廣野凌大

廣野凌大、はみ出し者に救いを求める人のために頑張る 型破りな魅力で模索する自身の存在意義

2023.10.06 18:00
廣野凌大

舞台「ナナシ-第七特別死因処理課-」が10月27日(金)〜11月5日(日)に東京・天王洲 銀河劇場にて上演される。DMM TVで配信中の同名オリジナルドラマでは、特殊な死因を担当するポンコツ死神たちが集う「第七特別死因処理課」(通称・ナナシ)の奇妙な日常が描かれたが、本作はその前日譚としてナナシ立ち上げの物語となる。舞台版から新たに登場する天使・ダラク監察官役で出演する廣野凌大にインタビューを行った。「口が悪くて気性が荒い天使」を演じ、自身も型破りな存在感をまとっている彼だが、今の在り方に至るまでには葛藤もあったという。

「ナナシ」はエンタメながら人生を考える作品

──舞台「ナナシ-第七特別死因処理課-」に出演が決まったときはどう思いましたか?

みんながドラマをやっているのはうっすら知っていたので、「あ、それに出るんですか、あざす!」って感じでした。

──うっすら知っていたとのことですが、どのような印象を持っていましたか?

内容はまったく知らなくて。今回、舞台のプロットを読んで始めて「落ちこぼれの死神の話なのね」と知りました。だから僕も死神役なのかなと思ったら……めちゃめちゃ天使でした(笑)。

──プロットを読まれて、今作のストーリーにはどういった印象を持ちましたか?

人の死に関わるという点で、センシティブでありながらも、人間として避けられない題材でもある。あくまでエンタメでありつつ、その中で自分たちの人生を考えることもできる。そこは攻めた作品だなと思いました。あと、今回の舞台ではドラマの前の話が描かれるので、齟齬や矛盾が生まれないように演じたいなと思っています。

はみ出した存在に救いを求めている人のために頑張る

──先ほどお話にあった通り、廣野さんは舞台で始めて登場する“天使”である、ダラク監察官を演じます。どういった役どころになりそうか、現時点でわかっていることを教えてください。

別の現場で脚本の亀田真二郎さんにお会いしたときに「俺が見たい廣野凌大を詰め込んだ」と言ってもらいました。亀田さん、僕の大ファンなんですよ。そんな亀田さんいわく、ダラク監察官は「口が悪くて気性が荒い」という役らしいんですけど、ミルクを飲むと落ち着くそうです。そのギャップみたいなところは、ちょっと僕とも似ているのかなと思います。

──どのように演じるかの構想は現時点で何かありますか?

亀田さんが言ってくれたように、僕らしくいるのが一番だなとは思うんですが、あくまでも僕ではなくてキャラクター。自分とは違うけど、自分の要素もあるみたいな、いい塩梅を狙えたらと。自分とはまた違うオラオラした感じを出せるように頑張ろうと思っています。今回はただのヤンキーじゃないんでね。エリート天使ヤンキーなんで(笑)。

──亀田さんは廣野さんの大ファンだとのことですが、よく言われるのでしょうか?

はい。いつもSNSとかを見て「痛快だね」「気持ちいい」って言ってくれます。SNSではアグレッシブというか、「これ言ってもいいのかな」と一瞬ためらうようなことを、自分で咀嚼してハッキリ言っちゃうので。そこが亀田さんも好きでいてくれるところなのかなと思います。

──先日はX(旧Twitter)で突然ファンの方にプレゼント企画を行なって話題にもなりましたね。

パチンコで勝たせてもらったやつですよね。あれ、ちゃんと当たった5人に欲しいものをプレゼントしたんですよ。ちゃんと買って送ったということを書いておいてください! 自分から言うと嫌味になっちゃうと思って言えなかったので。

──しっかり書いておきます。SNSでの使い方も含めて、廣野さんは若手俳優の中でも独自のポジションを築かれていると感じますが、自己プロデュースで意識していることはありますか?

いろいろな役者さんを見ていて面白いなと思う人はたくさんいるんですけど、みんな決められた範囲内で頑張っている感じがしていて。その枠から出ている人ってあんまりいない。だけどそこからはみ出した存在に救いを求めている人もいると思うんですよね。だから僕はそっちの人のために頑張ろうかなとずっと思っています。言ってしまえば、王子様は荒牧慶彦くんがいるわけですよ。僕はそこじゃない。だから自分の武器を使っていこうかなと思ったら、いつのまにか今みたいな立ち位置になっていました。僕、作り込んでもボロが出ちゃうんです。顔にも態度にも出る。だったら正直にいようかなって。コロナ禍で、もうこの仕事を辞めようかなと思ったタイミングがあって。そのときに吹っ切れた。そしたら仕事ももらえるようになったし、自分も楽になったし、よかったなと思います。

他人の価値観に触れられることが俳優業の楽しさ

──コロナ禍で役者を辞めようと思ったことがあるということですが、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stageに出演が決まって、俳優を続けることを選ばれました。そんな今の廣野さんが思う役者という仕事の魅力とは何ですか?

