松尾諭、草なぎ剛の演技に驚嘆「すごいのは知っていますけど『こんなことも出来るんや！』って」＜拾われた男＞

2022.08.21 11:15

俳優志望の男・松戸諭(仲野太賀)が、他人に拾われ続けることで夢と恋をつかんでいく様を描いたドラマ「拾われた男」。その原作となるエッセーを手掛け、ドラマにも出演しているのが、近年“バイプレーヤー俳優”としてさまざまな映画やドラマで存在感を示し、確固たる地位を築く松尾諭だ。このほど松尾にインタビューを行い、自身の著書が映像化されたことについてや原作者から見たドラマの印象、仲野らキャストのことなどを聞いた。

松尾が自らの波乱万丈なサクセスストーリーを書いた同名エッセーを映像化したヒューマンドラマである本作。ドラマでは、主人公・諭を仲野、諭の兄・武志役を草なぎ剛、諭の運命の女性である結役を伊藤沙莉が務める他、薬師丸ひろ子、鈴木杏、北村有起哉、要潤、夏帆や、本人役で井川遥、柄本明らが出演している。

ウォルト・ディズニー・ジャパンとNHKエンタープライズの共同制作で、ディズニープラス向けのコンテンツとして日本国内の制作会社との初の共同制作作品。NHK BSプレミアム(毎週日曜夜10:00-10:45)での放送の他、ディズニープラスのコンテンツブランド「スター」で見放題独占配信(毎週日曜夜11時配信)中だ。

原作が僕じゃなかったら良かったのに…

――ご自身のエッセーが映像化されて、「拾われた男」というドラマになりました。松尾さんも出演されていますが、客観的に見た感想から教えてください。

びっくりするくらい面白かったです。僕が「面白いです」っていうと宣伝だと受け取られる感じになってしまいますけど、映像化してもらったのを見た素直な感想は「面白いなぁ」でした。原作が僕じゃなかったら良かったのに…って思いますね。そしたら「これ、面白いですよ」ってもっと言えたのに(笑)。

――ストーリーも面白いですし、序盤から豪華キャストが続々登場したりして、SNSでも反響が大きいですよね。

ありがたいです。放送が始まった頃、渋谷で広告ジャックしたとか、そういうのも話題にしていただいて、そういう反響も届いています。ドラマ化されてディズニープラスとNHK BSプレミアムで放送・配信されるってすごい話じゃないですか。周りの反響としては、みんな「何で？」って感じですね(笑)。

でも、「何で？」がきっかけでドラマを見てくださって感想まで送ってくれた先輩もいますし、いろんな人に見ていただけているのはうれしいです。あと、妻が家でずっと見ているんですよ。それもありがたいんですけど、気付いたらテレビで「拾われた男」が流れてるので、自然と僕も何回も見ています(笑)。

押し付けがましくならないようにしようと

――原作を書く時、どういうテーマで書こうというプランは最初からあったんですか？

連載をしていたので、書きながら次のエピソードを考えつつ、「この話は書けるかな」とか「この話は面白いかな？」とか、書こうと思えばどんな話も書けるわけです。よく「波乱万丈な人生ですね」とか「よくあんなに書くことがありますね」って言われますけど、たぶん誰しもエピソードがたくさんあると思うんです。

「いやいや、僕なんてつまんない人生なんで」っていう人も、意外と口を開いてみたら面白いエピソードが飛び出したりしますから。僕の場合、そんなにすごくないエピソードも面白おかしく言ってるから、楽しく読んでいただいているところはあるので、「これ面白いでしょう！」とか、押し付けがましくならないようにしようとは思っていました。

「太賀くん、すごいなぁ」って感じですよ

――松尾さんから見た仲野太賀さんが演じる“松戸諭”はどんな印象ですか？

僕を演じるからって僕に似せる必要はないと思っていましたし、太賀くんが演じるって聞いた時に、彼の演技は僕もすごく好きなので、また全然違った風になるんじゃないかなって楽しみでした。でも、出来上がりを見て、みんなに「松尾さんみたい」って言われるからすごいなって(笑)。

