死刑囚のイラスト展示に若者殺到、獄中作品から見えた秋葉原事件・加藤智大元死刑囚の心境の変遷
格差・貧困問題に取り組み、メディアで積極的に発言をしている作家・雨宮処凛が、バンドやアイドルなどを愛でたり応援したりする“推し活”について深堀りするコラムシリーズ。4回目のテーマは、死刑囚と「推し活」。なぜこのようなテーマに至ったか、きっかけは2005年に始まった、死刑囚の絵画や文章が展示される「死刑囚表現展」だった。彼らは獄中の中で一体どんな作品を制作しているのか? 生でそれらの作品を見て、作家・雨宮は衝撃を受けたという(前後編の前編)。文・雨宮処凛
「絞首刑かかって来いや/首に食い込む錆びたワイヤー/迎えられないニューイヤー/後はよろしく葬儀屋」
これは秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大が、2018年の「死刑囚表現展」に応募した「人生ファイナルラップ」の一部だ。自らの人生を幼少期から振り返るようなラップは、以下のような言葉で終わる。
「残り人生あと何周? /裁判所で決する雌雄/二度殺される死刑囚/それを喜ぶ一般大衆」
そんな加藤の死刑は、22年7月26日に執行された。享年39。あまりにも凄惨な事件から14年後のことだった。
今回取り上げるのは、死刑囚。それのどこが推し活と関係あるのか? それはおいおい判明するが、死刑囚は誰にとっても遠い存在だろう。が、そんな死刑囚はいつからか私の人生にある種の実感を持って存在するようになっていた。
最初は十数年前、ある死刑囚から文通をお願いされたこと。確定死刑囚は基本的に家族や弁護士以外と面会も文通もできないのだが、特別に許可されることもあるらしい。人づてにその枠で文通してもらえないか聞かれ、事件や当人についてまったく知らぬままOKした。
その人は、私の文章を読んだことで文通したいと思ったようだった。結局、法務省なのか拘置所長なのか、どこかの許可が下りなかったようで文通は実現しなかったものの、「死刑囚からのコンタクト」は私に大きな印象を残した。そしてそれ以降、死刑執行のニュースがあるたびに、まずはその人じゃないかどうかを確認するようになった。現時点で、彼の死刑は執行されていない。
もうひとつは、取材を続けた事件の被告が死刑囚になるケースが続いたこと。
具体的には加藤智大、そして相模原障害者施設殺傷事件の植松聖。両事件とも裁判を傍聴し、植松に至っては裁判中に面会もし、傍聴の記録は『相模原事件裁判傍聴記 「役に立ちたい」と障害者ヘイトのあいだ』にまとめた。
さらに付け加えるなら、私の物書きの「師匠」的な存在も大きい。それは作家の見沢知廉。彼は82年にスパイ粛清事件で懲役12年の判決を受け、獄中である文学賞を受賞して出所とともに作家デビュー。97年に出版した小説『調律の帝国』は三島賞候補にもなったのだが、05年、マンションから飛び降りて亡くなっている。
そんな彼の晩年は、「殺人犯」という汚名をそそぐために文学賞に固執し、その中で心身ともに「壊れて」いったようなところがあった。ちなみに彼が獄中生活で心の支えにしていたのは、永山則夫。
68年、19歳で4人を殺害し、「連続射殺魔」と言われた死刑囚だ。裁判の過程で凄まじい貧困と虐待に晒された半生が明らかになり、獄中から『無知の涙』を出版。大きな反響を呼び、小説『木橋』は新日本文学賞を受賞。20代で獄の人となり、小説家になることを目指していた見沢氏にとって、永山則夫は眩しい存在だったようである。
そんな永山則夫の死刑は97年、執行。当時、見沢さんはすでに作家として活躍していたのだが、その際の落ち込みよう、取り乱しようは見ていられないほどだった。
もちろん、死刑囚ということは殺人を犯している。しかも複数人の命を奪っている。どのような理由があれ、それは決して許されないことであることは強調しておきたい。
