立ち直ったんですか？

七星めろんさん　もうプライドとか捨てようかなと思った。わからないところは人にちゃんと聞くとかってちょっと恥ずかしい部分があるじゃないですか。負けず嫌いな人ほど難しいというか。でもプライドは捨てた方がいいと思って。それこそ、私よりも全然造形してない方がいても、自分にない技術を持ってる方に素直に聞けるようになりましたね。――造形って本当に大変そうですが、作業時間はどのくらいで？

七星めろんさん　最初作ったライダー少女・ブレイブちゃんは初めての造形ですが、もいもいさんの型紙をお借りしたのもあって、布を貼ったりするので時間はかかったけど、制作自体は2ヶ月ちょいとか。ジンオウガは武器も込みだと2ヶ月半なんですけど、ブレイブちゃんよりもジンオウガの方が圧倒的に情報量が多いんです。それを2ヶ月半で作ったっていうことは技術が向上したということですかね！

『モンスターハンター』のコスプレ4人分をイベントに出すお仕事で呼んでもらったことがあって、納期に向けてほぼ毎日、ご飯を食べる時間も作れなくて朝起きて衣装を作って、12時間作業とか当たり前で。集中力が続く方なんで休憩とかなく寝る時間は3〜4時間。それ以外は全部造形っていうのを2ヶ月間、仕事を入れずに毎日やったのが今までで一番大変でした。

――武器にも光るギミックが施されていましたね。

七星めろんさん　ジンオウガの武器は光らせる想定で作り始めました。これも実は、もいもいさんが工業高校出身っていうのもあって電飾とか回線など教えてもらったんです。私が電気系全然出来ないので、「光らせる武器を作るには、これとこれとこれがあったら多分最初はやりやすいよ」と、もいもいさんに言われた通りにして、光らせることができました。

――衣装一式がダンボールに入っているのをXで投稿しているのを拝見しました。

七星めろんさん　あれは元々ダンボールに収まるように作ろうって思ってたわけではなく、脱着の関係で取り外しは必須で作ってたんですよ。ボディの中って空洞だったりするので、空洞の中にパーツをどんどんテトリスのように入れ込んでいったら、ダンボールに収まってしまったみたいな。「あれ？意外と１着収まっちゃう」って意図せず収まったんです。

――福岡から全国のイベントに行かれるので荷物も多くなりますね。

七星めろんさん　国内でもそうなんですけど海外のイベントに持っていくときは、ダンボールの数が多いと空輸でお金がかかっちゃうんです。1mを超える長いものとかになると武器も分割ができないので、そのときのレートで超過料金が決まっちゃうんです。

なので、できるだけ安く、楽して運ぶためにも、今はまず分割をできることを前提に考えて武器を作るようになりました。もうお金と持ち運びやすさのためですね（笑）。できるだけ分割のラインが気にならないようなデザインにはしてるというか、ここだったら分割できるっていうラインを決める時が一番時間かかっちゃいます。

――活動の幅が広がったのはやはり「世界コスプレサミット2022」日本代表ですか？

七星めろんさん　海外にゲストで呼んでもらえるようになったのは、世界コスプレサミット日本代表がキッカケだと思います。日本代表としていろんな県に行って自分なりに成績や関係を作れているからこそ「次回もめろんちゃん呼びたいな」って言ってもらえてるんじゃないかなと思います。

一度、「コスサミ」とは関係ないイベントさんからも海外に誘ってもらったことがあって、「『コスサミ』のサウジアラビアの時にめろんさんと仕事をした方からも推薦で声かけた」とだけで、どこの誰が推薦したかわかんないんですけど、主催の方や、ゲストの誰かしらが見てるんだなっていう感謝もあります。――コスプレイベントのゲストとして呼ばれるキッカケは？

七星めろんさん　国内のイベントでしたら、コスプレ雑誌「COSPLAYMODE」さんとかにもゲスト参加で呼んでいただくことは多いです。ベストクラフトコスチューマーっていう自分が作った造形物をSNSに投稿して「COSPLAYMODE」さんに見てもらって何人かが表彰されるイベントなんです。

去年、ジンオウガでステージに登壇したのがそれですね。そういうコスプレに力を入れてる雑誌の方、企業さんのSNS上のイベントの参加も積極的にしているのもあって、目に留めていただいてるのかな？

――今後の目標を教えてください。

七星めろんさん　国内でいうと、造形の技術を誰かに教える側になりたいなっていうのあります。東京の方だったら友達がやってるんですが、福岡にそういうワークショップがないんですよ。だから福岡での先駆者になりたいです。あとは、日本のコスプレ衣装って合皮を貼ることが多いんです。海外は塗装が多くて合皮、エナメルの布を貼るっていう文化がない分、防水性がなく劣化が激しい。

先月、スロバキアに行ったときも布を貼る文化はありませんでした。現地のイベントでワークショップに参加して、「日本ではサンペルカに布を貼るんだ」っていうことを伝えてきたくらい日本でやっている造形文化を発信したい。もう1回「コスサミ」に挑戦して、アクションとか技術とかもう少し身につけて、チャレンジしたい。福岡、日本、海外の3つの軸で頑張っていきたいですね。

――今からコスプレを始める人に向けて一言お願いします。

七星めろんさん　もしこれからコスプレをやりたいって思う人は、まず宅コスからしてみよう！私も元々宅コスから始めたというか、全然表に出してないけど家で着て写真撮って楽しむだけでもいいと思っている。「この人がやってるから自分はしない方がいいのかな」とか気を使わなくていいとも思うので、まずは楽しい気持ちを優先して周りを気にせずコスプレして欲しい。なので、宅コスして自撮りをSNSにあげるからで全然いいと思う。

それが反響がでて、自信につながることもある。それこそ造形とかで困ってたりするんであればなんでも聞いて欲しいですね。教えるのとか頼られるのってすごい好き。「私も昔はこのレベルだったんだよ。だからみんなも上達するよ」っていう何かプラスな気持ちになってくれるように、過去の作品をもう一度SNSにあげるのもいいかもって今思いました。