レギュラー選外から“下剋上”で掴み取った念願の『下剋上球児』出演、元青学大投手・中山翔貴「また一から甲子園を目指す経験ができてすごく楽しい」
現在放送中の鈴木亮平主演、TBS系日曜劇場『下剋上球児』(毎週日曜 よる9:00~)において、第7話より越山高校野球部の新入部員・阪大輔役で出演している新人俳優・中山翔貴。小学1年生から大学生まで野球一筋だった人生から新たに芸能の道を志し、昨年4月に『しろめし修行僧』で俳優デビューを果たした。『下剋上球児』のレギュラー出演のオーディションでは選外となったものの、実技審査での140km投球が評価され、“下剋上”で見事出演を勝ち取った彼に、オーディションに挑んだ際の想いや審査で印象に残っていること、また演じる上でこだわっている部分などを聞いた。
■「レギュラーのオーディションに落ちたときは、めちゃくちゃ悔しかったですし、正直落ち込みました」
――『下剋上球児』のオーディションは、どのような想いで臨まれたのでしょうか。
【中山翔貴】「高校野球に関するドラマのオーディションがあるという話を聞いて、もともと自分は大学までずっと野球をやっていたので、絶対に役を勝ち取りたいという想いでオーディションを受けました」
――書類審査を通過した125名が臨んだ2次審査では、どのようなことを?
【中山翔貴】「自己PRでは、自分の野球経験に基づいたお話をさせていただきました。大学まで野球をやったこと、でも大学の野球生活はあまり上手くはいかず、イップスで投げられなくなったり、投げ方を変えたり、いろんな挫折があって、それからどんなふうに乗り越えたのかというようなことを話しました。嘘偽りなく、自分の体験談を話した感じだったので、緊張はありましたが、わりと素を出せたんじゃないかなと思います。お芝居の審査では、一度披露した後に、塚原監督から『次はこういうふうにやってみてください』と演出が入って、もう1回芝居を披露するという形で、その時はすごく緊張しました。監督から言われたことに対して、本当に一瞬の間にお芝居を切り替えてやらなきゃいけなかったので、すごく難しかったです」
――その後、3次審査では野球の実技審査がありましたね。
【中山翔貴】「ピッチングからバッティング、足の速さを競ったり、本当に野球のセレクションを受けているような感じで、オーディションっていうことを忘れてしまうくらいガッツリ実技審査をやりました。実技審査の前に、練習会のような機会もあったので、そこでけっこう候補者のみんなとも仲良くなれて、オーディションではありましたが、和気あいあいとした雰囲気もあって、実技審査自体はけっこう楽しんでやれました」
――大学卒業後も趣味とかで野球を続けていたりしたんですか?
【中山翔貴】「そうですね。趣味で草野球をやっているので、野球はずっと続けてやってはいます。しかも、草野球になってからのほうが自分、野球が上手くなっている気がするんです! 学校を背負ったり、部活っていうものから解放されてやる野球って、最高に楽しいなと。なので、比較的ブランクはなく実技審査に臨めたのかなとは思います」
■「同世代で良い刺激をもらえる人に出会えたなと思っています」
――野球経験者から初心者まで様々な方が参加されていましたが、中でもピッチャー候補は人数も多くて、激戦だったのかなと。
【中山翔貴】「自分としては、大学まで野球をやってきたという自信もありましたし、そういう想いで参加したのですが、自分が思っていたよりもみなさんすごく上手くて。“野球が上手い役者の人たちってこんなにいっぱいいるんだ!?”って、ちょっと衝撃を受けました」
――オーディションを通して、特に印象に残っていることはどんなことですか?
【中山翔貴】「ピッチングの実技審査のとき、140kmを出すことができたのですが、その直後に兵頭功海さんが142km出されていて。マジか!って思って、思わず『超えてくるんかい!』って驚きました。あれはびっくりしましたし、一番印象に残っています。前の作品でも兵頭さんとはご一緒させていただいたことがあって、野球が上手いことは知っていたんです。同じピッチャーというポジションで、ライバルではあるけど、すごく良い刺激をもらえているなと思っていて。今もドラマのオンエアを観ていて、お芝居もすごく素敵だし、同世代で良い刺激をもらえる人に出会えたなって思っています」
――レギュラー出演のオーディションは惜しくも落選。でも、その時の140km投球が評価されて、出演を掴み取りました。
【中山翔貴】「そうですね。レギュラーのオーディションに落ちたときは、めちゃくちゃ悔しかったですし、正直落ち込みました。でも、後日出演決定を聞いたときは、嬉しかったというか、ホッとした気持ちのほうが強かったです」
――出演が決まってから現場に入るまでにはどんな準備をされましたか?
