日本テレビ総合編成センターメディア開発Divプロデューサーの井上直也氏(左)、同Divビジネスプロデューサーの平岡辰太朗氏(右)

「Z世代の4人に1人は視聴」若者を魅了する、日テレTikTokショートドラマ事業『まいはに』の裏側に迫る

2023.12.19 12:00
日本テレビ総合編成センターメディア開発Divプロデューサーの井上直也氏(左)、同Divビジネスプロデューサーの平岡辰太朗氏(右)

今年3月にアカウントを開設し、わずか9ヶ月で「SNS総再生数4億回」「Z世代の4人に1人は視聴」と凄まじいスピードで急成長を遂げた、TikTok縦型ショートドラマ専用アカウント『毎日はにかむ僕たちは。』。テレビ局である日本テレビがTikTokを主戦場として、縦型ショートドラマを中心に映像コンテンツを制作するごっこ倶楽部(株式会社GOKKO)と共同でドラマ作りを行っている。今回WEBザテレビジョンでは、アカウント開設のきっかけやバズの秘訣について取材を実施。事業責任者の日本テレビ総合編成センターメディア開発Divプロデューサーの井上直也氏、同Divビジネスプロデューサーの平岡辰太朗氏に話をきいた。

ここまでの反響は想定しておらず、「とても嬉しい誤算です(井上)」

――TikTokアカウントの開設から約9か月、反響はいかがですか?

井上直也(以下、井上):視聴者のほとんどは10~20代前半の学生になるのですが、最近コメント欄で「私のクラスで話題になってるよ!」という声や、「昨日の『まいはに(※『毎日はにかむ僕たちは。』の略称)』観た!?」という会話で盛り上がっていることを報告してくれる方が増えて、いちエンタメとして生活に浸透してきているのかなという実感はあります。撮影合間に行う、TikTokライブでの同時接続者数も毎回数千人を超えるようになっており、目に見えての盛り上がりも感じていますね。

平岡辰太朗(以下、平岡):定期的に行っている定量調査でも、認知の拡大とともに、動画に対して「好き」とか「共感できる」といった方が増えているのは嬉しい反響です。他にも、今スポンサーさんとの取り組みがかなり増えていて、仕事面での広がりという部分でも『まいはに』の反響を大きく感じています。

――このような現状をお二人は想定していましたか?

井上: いや、正直ここまでは想定していなかったです。当初の事業計画では、スポンサーのタイアップは10月くらいからセールス予定だったのですが、実際5月ぐらいには動き出していたので、基本的に全てが半年巻きぐらいで進んでいますね。とても嬉しい誤算です。

平岡:「波及力」という面で、TikTokの凄さを実感した部分でもありますね。

――改めて、テレビ局がTikTokメインでドラマ作り…と聞くと不思議な感じもしまして、そのきっかけは何だったんでしょうか?

井上:私と平岡が所属している部(総合編成センターメディア開発Div)のミッションとして、“メディアビジネスの既存の枠にとらわれず、新しいアイデア出し、コンテンツ開発などを行っていきましょう”ということが掲げられていたんです。そこで、何をやろうかなと考えていた時に、TikTokのおすすめで、ごっこ倶楽部さんの縦型ドラマが流れてきて。まあ面白くって、思わず見入ってしまったんですね。それで感覚的に「これは来るだろうな」と思って、事業としても収益モデルはいくつか考えられそうだというところで、ごっこ倶楽部の社長に突撃したというのが最初ですね(笑)。わりと、「面白い!」が先行したかもしれないです。

――会社として批判的な声などはなかったですか?

井上:そうですね。ネガというほどではないですが、日本テレビとして誰も挑戦したことがない分野であったため、社内の理解を得るために時間はかかりました。それでも、部のミッションにもあるように、会社として新しい挑戦には基本前向きなので最終的に事業として動くことができました。

「“Z世代が常に主語であるべき”というのを心がけている(平岡)」

――ごっこ倶楽部さんとの共同事業ということで、ドラマ制作はどのように行っているのでしょうか?

井上:基本的には、ごっこ倶楽部さん主導で行っています。上がってくる脚本にも極力赤は入れないようにしていますね。というのも、ごっこ倶楽部さんの制作陣の中でも、特に『まいはに』チームって、平均年齢25-6歳とかなり若いんですよ。その“生感”といいますか、そういうものを大事にしていて。ただ、投稿後の動画に対する数値的な分析やフィードバックはしっかり行って、次の動画に生かしています。

平岡:少し補足すると、僕らがごっこ倶楽部さんに丸投げしているとかではなく、“Z世代が常に主語であるべき”というのをお互いに心がけているんですよね。キャストしかり、作り手しかり、結構現場で作り上げていくものだったりもするので、脚本自体にもト書きと言われるようなセリフ以外の書き込みはあんまりなくて。先ほどの“生感”じゃないですけど、「Z世代が作っているからこそ、Z世代に受け入れられるんじゃないか」という前提のもとお願いしています。なので、僕はあえて口を出さないようにしていますね。分からない半分、言わない半分です(笑)。

――Z世代が主導となって現場で作り上げている、とは意外でした。

井上:そうなんですよね。テレビドラマの制作と違うのが、『まいはに』の現場は少人数精鋭で大体10人前後なんです。現場では監督の周りに人が集まって、みんなで相談しながら一本を作っています。「ここ、もっとこうした方がいいんじゃない?」とか入社1ヶ月目のヤングディレクターの子が言ったり、メイクさんが意見を出してくれたりすることもありますね。

――――他、制作するうえでのポイントはあったりしますか?

