ドラマ『不適切にもほどがある!』キヨシ役で注目の15歳・坂元愛登「自分も台本読みながらめちゃくちゃ笑いましたし、どの年代の方も楽しめる、絶対に夢中になれるドラマです」
現在放送中のTBS金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系毎週金曜よる10時)にて、2024年から1986年へとタイムスリップする向坂サカエ(吉田羊)の息子・キヨシ役を好演している15歳の俳優・坂元愛登さん。小学2年生から俳優活動をスタート。2022年の映画『ある男』をきっかけにめきめきと存在感を増し、現在全国公開中の『罪と悪』も話題を呼び、2024年注目の俳優の一人となっている。現在出演中のドラマ・映画について、そして俳優としてのターニングポイント、演技の仕事への向き合い方までじっくりと話を聞いた。
■『不適切にもほどがある!』キヨシ役・坂元愛登インタビュー
――宮藤官九郎さんが脚本を手掛け、阿部サダヲさんが主演するドラマ『不適切にもほどがある!』。すでに大きな話題を呼んでいる作品で、メインキャスト・向坂キヨシ役に大抜擢されました。現場に入ってみていかがですか?
「共演者の方々が、自分からしたら本当に大スターというか、すごい大先輩で…。皆さんその場で生まれたアドリブを取り入れたり、面白いことを次から次にやっていて、本当に毎日勉強することばかりで楽しいです。自分も刺激を受けて、アドリブに挑戦してみたりもするんですけど、やっぱり皆さんのすごさに圧倒されてしまいます」
――ドラマへの出演が発表された際のコメントで「これまでは暗めな役が多かった」とおっしゃっていましたが、今回はコメディですし、現場のテンションも高そうなので、そこに飛び込んで行くのは不安ではなかったですか?
「そうですね。これまで暗い役を演じることが多くて、悲しみとか怒りとか負の感情のお芝居のほうが得意なゾーンだったんです。『不適切にもほどがある!』のようなコメディはやったことがないですし、どちらかというと苦手なゾーンだったので、最初はすごく緊張しました。でも、周囲の方々が現場の空気を上げてくださって、そのお陰でずっとテンションを上げることができるようになりました」
――2024年の現在から過去の1986年の日本にタイムスリップするという、かなり特殊な設定のドラマなんですが、演じるキヨシはどんな子だと捉えていますか?
「最初に台本を読ませていただいたとき、本当に真っ直ぐな男の子だなと思いました。優しくて、感情の起伏が激しくて、子供っぽくて。ちょっと天然な部分がありながら、どこか憎めない可愛らしさだったりを表現できたらいいなと思いました」
――世界観を掴むうえで、1986年頃の日本の文化に触れてみたりしましたか?
「自分の両親が、1986年の時にまさに中学生だったんです。話を聞くと、今よりもいろいろと制限が緩かったみたいで、いまでは、悪い風に捉えられがちなこともあったようですけど、自分たちは中学生だったから本当に自由ですごく楽しかったって言っていて。自分もちょっと経験してみたいなと思いました」
――今回ドラマの中で疑似体験ができそうですね。キヨシが恋する純子の姿はまさに当時のスケバンそのものですね。
「現場に入る前に80年代のドラマも観たのですが、河合優実さんが演じている純子は、当時のドラマの中の女優さんが目の前にいる感じで、同じ空間で一緒に演じているのがなんか不思議な感じになります。現場ではキヨシと同じようにタイムスリップしたような感覚になるので、その感情を演技にうまく活用できたらなと思っています」
――純子役の河合さんも多くの映画やドラマで高く評価されている俳優です。共演されていかがですか?
「これまでに自分が拝見した河合さんの出演作品は、難しく深い作品が多くて、すごい俳優さんだなと思っていたんです。でも今回はコメディ全開で、自分が知っている河合さんじゃないほうのお芝居なのに、振り幅がすごいなと。普通にやったら不自然になっちゃうような大きめなお芝居でも、しっかりと自分に落とし込んでいて、本当に勉強になります」
――現在好評放送中の『不適切にもほどがある!』の見どころを教えてください。
「自分も台本読みながらめちゃくちゃ笑いましたし、どの年代の方も楽しめる、絶対に夢中になれるドラマです。1986年頃に生きていた方たちは“懐かしいな”って思いだしたり、現代の令和を生きている方々は、“こんな時代があったんだ”って驚いたり。面白いだけじゃなくて、ちょっと考えさせられる部分もあったり、コメディだけど実はメッセージ性のある作品だと思うので、そんなところも楽しんでいただけたらと思います。それぞれの世代の価値観を理解し合えるきっかけにもなるかもしれないです」
――このドラマを観て坂元さんのことを知る人もいるかと思います。俳優デビューしたきっかけを教えていただけますか?