【中山翔貴】「現役時代から体重が15kgほど痩せてしまって、筋肉も落ちてしまったので、体作りをしっかりやって筋肉をつけるトレーニングをやりました。出演が決まった後の練習会に参加したとき、体力の無さをすごく実感して。自分としては草野球もやっているし、筋トレもやっているから動けるほうだと思っていたのですが、今の自分はこんなにも衰えているのかと。そこからは時間があれば運動して走ったり筋トレしたり、怪我しないようにストレッチしたり、わりと現役時代に近い生活になっていて、懐かしさを感じています」
――同世代の役者が多い現場というのはいかがですか。
【中山翔貴】「同世代が多い現場は、今回が初めてなのですが、こんなにもたくさん自分と同世代の役者たちがいるんだなとも思いましたし、みんなそれぞれ個性もぜんぜん違っていて、すごく楽しいです。特に、この作品が“野球”というものを題材にしているからというのもあって、“1つのチーム”という感覚もあり、部活をやっていた頃の感覚に戻っている感じがしています。みなさんに刺激をもらいつつも、楽しいっていう気持ちが一番大きいです」
■「野球が大好きで明るいキャラクターというのは、自分とも共通する部分」
――演じられている阪大輔という役柄に対しては、どんな人物像だと考えていますか。
【中山翔貴】「野球部の中でも一番くらい、本当に野球が大好きで、ちょっと無邪気で思ったことを口に出しちゃうような感じのキャラクターだと思います。基本的に、明るくて一番元気があるタイプだと思っていて、“野球が大好きで明るい”という部分は、自分とも共通するところかなと思っています。野球部時代もムードメーカー中のムードメーカーだったというか、とにかく明るくてうるさいっていう感じのタイプだったので(笑)」
――ご自身と似ている部分があるということですが、演じる上でこだわっている部分は?
【中山翔貴】「初登場のシーンが中学3年生からなので、自分の実年齢よりも10歳下ということもあり、フレッシュさや若々しさは絶対に必要だなと思っていて。声のトーンやセリフの言い方みたいなところで、1つギアを上げて元気よくっていうのは意識しています」
――主演の鈴木亮平さんはどのような印象ですか。
【中山翔貴】「亮平さんは本当に優しくて、生徒キャストとの距離が近いというか、寄り添ってくださっていて。けっこう僕らも亮平さんにお芝居のことを質問したりもするのですが、亮平さんも野球のことは僕らのほうが詳しいからと、いろいろと聞いてきてくださったり、そういうコミュニケーションをたくさん取ってくださるので、やりやすさと安心感がすごくあります」
――今回のドラマのように、中山さんご自身が学生生活の中で影響を受けた先生っていらっしゃいますか。
【中山翔貴】「僕は高校時代の野球部の監督との出会いが、自分の人生を大きく変えたと思っています。本当に厳しい方で、親以外にあんなに厳しく叱ってくれる人もいなかったし、自分の人格を作ってくれたのは、その監督だったなって思います」
――具体的にはどのような影響を受けたのですか?
【中山翔貴】「自分は学校ではけっこう怒られることが多かったり、成績もそんなに良くはなかったりしたタイプで。でも、試験で赤点を取ったら試合に出られないということもあり、“好きな野球をやりたいならちゃんと勉強も頑張らないとダメだ”と教えられ、『野球部は学校の模範になりなさい』とずっと言われていて。たとえば、ゴミ拾いやご年配の方や困っている人がいたら親切にしなさいということとか、それが全部野球に繋がるからということを教えられて。高校生活でそういう周囲への気遣いという習慣がつきましたし、本当に良い人に出会えたなって思っています」
――野球から学ぶことがたくさんあったんですね。
【中山翔貴】「そうですね。『人に思いやりがあるからこそ良い送球ができるんだ』とか、『相手のことを思って送球すればそんな雑な投げ方はしないだろう』とか、そういう“気配り”というものについて教わったり、視野を広げるために周りで何が起こっているのかというのを普段から気にするようになると、落ちているゴミに気づいてそれを拾ったり、困っている人がいたら手伝ったりというように、常に視野を広げて、アンテナを張っておくことが野球に繋がるんだとずっと言われていました。それが今の仕事にも繋がっているなって思いますし、周りを見る力というのは自分でもついているほうかなって思います」
■「存在感のある役者になっていきたい」
――前回取材をさせていただいた俳優デビューの時から、いろいろな作品を経験されたと思いますが、この仕事の楽しさ・魅力はどんなところで感じていますか?