井上:流行りのワードとかはすぐに取り入れていますね。若い子の中で流行っている言葉があったら、それを次週の脚本に急遽反映させたりしています。で、2週間後には公開するみたいな。このスピード感はテレビではなかなか難しいと思うので、ならではですね。変な話、ストックはほぼないです。

平岡:『まいはに』の世界観に合うものであれば、割と何でもやっていますね。恋愛系だけでも王道のラブコメもあれば、感動もの、ミステリーもの…と幅広いジャンルで制作しています。他にも、ゲスト出演回を作るなど、“違うテイストのことをすると新しいフォロワーが増える”ということもあって、日々あれこれ変えながらやっています。

――確かに、動画のジャンルは多岐にわたっていますよね。続きものもあれば、1話完結型のものもあったりして。

井上:そうですね。そこは、ユーザードリブンだったりもするので、反応が良ければ続きを作るし、悪ければ作らないっていう感じでは意識していますね。ただ大事なのは、その動画単体、例えば、2話とか3話から観ても楽しめるように、約2分間で完結するようにはしています。

「TikTokは、最初から誰にでもチャンスがあるプラットフォーム(井上)」

――テレビとの違い、という部分で特にTikTokの強みをどうお考えですか?

平岡:色々ありますが、間違いなく「波及力」は、TikTokならではの強みだなと思っています。テレビだと一回放映したらそれっきりになることが多いので(見逃し配信などはありますが永久ではないので)、常にプラットフォーム上に残り続けるという意味では、幅広い層にずっと見続けられるコンテンツとなりうるポテンシャルがあるなと思います。また、TikTokはコメント欄が掲示板のようになっていて、動画を見ながらその場で盛り上がれるというインタラクティブなコミュニケーションがあることも大きいですよね。

――確かに、アカウントからすぐに過去動画を視聴できるのは魅力の一つですね。

平岡:あとは、PDCA(※Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の略)が凄く回しやすいのがTikTokの特徴かなと思います。動画を出せば、再生数がすぐにわかりますし、どこで離脱する人が多くて、どういうコメントが多いかなど、良くも悪くも全部見えちゃうんですよね。良くなかった部分は次までに変えたり、逆に良かった部分は、引き続きやっていこうとしたりするサイクルが凄く短いんです。テレビだと作ってから、またその次を作る期間がどうしても長くなってしまうので、サイクルの回しやすさみたいところは、TikTokならではの強みかなと思いますね。

井上:クリエイティブ的な部分で言うと、テンポ感や演じる側に求められるものも違うのかなと思います。テレビだと俳優さんが動き回って感情を表現したりすることも出来ますが、TikTokのような縦型画面の場合はかなり寄りで抜かれるので、手や指の動作などで感情を表現したりするんです。でも、どっちが良いとか悪いとかではなくて、それぞれのメディアにあったお作法とかフォーマットみたいなことを理解して、その違いを楽しむみたいなことが結構大事かなと個人的には思っています。

――今でこそアカウントの平均再生数は300万回を超え、いいねやフォロワー数も数十万という数字ですが、いつ頃からうまく回り始めてきたなという実感がありましたか?

井上: これが他のプラットフォームとの最大の違いで、結論から言うと、最初からうまくいきました。初回に上げた動画が、今だと1000万回以上の再生数があるんですけど、投稿して最初の10日間ぐらいで300万回再生を回ったんです。TikTokって、フォロワーに準拠しないプラットフォームといいますか、いわゆるおすすめで基本的に出る。つまり、動画単体が面白ければずっと残存して、フォロワーが0人だろうが100人だろうが1万人だろうが関係なく出続けるんですよね。要は、最初から誰にでもチャンスがあるプラットフォームなんです。最初の動画からうまく回ったっていうのは、アカウントにとっても大きかったですね。もちろん、その後全てがうまくいったわけではないので、反省して軌道修正して…ということを繰り返して今に至ります。

バズりの秘訣は、「トライアンドエラーの積み重ねでしかない(平岡)」

――ちなみに、バズり続ける秘訣ってあるんでしょうか?

平岡:そこはやっぱりトライアンドエラーの積み重ねでしかない気がしています。世の中のトレンドもアルゴリズムも常に変わる中で、TikTokでヒットを出し続ける原則は常にトライし続けること以外ないと思っているんですね。なので、バズる回もあれば、うまくいかない回もある。「じゃあ、何がいけなかったんだろう」とか「これは次こうしてみよう」って、言える環境と修正のスピードに尽きるんじゃないかなと。

井上:数字も凄く大事で、それこそバズることを最優先していると思われがちですけど、意外とそれ以上に「そもそも、これ面白いんだっけ?」とか「誰かの心の拠り所になれてる?」みたいなことを大事にしています。若い子たちが観たときに嫌な気持ちにならないかとか、表現的にこれって大丈夫かとかを考えて作っていますね。過激な表現やお色気ネタは数字が取りやすいのかもしれないですが、そういうことではなく、『まいはに』の世界観に合った良質なコンテンツを出せるように心がけています。

――今後はどういうことをしていきたいなどありますか?

平岡:今後はIPビジネスに寄っていきたいと思っています。『まいはに』ファンをどんどん増やしていって、『まいはに』というブランドをもっと大きくしていきたいなと。そのためにも、TikTokだけに閉じないチャレンジも考えていたりします。『欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮装大賞(日本テレビ系)』とのコラボがいい例で、日テレが持っているコンテンツと組んで仕掛けたり、地上波やYouTube用にドラマを作って縦と横で連動させる企画であったりとか、プラットフォームを超えた掛け算も是非トライしていきたいなと思っています。

――これからもどんどん大きく、楽しくなりそうですね。

井上:はい! 是非楽しみにしていてください。

――本日はありがとうございました!

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