「僕が小学2年生の時に東京に引っ越して来たんですが、そのときに小学5年生のお兄ちゃんがテレビを観ながら“こういうお仕事楽しそうだね”って言ったのがきっかけで、事務所に入ることになったんです。僕は友達と遊ぶのが楽しい時期だったので、仕事で遊ぶ時間が減るのがめちゃめちゃ嫌で、泣きながら“嫌だ”って言ったんですけど、すでに親が事務所に書類を送っていて。兄弟で一緒に入所してそれからずっとこの事務所です。だから最初の頃は仕事という意識もあまりなくて、現場に遊びに行くような軽い感じでやっていたのを今はすごく後悔しています(苦笑)」
――そんな状態から演技を仕事にしようと考えるようになった転機はありましたか?
「大きな役や、しっかりと役柄のある現場を経験したことがなくて、もう辞めようかなって思っていた時期に、映画『ある男』のオーディションがあったんです。“このオーディションに落ちたら辞めるね”って親に言って臨んだオーディションで石川慶監督に出会って、抜擢していただいたんです。その現場が楽しかったというのもありましたし、せっかく僕を選んでくれた監督に恩返ししたいという気持ちもあって、そこから仕事という意識が出てきた感じです」
――オーディションが小学6年生の時ですから、結構最近ですね。そのオーディションでは何か違った感覚がありましたか?
「オーディションの時に石川監督が『台本を読み込まないでね』とおっしゃっていて。そんなことは初めて言われたんですが、それがあって新鮮な感じで演じることができたのが良かったのかなと思います。『ある男』での演技はお陰様で評価していただけて、自分のお芝居を見つけることが出来て、それが今に繋がっていると思います」
――その後、成長の手応えを感じた現場はありますか?
「中学2年生の夏に撮影して、現在公開中の『罪と悪』という映画の現場です。上手く説明できないんですけど、感情がグワーッ!て込み上げる感覚を今までで一番大きく感じられて、それがすごく心地良くて、お芝居って楽しいなって改めて思ったんです」
――幼少期から今の事務所に所属していますが、レッスンやサポートを受けたことで特に印象に残っていることはありますか。
「週に1回芝居のレッスンがあるんですけど、僕は即興のお芝居が好きなので、エチュードをたくさんやってくださる講師の方のレッスンばっかり行ってます。最近、レッスンの時に感情が込み上げるのを毎回感じられて、そこで感情の出し方を学んでいます。そのレッスンは本当にめちゃくちゃ楽しいです」
――先ほど『不適切にもほどがある!』の現場でのアドリブの応酬が楽しいとおっしゃっていましたが、即興演技が好きなのもそれに近い感覚なんでしょうか?
「レッスンのエチュードは、自分の間で自由にやりながら相手の役を感じてお芝居をするんですが、コメディはテンポや間の取り方が全く違っていて、今までやってきたものが全然通用しないなって感じています。テンポを崩さないように間を詰めて、かつ自分の感情を持っていくという、今までやったことがない作業なので。まだまだ探り探りではあります」
――今回のドラマと映画で大きく注目されることかと思います。今後やってみたい仕事や目標はありますか?
「今回のドラマではコメディをやっていますが、やはり自分が経験したことのない過去を背負っているような役になるのが好きなので、そういう役をまた演じたいと思っています。世間で簡単に理解されない様な何かを抱えた役柄を理解しようとして感情を動かすことに挑みたいと思います」
――ちなみに最近、ハマっていることはありますか?