他人の価値観に触れられること。自分が他の人物を演じるのはもちろん、仲のいいやつが他の人物を演じることでも、いろいろな人格を見ることができるし、スタッフさんとの出会いもそう。いろいろな人が関わっている仕事だし、作品ごとに会う人が変わる中で、自分の価値観も変わるし、視野も広がる。役者って1ヶ月会わないだけで全然違う人間になるんですよね。自分もそう。それが楽しいなと思います。

──ご自身が今まで演じてきた役や作品の中で。特にご自身に影響を与えたものを挙げるなら?

波羅夷空却(『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage)とエドワード・エルリック(舞台『鋼の錬金術師』)ですね。といってもキャラクターのおかげというよりも、周りからの影響ですかね。そもそもキャラクターを作るのは自分じゃなくて周りだと思って演じているんです。自分は周りが作ってくれた世界で、それとして生きるだけ。

──ではカンパニーや役を通じての出会いによって、廣野さんに大きな影響を与えた2役ということになると思いますが、具体的に波羅夷空却とエドワード・エルリックからどのようなものを得たのかを教えていただけますか?

まずハガレンに関しては、石丸さち子さん(脚本・演出)と出会ったことで、演劇に対する考え方が変わりました。それまではもうちょっとちゃらんぽらんだったんですよ。「うん」というセリフ1つにしても、「うん」なのか「うーん」なのか、みたいなことしか考えていなかったけど、“何でここで「うん」と言ったのか?”から考えるようになった。繊細なシーンが多かったのもあって、セリフの大事さ、「何でここで、それを言うのか」を考えながら演じるようになりました。

──波羅夷空却については?

空却は、自分の役者人生にもう一度火をつけてくれた役。コロナ禍で役者を辞めようと思って最後に受けたオーディションがヒプステで、実際に空却を演じてみたら、ヒプノシスマイクというコンテンツ自体を好きでいるファンの方の熱さのおかげもあって、空却と一緒に自分の評判もあげてもらえた。そういう意味で、空却にもナゴヤ・ディビジョンにもめちゃくちゃ感謝しています。いろいろな人にも出会わせてもらったし、本当にいろいろな感情をもらった役なので、特に大事にしている役かもしれないですね。もちろん全部の役を大事にしていますけど。

2.5次元舞台も、そうでない舞台も一緒

──廣野さんは本作のような原作のない舞台と、原作のあるいわゆる2.5次元作品、どちらも出演されていますが、それぞれの演じる面白さはどのように感じていますか?

どっちも一緒です。結局、自分とは違う人物を演じているので。原作があるものだとしても、結局やっていることはそのキャラクターの感情のままに動いているだけ。それぞれ「えー、2.5!?」とか「えー、ストレート!?」とか言うやついますけど、結局2.5で下手なやつはストレートでも下手だし、ストレートで下手な奴は2.5でも下手ですしね(笑)。そういうこと言うやつからの挑戦はいつでもお待ちしてます! 書いておいてください! 最近はその垣根も少しずつなくなってきてますけど、もうちょっと僕は僕なりの戦い方でその垣根をなくしていけたらなということも思っています。僕からしたらどっちも面白いので。

──現在、25歳の廣野さんですが、30歳や30代への展望みたいなものはご自身の中でありますか?

全くないですね。お金持ちになっていたい。30歳くらいになったらもう表に出なくていいかなと思っているので、そこまで頑張って、あとは若手を育てられればいいなと。だから30代までに、説得力を作っていきたい。役者だったら「これで主演したし、評判もいいまま辞めたよ」、音楽だったら「これくらいに会場でライブをやって、世界でこれくらい聴かれた」と言えるような説得力。それを持って後世を育てたい。そのためにお金持ちになりたい。

──とはいえ、30代の廣野さんのお芝居も観たいという声も多いと思いますが。

いや〜、この仕事、苦しいですもん。お客さんと解釈が違って、その違いにイラっとすることもありますし。

──逆に言うと、苦しくても続けている理由は何なのでしょうか?

脳から汁が止まらないときがあるんですよ。キャラクターと自分と、稽古での苦労とかが全部カチッとハマったとき、めちゃくちゃ気持ちいいんです。芝居だけじゃなくて音楽でステージに立っているときも一緒。そのアドレナリンの出方がたまんない。ステージにはそういう魅力があります。そのときだけ、解釈の違いでお客さんにイラっとしたこととか、アンチからの言葉とかにも「ありがとう」と思います。

──コロナ禍で一度は辞めようと思った俳優ですが、辞めなくてよかったですか?

いや、どうなんすかね。

──そこはわからない?

うん、わかんないっす。だから今もやっているのかもしれないですね。ずっと自分の存在意義みたいなものを探しています。俳優業と音楽活動をやりながら「自分はどこに行くんだろう」って自分でもずっと思っているし。今回の「ナナシ」でもまたそれを模索するんだろうなと思います。

■取材・文/小林千絵

撮影/梁瀬玉実

スタイリスト/MASAYA (PLY) 

ヘアメイク/瀬戸口清香

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