――確かに、松“戸”諭ではありますけど、そこに松尾さんが重なって見えたりします。

普段、太賀くんの芝居を見て、「俺みたい」って思うことはないんです。そもそも自分みたいっていうのも分かってないんですけど、「この笑い方とか、まっちゃんソックリだよ」って言われて、「そんな笑い方するかな？」って。自分では分からないちょっとした所作が、僕みたいかどうかは置いといて、めちゃくちゃ面白いから「太賀くん、すごいなぁ」って感じですよ。

――仲野さんにとって松戸諭がハマり役ですね。

他のキャストの方々もみんな太賀くんのことがすごく好きで、「やっていて楽しかった」って、薬師丸ひろ子さんも井川遥さんも大絶賛されていました。そういう部分ではちょっと嫉妬しています。ありがたいけど、うらやましいなぁ、俺も褒められたいなぁって(笑)。

――そして共演経験もある草なぎさんがお兄さん役。

舞台を2本一緒にやらせてもらって、どちらも兄弟みたいな関係性の役だったんです。剛さんも言っていましたけど、僕も運命的なものを感じました。しかも、「拾われた男」の剛さんがすごく良くて、僕が知っている以上の剛さんがそこにいました。

もちろん、これまでの剛さんもすごいのは知っていますけど、「こんなことも出来るんや！」って。太賀くんがアメリカでの撮影を終えて帰国した時の第一声が「草なぎさんがすごかった」でした。剛さんにその後で話を聞いたら「太賀くんって本当に良いよ」って言っていて、相思相愛な感じが伝わってきて、それを聞いた時に2人のシーンがより楽しみになりました。

後半は物語のトーンが変わってくるので、前半とは違った楽しみ方をしてもらえるんじゃないかなって思います。

沙莉がね、ちょっとかわいいんです

――伊藤さんもいろんな作品でいろんな役を演じられていますが、このドラマでも“比嘉結”としてしっかりとキャラが立っていますね。

すごいですよね。初登場シーンからガッサガサの声で存在感があって(笑)。太賀くんは求心力があるのか、太賀くんと沙莉の2人のシーンを見に行った時、2人のコンビ感がすごく良くて、もちろんどちらも個々として素晴らしい役者さんなんですけど、そのシーンの雰囲気が「うわぁ、すごくいい！」って思ったんです。

沙莉がね、ちょっとかわいいんです。語弊がありますけど(笑)。昔からよく知ってるし、沙莉のことをそういうふうに見たことがなかったので、すごく面白い女優さんっていうイメージだったのが、「拾われた男」を見ていると「あれ？　沙莉かわいいな」って思えて。僕の妻がモデルの役なので、そのフィルターを通して、妻もかわいく見えました(笑)。

――「航空券を拾う」というところから始まる物語ですが、それ以降、何か運命的な出来事は？

それで言うと、きっと運命的なことっていっぱいあるんですよね。自分がどこまで意識しているか、ですけど。でも、その中で大きな出来事は、妻と出会ったことですね。

――そういえば、2冊目の本を書いているというのを風のうわさで聞きましたが。

(周りをキョロキョロしながら)何で知ってるんですか！(笑)

――進捗状況は？

えっと、そうですね。3歩進んで5歩下がる…。もうスタートラインより下がってるかもしれないです(笑)。ビギナーズラックってあるじゃないですか。それと、演劇業界でも、2回目の公演はだいたい悪くなるっていう「二落ち」って言う言葉があるように、2冊目はなかなか難しいです(笑)。

――では、最後に後半に向けての見どころを含めて読者の方にメッセージをお願いします。

自分が原作者で、ドラマにも出ているんですけど、こんなに面白いドラマはなかなかないと思っています。ディズニープラスなのでこれから世界配信もされて、海外の方が見ても面白いって思ってもらえるんじゃないかなって思います。自信を持って送り出せるドラマにしていただいたのが本当にうれしいです。

第7話からは人間ドラマの要素が強くなっていきます。特に後半の見どころは、前半と比べてトーンがちょっと変わるんですけど、太賀くんと剛さんの2人のお芝居ですね。ぜひ最後まで楽しんでいただければと思います。

◆取材・文＝田中隆信

※草なぎ剛の「なぎ」は、弓へんに前の旧字体その下に刀が正式表記