BreakingDowon KOREA構想も、秋山成勲「人は失敗する、セカンドチャンスはあった方がいい」

BreakingDownは不良の格闘技大会というより、「道を踏み外した者へのセカンドチャンス」というコンセプトが根底には存在する。秋山自身、桜庭和志との“ヌルヌル騒動”で世間からのすさまじいバッシングを浴びた過去を持つだけに、この点に対して思うことは多いようだ。日韓対抗戦「第2章」以降のビジョンも含め、格闘技に懸ける熱い思いを洗いざらい語ってもらった。

──BreakingDownには「道を踏み外した者に復活の機会を与える」という側面もあります。秋山選手自身も桜庭和志選手との一戦後、一時は世の中から壮絶なバッシングを浴びました。そこから這い上がっていく過程で感じたことはありますか？

秋山　「一時は」というより、「今も」バッシングは絶えないですけどね（苦笑）。それはさておき、人間は誰でも失敗するし、嘘もつくことがあると思うんです。一番問われてくるのは、「そこからどうするか？」ということなんですよね。もちろん最終的には本人のやる気次第だし、成功するかそのまま沈むかというのは運も関わってくるでしょう。でも、社会がチャンスを与える場所は絶対にあったほうがいいと個人的には考えています。

──特に日本社会は一度ミスを犯した者には手厳しい傾向がありますよね。

秋山　う～ん……でも、たとえば韓国では一度失敗した人が再起するのは日本以上に厳しい面がある気もしますね。程度の差こそあれ、アメリカだって名誉回復するのは大変なはずですし。そのへんは万国共通じゃないかな。いずれにせよ、もう一度這い上がってやるんだと頑張っている人がいるのなら、手を差し伸べるのは人間として自然な気が私はするのですが。

──BreakingDownは非常に賛否両論の激しいコンテンツです。秋山選手自身は、そのことについてどのように捉えていますか？

秋山　「子供に見せる内容ではない」とか「あんなものは格闘技ではない」といった否定的な意見があるのは、もちろん耳に入っています。でも結論から言うと、私は全然アリだと考えていますね。なぜなら格闘技の裾野を広げているから。そういう点で、すごく可能性を感じています。

──裾野を広げるとは？

秋山　たとえばサッカーを考えてみてほしいんですよ。サッカーは世界中でプレーされるスポーツですけど、ワールドカップとかオリンピックで観る試合だけがすべてじゃないですよね。お金がない国の子供たちは、適当な公園とか空き地でゴールを手作りしながら、それでも無邪気に裸足でサッカーを楽しんでいるかもしれない。実はそこが大事なんです。

──たしかに野球の三角ベースも同じような面はあるかもしれません。

秋山　そうそう。だからBreakingDownに対して「MMAルールとは違う。キックとも違う」みたいな批判をするのは完全にナンセンス。違うからこそ、可能性があるわけでね。たしかにBreakingDownには元犯罪者や不良も出てきますけど、そこを言い出したらキリがないじゃないですか。たとえば「ヤクザが出てくる映画を観たら、殺人者になるかもしれない」と言いだすのと一緒で。それくらいの分別は小学生だってついていますよ。──とはいえ、批判的な声は一般人からだけでなく、選手やジム関係者からも上がっています。

秋山　まぁねぇ……憤る気持ちも理解できる部分はあるんです。BreakingDown出場者のほうが、コツコツ真面目に格闘技に取り組んでいる選手よりも有名だったりしますから。試合するたびに3万とか5万とかのファイトマネーで闘っている選手からすると、「なんでだよ！」って話になるじゃないですか。スポンサーからもらっているお金とかも、BreakingDown出場者のほうがはるかに高いでしょうしね。でも結局、それってジェラシーですよ。BreakingDownに出ている人は、それぞれ注目されるだけのストーリーを持っているし、彼らなりに1分間の闘いに全力を懸けている。アスリート目線で「そんなものは練習じゃない」とか「ルールがおかしい」とか言うのは簡単だけど、彼らの頑張りに対して賞賛する余裕があってもいいと思いますけどね。

──BreakingDownが格闘技の歴史の中でも新しいことをやっているのは間違いないと思います。秋山選手自身は、朝倉末来選手のことをどう評価していますか？

秋山　今までいなかったタイプの選手ですよね。格闘技の歴史上、様々なスター選手が現れてきましたが、似たような例がまったく見当たらないです。とにかく頭が切れるし、自分の芯もしっかり持っている。周りに流されない。新しいことを生み出す発想とパワーがある。彼抜きではBreakingDownなんて存在もしなかったでしょうしね。

──BreakingDown8で大いに盛り上がった日韓対抗戦。今後のビジョンは？

秋山　おかげさまで前大会に出場した韓国人選手は日本で人気になり、すでにいろんなところからオファーがあるんですよ。今後に関しては、「BreakingDown Korea」を作ろうかと動いています。

──それは韓国国内向けに配信したり興行を打ったりするということですか？

秋山　そうなります。今、朝倉末来くんがやっているような役割を、私が韓国でやるということですね。そしてチーム・コリアを再構築して、「今度は日本の選手が韓国に来いよ」と再び日韓戦を行う。しかも話はそこで終わりではなく、その次は日韓連合を作って世界の強豪と闘っていきたい。

──話を伺っているだけで、ワクワクしてきますね！

秋山　今はまだ準備段階ではありますが、BreakingDown8の日韓戦を韓国語にしてYouTubeにアップしたところ、すでに結構な反響が届いている。この調子でオーディションを開催し、世の中を巻き込んでいけたらなと思っています。もともと韓国人が熱狂しそうなコンテンツではありますしね。やっぱり私も格闘技界に貢献したいという気持ちがあるし、日本と韓国、両方の格闘技を発展させていきたいんですよ。そのためにも地に足をつけて、しっかりこの任務を全うしていきたいと思います！