【中山翔貴】「今はすごく楽しく仕事をさせていただいているので、本当に楽しいことだらけっていう感じです。その中でも、やっぱり普段なら経験できないことを、役を通じてやれることが一番の魅力なのかなと思います。今回の作品でいえば、自分自身は甲子園に出られませんでしたが、またこうやって新しく一から甲子園を目指すという経験を、役を通してだけどできるというのは、すごく楽しいですし、やりがいを感じています」
――『下剋上球児』は甲子園という夢に向かって頑張る生徒や大人たちの物語ですが、中山さんが夢や目標を叶えるために大切にしていることは何ですか。
【中山翔貴】「やっぱり諦めずに続けることしかないのかなと思います。途中で諦めて辞めてしまったら、わからないまま終わってしまうこともあると思うので。自分も野球をやっている時、大学までやっていなかったら挫折も味わうこともなかっただろうし、そういう感情を知ることもなかった。すごくつらかった時期もありましたが、つらくても踏ん張って続けた先に見えるものがあると思っているので、今も諦めずに続けることを大事にしています」
――続けるってすごく大変なことだとは思いますが、挫折を経験した際、どんなふうに乗り越えてきました?
【中山翔貴】「野球をやっている時は、親の援助があったからこそできていたので、母だったり周りで応援してくれている人たちの喜んでいる顔が見たいと思いながら頑張っていました。つらくて辞めたいと思うときもありましたが、自分が活躍する姿を見て喜んでくれる人たちがいたので、その人たちにそういう姿を見せたいという気持ちで頑張れていたんだと思います」
――支えてくれたり、応援してくれたりする人がいたから乗り越えられた。
【中山翔貴】「そうですね。僕は自分だけじゃ頑張れないタイプだと思います。家族だけじゃなく、高校で野球を辞めた友達も自分の活躍を応援してくれていたし、それがあったから自分も頑張れました。それは今でも一緒で、これまでの友達が応援してくれているから、今の活動も頑張れているし、それが原動力にもなっている。もちろん、時にはサボりたいって思う時もありますが、“ダメだ!”って、自分を律せられるのは、そういうところかなと思います」
――では最後に、役者としての今後の目標を教えてください。
【中山翔貴】「存在感のある役者になっていきたいと思っています。セリフが少なかったり、出番が短いシーンとかでもインパクトを残せるような役者になりたいですし、“中山翔貴が出ているから観たい”と思ってもらえるような役者になりたいです。今回、鈴木亮平さんとご一緒させていただいて、お芝居もすごく素敵だし、人としてもとても尊敬できる方だなと感じていて。やっぱりその人の人間性みたいなものって、芝居にも出る部分だと思うので、自分ももっと人間性を高めていって、魅力的な芝居ができるようになりたいし、人としても尊敬されるような役者になりたいなと思います」
【中山翔貴 プロフィール】
中山翔貴(なかまや・しょうき)●1999年3月18日生まれ、東京都出身。
小学校1年生の時から野球を始め、以後16年間野球を続ける。ポジションは投手でアンダースロー投げ、大学在学中は青山学院大学の7年ぶりの東都一部リーグ昇格に貢献する。
2021年よりワタナベエンターテインメントに所属。1年間のレッスンを経て、2022年4月にTXドラマ『しろめし修行僧』で俳優デビューを果たす。主な出演作は、MBS『闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん』、LINE VISION『改札で止まっちゃったら』、NHKBSプレミアム『定年退食』、WOWOW『ドラフトキング』、EX『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』、映画『沈黙の艦隊』、『うかうかと終焉』など。
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