一方で、この国の殺人事件の約半数は親族間で起きていることも付け加えておきたい。死刑反対などの運動に対して「遺族の気持ちを考えろ」という言葉がよく投げかけられるが、この国には、被害者遺族でありながら加害者家族という人々が多く存在するのだ。
今回紹介したいのは、そんな死刑囚の絵画や文章を展示する「死刑囚表現展」。
その名の通り、死刑囚らが絵画やイラスト、俳句、短歌、詩などで自らを表現するものである。2005年に始まり、これまで18回開催されてきた。
始まったきっかけは、ある死刑囚の母親の死。表現展立ち上げに関わった評論家の太田昌国さんは言う。
「『東アジア反日武装戦線 狼』の大道寺将司(17年に獄死)の母親が04年に亡くなったんですが、その時に一定のお金が残されていて、そのお金を死刑囚に使おうということになりました」
まずは再審請求したくてもお金がなくてできないという死刑囚への援助。そしてもうひとつが「死刑囚表現展」だ。
死刑を求刑された人々に、表現展の案内を送り、応募を呼びかける。この18年で60人くらいが作品を送ってきたという。そんな中からすでに25人ほどが死刑が執行されたか、あるいは病死したかで命を落としている。
「今、日本の確定死刑囚は107人ですが、今年は20人の死刑囚から応募があったので、死刑囚の20%弱ですね」
この数年、私は死刑囚表現展が開催されるたびに参加し、死刑囚の絵画やイラストを見てきた。驚かされるのは展覧会に来る若者の多さだ。特に相模原事件の植松が応募し始めた21年から注目度がぐっと上がった。また、昨年は加藤智大のイラストが81点、展示。7月に死刑が執行されたことで、10月の表現展には図らずも「遺作」が展示されることとなり、3日間で3500人ほどが訪れたという。
「人の命を奪って何が死刑囚の表現だ」。表現展はそう批判されることも当然ある。が、太田さんは応募してくる作品から、加藤の変化を見抜いてきた。
加藤が応募を始めたのは、死刑が確定した15年から。以降、毎年応募してきたのだが、初期の作品は人を食ったようなものが多かったという。例えば細かいマス目に数字を書き、その数字通りにマスを埋めていくとイラストが浮かび上がるという、「見る側を試す」ような作品。
「解けるものなら解いてみろっていう挑戦的な感じの作品が多かった。選考委員に対する批評も厳しかったし、常に斜めに構えてる感じでしたね」
が、20年頃から加藤に変化が見られるようになったという。以下、加藤が20年に寄せた短歌だ。
差し入れの現金深く感謝する 外の暮らしも大変だろうに職員の口には出せぬ親切を 目から読み取り頭を下げる全国に点在したる支援者を 巻き込まぬようもうテロはせぬ
太田さんは言う。
「これまで他者との接触を拒否してたし、自ら敵を作りだすような作品が多かったのに、看守や差し入れしてくれる人への感謝の気持ちを出すようになったんです」
また、この頃から表現展に応募する文章で、他の死刑囚との交流を求めるような言葉が出てくる。例えば21年に応募した「お弁当(抄)」という文章では、他の死刑囚の作品についての賛辞が多く見られる。また、ある死刑囚について、過去のイラストで彼が初音ミクの髪を赤く塗ったことに対して「衝撃的でした」と感想を述べている。加藤の中にほとばしるようなコミュニケーション欲が芽生えているのがよくわかる文章だ。
このように、ここ数年、頑なに閉じていた心を少しずつ開いていたように思える加藤。しかし、変化が見えた矢先、死刑は執行された。
もちろん、私が遺族だったらそんな微細な変化などどうでもよく、とにかく殺された家族を返せと叫ぶだろう。が、加藤がどう変化し、どう事件と向き合うのか、そこでどんな言葉を発するのか、聞けるものなら聞きたかったという思いがあるのも事実だ。
ここまで読んできて、「初音ミク」というキーワードに「え?」と思った人もいるだろう。
(後編へつづく)
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