「『不適切にもほどがある!』のお話をいただいてから、もっといろいろな作品に触れる必要を感じて、映画やドラマを毎日観るようにしています。古いものから最近のものまで幅広く観ているんですが、そこに出ている役者さんに対して“この人すごい!”ってなる時があって、いいなと思いつつ少し悔しいですね。今は生活の全ての中心にお芝居があって、映画やドラマを観たり、小説を読んだりするもお芝居のためですし、日常で感情が動くことがあったらメモをして“この感情は今度こんなシーンで使えそうだな”って考えたり。気付けばいつもお芝居のこと考えてるなって思います」
――例えば最近見た作品で“悔しいな”と思わされた場面はありますか?
「先日、映画『正欲』を観て、もちろん皆さんすごかったんですが、特に磯村勇斗さんの演技に惹きつけられました。画面の中でその役として生きてるだけなのに…ただ生きるっていうことが難しいんですけど、人を惹きつける表情をされていて。役作りが大変な役柄だと思うので、圧倒されました。この映画は皆さん難しい役柄だったと思うんですが、すべてのお芝居がスーッと自分の中に入ってきて、考える前にいつの間にか映画が終わっていて、エンドロールが流れている時に、一気にドワーッて涙が出てきました。泣くというのが、その映画を観た感想として正しいのかはわからないですけど、映画ってこんなに感情を動かせるんだな、面白いなって改めて思いました。自分もまたそういう作品に巡り合いたいなって思わされました」
――最後に俳優デビューを目指す『デビュー』の読者にエールやアドバイスをいただけますか?
「自分もまだまだ未熟なのですが…。最初はみんな殻みたいなものがあって、恥ずかしいという感情は人間だからもちろんあるんですが、その殻を無くせたら、それはすごく大きな一歩なのかなって思います。僕も『ある男』の時、“まだ殻がある”と監督から言われて、木に向かって叫ばされ(笑)、それで自分の中に変化があって、成長を感じる部分があったので、まずは殻を破ることが大事なのかなって思います。あとは、映画などの作品を観るということは絶対に役に立ちます。1日1本でも、週に1本でもお芝居に触れてインプットするということは、自分にとっての刺激になり、演技の財産や栄養になるので、効果があると思います」
PROFILE
坂元愛登(さかもと・まなと)2009年2月9日生まれ、東京都出身。趣味:映画鑑賞。特技:バレーボール。
【ドラマ】
金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)向坂キヨシ役
『unknown』(EX)朝田虎松役(中学生時代)
金曜ドラマ『100万回 言えばよかった』(TBS系)鳥野直木役(中学時代)
【映画】
『罪と悪』阪本春(過去)役(監督:齊藤勇起)
『雑魚どもよ、大志を抱け!』小林幸介役(監督:足立紳)第33回TAMA映画賞最優秀作品賞受賞
『ある男』悠人役(監督:石川慶)第46回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞
【ラジオ】
オーディオドラマ FMシアター「おしゃべりなバディ」(NHK FM)相原祐人役
Information
■金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系 毎週金曜よる10:00~10:54)
宮藤官九郎氏が書き下ろす、意識低い系タイムスリップコメディー。1986年から2024年の現代へタイムスリップした“昭和のおじさん”小川市郎(阿部サダヲ)が、コンプラで縛られた令和の人々に考えるキッカケを与えていくストーリー。坂元愛登が演じる向坂キヨシは、令和に生まれ、フェミニズムの急先鋒である社会学者の母・サカエ(吉田羊)と共に1986年にタイムスリップした中学生。四六時中エロいことを真剣に考えている年頃の男子で、昭和で出会った純子(河合優実)に一目ぼれしてしまったことで昭和の時代に残りたいと言い始めるが、そのほかにも理由があるようで…。時空を超えたキヨシと純子の恋模様にも注目だ。
https://www.tbs.co.jp/futekisetsunimohodogaaru/
■映画『罪と悪』(2月2日より全国ロードショー)
オリジナル脚本で描く罪の真実と正義の在り方を問う本格ミステリー。監督・脚本は齊藤勇起。出演は高良健吾、大東駿介、石田卓也 ほか
ある日、14歳の正樹が殺された。彼の同級生の少年たちは犯人に詰め寄り、1人が犯人を殺し、殺害現場となった家に火を放つー。20年間の沈黙を経て罪を背負った幼馴染3人は再会するが、あの時と同じ場所でまた殺された少年の遺体が発見される。さびれた町で一体何が起こっているのかー。坂元愛登は高良健吾演じる阪本春の少年時代を演じる。
https://tsumitoaku-movie.com/
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