

原作者・柚月裕子先生が語る誕生秘話「じゃあ聞くがのう、『孤狼の血』たぁなんじゃ?」
『孤狼の血 LEVE2』のコミカライズ第2巻が8月19日に発売された。今回はそれを記念して原作小説『孤狼の血』を書いた柚月裕子先生に話を聞いた。岩手生まれで現在は山形在住、子育てが一段落してから小説家を志し、二人の子供の独立後は、二匹の猫を可愛がる穏やかな生活。マル暴ともヤクザとも広島とも接点の無さそうな先生からいかにしてあの男臭さに満ちた世界が生まれてきたのか──。
──『孤狼の血』は現在、映画、漫画とメディアミックスされてどんどん世界が広がっています。今回は、その元である小説がどうやって生まれたのか、からお聞きしたいのですが。
柚月 最初のご依頼は、『小説 野生時代』(KADOKAWA)で警察小説特集があって、それを皮切りに連載をお願いできないかというものだったんです。その警察小説特集に一緒に掲載されるのが、今野敏さん、堂場瞬一さんという警察小説の大家の方々で。なんとか印象に残る作品を作りたいと思った時に、私みたいなひよっこが真っ向勝負しても無理だろうと。じゃあ、変化球で悪徳警官を主人公にしようと。正義だけど裏の正義、その相手は誰になるかと考えたときやはり暴力団だろうと。
──物腰も柔らかく穏やかな印象の先生から暴力団という発想が出てくるのが意外です。
柚月 私はもともと映画で言うと『ゴッドファーザー』や『仁義なき戦い』が好きだったんです。だからその好きな『仁義』のような世界を文章で書いてみたいと。ただ、それを担当編集さんに伝えたら苦い顔をされたんですけど(笑)。そういう小説は売れ線ではありませんでしたし、書くのも楽じゃないですよと。
──ちなみに先生が『仁義なき戦い』をご覧になったのはいつ頃のことですか?
柚月 デビューして少し経ったぐらいですね。子供の頃ではないです。
──では子供の頃から男っぽいものやアウトローに興味や憧れがあったわけではない?
柚月 ……ありましたね(笑)。ブルース・リーや渡瀬恒彦さんが好きでしたし、子供の頃に観て印象に残っているのは『麻雀放浪記』ですから。これはいろんなところでお話しするんですが、私の世代で流行っていた漫画は『タッチ』だったんです。クラスのみんながそれを回し読みしていたんですけど、私には眩しすぎて(笑)。ファンタジーだなと思って入り込めない。当時、私がすごく続きを楽しみに読んでいたのは楳図かずおさんの『漂流教室』。そういうところから周りと違いましたね。初恋の人は渡瀬恒彦さんで、『セーラー服と機関銃』も渡瀬さんを観に行っていましたから。当時、映画館には男性のお客さんがすごく多かったんです。今思えば、あの映画は多くの方が薬師丸ひろ子さんを観にいらしていた。渡瀬さんを観たくてお小遣いをためて通ったのは私ぐらいじゃないでしょうか(笑)。
──たしかにそうかもしれません(笑)。ちなみに『仁義なき戦い』以外の東映実録ものもご覧になっている?
柚月 もちろん。『北陸代理戦争』なんかすごく好きですね。凍てつく風がビュービュー吹きすさぶ中での人間関係が非常に面白い。あと『県警対組織暴力』。ラストの救いの無さが本当にリアルで好きですね。『タッチ』がファンタジーなら、リアルは『県警対組織暴力』。私はやっぱりこっちだなと。
──『県警対組織暴力』は悪徳警官と暴力団がタッグを組むという、まさに『孤狼の血』に近いものがあります。『孤狼の血』に話を戻すと、担当編集さんに苦い顔をされて、そこから執筆に至ったのは?
柚月 当時、その担当編集の方に、参考にどうぞと黒川博行さんの『疫病神』シリーズと『悪果』を渡されたんです。今思えば、これを読めば書くのがいかに難しいか分かるから「これを読んで諦めろ」というメッセージだったと思うんです。私は本を開いてそのメッセージに気づいたんです。だから、読まずに閉じました(笑)。それで読みましたと嘘をついて、「読んだけどどうしても書きたい」と伝えたんです。そこから打ち合わせがスタートしましたね。時代設定から相談して。もちろん黒川さんの小説は書き上げた後、読ませていただきました。──『孤狼の血』の一作目は昭和63年を舞台にしていますが、最初は違ったんですか?
柚月 最初のプロットでは、昭和20年代30年代の話だったんです。それこそ『仁義なき戦い』の世界と同じ、戦後の混沌とした時代ですね。
──それを昭和63年に変えたのはなぜでしょう?
柚月 あまりにも昔すぎると歴史モノになってしまう。ライターひとつ、マッチひとつ出すのでも一から調べる世界になってしまうと担当編集さんにご指摘いただきまして。あと、どうしたってやっぱり『仁義』がありますので。やっぱり作り手としては少しでも違うものにしたい。そうなった時に、まだ警察と暴力団が切った張ったをやる可能性があるのが、暴対法施行前。そのギリギリが63年という時代だったんです。
──執筆前には広島に何度も取材に行かれたとお聞きしました。
柚月 まずはその土地の雰囲気を確かめたかったんです。プロットの時点で広島を舞台にしていたんですけど、書く前に行って私が本当にイメージしている土地なのかを確かめたかった。取材では、原爆資料館とか広島ならではの場所も巡ったんです。資料館に行ったのは初めてだったんですが、原爆投下直後の広島がすごく生々しく再現されていました。でも、資料館を一歩出でると、そこには車が行き交っていて人々が笑っていて高層ビルが立っている。ああ、ここに来るまでにどれだけの人が泣いて、どれだけの人が辛い思いをしたんだろうと想像した時にこの土地は強いんだなと思ったんです。熱いパワーを持っている。私が作品の中で描きたい、何かのぶつかり合いとかパワーとか、それを表現するのはやっぱり広島なんだなと確信したんです。
──街のエネルギーを。
柚月 私は感じましたね。あと、その取材の前に東日本大震災があったんです。私は東北に住んでいるのでやっぱり直後も見ています。何もなく瓦礫だけの街。希望もなくこの先どうなるんだというその被災地が、原爆投下直後の広島と似ているなとも思ったんです。でも、広島はそこから復興して人々が笑って暮らしている。ああ、きっと東北も復興できるんじゃないか、そういう希望が見えた場所でもあったんです。そういう意味でも、ものすごく熱いものを表現できるなと思って広島にしたんです。
──パワーという言葉が出ましたが、『孤狼の血』を読むと、まずそのパワーに圧倒されます。
柚月 本当に疲れますよね(笑)。
──レビューで多く人が書いていますが、読み始めたら止まらない。ただ、書いている先生の方も執筆時、あのパワーに当てられているんじゃないかと思ったんですが。
柚月 よく言われるんです。普段も「なんとかじゃけええんじゃ!」とか言っているんじゃないかと。その度に私は「大丈夫、怖くありません」と言っています。
──飼っている猫に餌をあげたり、料理したりという普通の生活に影響はなかったですか?
柚月 「今日は飯抜きじゃ!」「ミンチ持ってこい、生きのいいのをじゃ!」って? ありません(笑)。もちろん執筆中は、頭の中ではずっと日岡や大上を次どうしようっていうのは考えていますけど。私自身の生活は執筆中も猫を触って、フライパンを振って、お茶を飲んで、っていう物静かな感じですよ。
※インタビューの完全版は漫画『孤狼の血 LEVE2』の巻末に掲載されています。

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