【ユニコーンに乗って】永野芽郁の演技も霞む、スタートアップIT企業の「リアリティ欠如」
この調子では作中に描かれているような「今どきの若者」たちが、真っ先に離脱してしまうのかもしれない。
7月19日に第3話が放送される永野芽郁の主演ドラマ「ユニコーンに乗って」(TBS系)。7月12日放送の第2話では視聴率が、初回から0.4ポイント減の8.3%に後退していたことが分かった。
主役でスタートアップ企業CEOの成川佐奈を演じる永野は、いま最も旬な若手女優の一人。昨年7月期のドラマ「ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜」(日本テレビ系)は、東京五輪と被った第4話の8.9%を例外として、全話で二桁視聴率を達成する人気ぶりだった。
それが今回は二桁どころか、むしろ数字を落としてしまう始末。心なしか永野の美しさも画面からあまり伝わってこないように感じられてしまう。そんな不調の陰には、令和の時代にふさわしいスタートアップ企業を舞台にしながらも、そのリアリティがほとんど伝わってこないという状況があるというのだ。
「今どきのIT企業で働いている人から見れば、佐奈が社長を務める『ドリームポニー』はちっとも今どきのスタートアップには見えないことでしょう。それらしいのはオフィスのセットだけで、その実態はまるで大学生が始めたばかりのベンチャー企業さながら。すでに創業から3年が経ち、数十万人のアクティブユーザーを抱える教育系アプリを運営するエドテック企業にはとても見えないのです」(IT系ライター)
本作では銀行の支店長から転職してきた小鳥智志(西島秀俊)が、IT企業のペーパーレス環境になかなか対応できない様子が描かれている。佐奈からのチャットを見落とし、約束の時間に遅れる場面は、今どきのITについていけないおじさんを象徴する場面だろう。
またパソコンの操作中に急に画面が固まり、大慌てするも、なぜかEscキーを押すだけで復旧するという謎の場面もあり、果たしてIT関連の考証はどうなっているのかと心配になってしまうほどだ。
「本作では銀行員を時代遅れの遺物に描いていますが、今どきの銀行ではフィンテックへの対応が生き残りへのキモとなっており、利用者はスマホアプリでなんでも済ませるように変化。そもそも銀行ならではの勘定系システムが操作できないことには仕事にならず、支店長クラスの人材がITにろくに対応できていないことなどありえません。もっともそこはドラマなので、佐奈たち新世代の若者と、小鳥のようなITに無縁な旧世代を対比させたいということなのでしょう」(前出・IT系ライター)
その狙いは分からないでもないが、やはりリアリティの欠如は否定しがたいところ。佐奈がアプリの宣伝という“案件”を、所属事務所を通すことなくインフルエンサーに直依頼するくだりも、現実を反映していないことは明らかだ。
そしてなによりもリアリティを感じさせないのが、ドリームポニーという会社の描かれ方にあるという。
「ドリームポニーはビルの2フロアを占めているはずなのに、開発や運営に関わっている社員は主要キャストの6人ほどだけ。佐奈が確認していた人事労務の画面でも、CEOの佐奈と新入社員の小鳥が同じページに表示されているなど、どれだけ小規模な会社なのかと呆れるほどです。それなのにベンチャーキャピタルを訪れた佐奈は2億円の投資を依頼していたのですから、一体何に使うのかと首をひねらざるを得ないですね」(前出・IT系ライター)
IT企業の業務拡大ではサーバーや通信環境の強化に資金が必要なほか、開発環境の強化も必須。通常ならエンジニアを大量に採用したり、外部ベンダーへの外注も日常茶飯事だ。
ところが本作では、アプリ開発のほとんどを佐奈の周りにいるスタッフだけで対応。新入社員で大学生エンジニアの森本海斗(坂東龍汰)がUIも3Dレンダリングも手掛け、エンジニアリングマネージャーで創業チームの一人である栗木次郎(前原滉)がテスト環境や実装の確認を行っているのである。
「本作の制作陣はそれこそメルカリやDeNA、GMOやサイバーエージェントといった今どきのIT企業を取材してないんじゃないでしょうか。実際のオフィスは旧来の企業とさほど変わらないほどに人口密度が高いですし、そもそも数十万人のユーザーを抱えるアプリを持つ企業なら社員も100人単位でいるのが当たり前です。それがまるで家内制手工業が如くの人数しかいないのは、リアリティ欠如にもほどがあるというもの。永野主演の『ハコヅメ』で警察署にどれほどの警察官がいたのか、思い出してほしいものですね」(前出・IT系ライター)
エドテック企業なら、ユーザー対応の部署にもかなりの人員を抱えているはず。次回以降はぜひ、そういった「IT企業のリアル」を見せてほしいものだ。
※トップ画像はドラマ「ユニコーンに乗って」公式インスタグラム(@unicorn_tbs)より。
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