大泉洋、“源頼朝の死”は「好きに受け取ってほしい」撮影裏話&小栗旬とのLINEのやり取り明かす<鎌倉殿の13人>
2022.07.03 21:00
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現在放送中の小栗旬が主演を務めるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(毎週日曜よる8時~)で、物語の前半最大の立役者・源頼朝を演じた大泉洋が同作脚本で理解できなかったことや“源頼朝の死”撮影裏話などを明かした。
小栗旬主演「鎌倉殿の13人」
2004年「新選組!」、2016年「真田丸」に続く3度目の大河脚本となる三谷幸喜氏が今回描くのは、鎌倉幕府二代将軍・源頼家を支えた家臣13人による権力のパワーゲーム。大河初主演となる小栗は、その中の1人で北条政子の弟・義時を演じている。大泉洋、三谷幸喜作品の面白さ語る「初めて自慢したくなるような」
― 今作に出演されて、改めて三谷作品の面白さをどういうところに感じていますか。大泉:毎回すばらしいんですけど、こんなことを言うと失礼かも知れませんが、三谷さんの円熟期の、集大成のような大河ドラマなのかなという気がします。海外のドラマなんかを見てると、やっぱりすごいじゃないですか。本当に面白いし、すごく重厚なものが多くて、どうしてもそこと比べてしまうと日本のテレビドラマというのはどこか成熟していないような気持ちがあって、「海外ドラマってすごいな」と思っていました。
でも今回の『鎌倉殿の13人』って初めて、本当に「日本にもこんなにすごいドラマがあるんだ!」って自慢したくなるような。僕は全部の大河ドラマを見てるわけじゃないし、全部のテレビドラマを見てるわけじゃないから、あくまで僕の個人的な感想だけど、そう思えるようなドラマですよね。
三谷さんが書いているので、単純な面白さ、笑いの要素もあるんだけど、笑いから“どシリアス”への振り幅がすごくて。よくファンの皆さんが「風邪引きそうだ」とか言っていますが、本当にそんな感じですよね。笑ってたところからこんなシリアスになっちゃうんだ、とかね。
僕なんか今でも第15回、もう本当にあれで日本中から嫌われましたけれども(笑)、やっぱりあんなにおもしろい回はないなと思いましたね。あのときも三谷さんからメールが来て「案の定、日本中を敵に回しましたね」ってひとこと目に書いてあって、最後に「でも僕は大好きです」って書いてあって(笑)。あきらかに面白がってますよね(笑)。
― 愛がありますね(笑)。
大泉:三谷さんの歪んだ愛が私をいつも襲ってます(笑)。
大泉洋、小栗旬とのLINEで手のひら返しくらう
― そんな頼朝ですが、完全な悪ではない部分があると思うんです。演じる上で「これだけは忘れずにいよう」と心がけたことはありますか。大泉:自分が演じる役ですから、皆さんが言うほど僕は嫌いじゃないです。彼がやってることはとても正しいというか。でも演じる上では、どこか孤独な人というか、ちょっと生い立ちが不幸だったなと思いますね。子どもの頃に家族を殺されて伊豆に流されてしまい、人をなかなか信用できないところがあるんだろうなと思う。
頼朝なりの愛情はいろんな人にあったとは思うんです。政子や子供たちだったり、義時や義経だったりへの愛情はもちろんある。ただ彼にとって一番大事なことって、自分のことや、自分の一族のことなんですよね。全ては自分の、源氏の一族が末代まで繁栄できるようにということしか考えていないんだと思うんです。もちろん兄弟は大事なんだけど、自分に取って代わる可能性が一番あるのも兄弟だったんですよね、あの時代は。
だからやっぱり義経にしても、範頼にしても、排除せざるを得ない。そこがまた彼が孤独で人を信じ切れない人だからこそなんでしょうけど。ただ、あの時代を見ると、兄弟を排除する、親を排除するというのが実はものすごく多いわけです。今回はそこが見事に描かれちゃってるから、頼朝さんはどうしても嫌われちゃうんだけど、「そんなのみんなそうじゃないか!」と私は思ったりもするんですけど(笑)。
― その孤独な頼朝が、義時については、どうして信頼に値すると思っていたんでしょうか。
大泉:頼朝は、直感的な判断で人を見ていたと思うんですよね。義時についてはもう会った途端から好きというか。小栗くんが演じている義時という人は、まじめだし、野心がない。そういうところを見ていたんじゃないですかね。結局義時は頼朝についていって、頼朝をずっと見てどんどん変わっていってしまうわけですよね。そこもまた「大泉のせい」って言われちゃうんだろうな(笑)。
― 頼朝から見ても、義時は「自分に似てきたな」と思うことはあったのでしょうか。
大泉:顕著になるのは頼朝が亡くなってからだとは思います。曽我兄弟の仇討ちの収め方とかも、義時ならではというか。そういう、とっても賢い人だっていうのを、頼朝は見抜いていたんじゃないですかね。でも「自分に似てきてるな」と思っていたかと言われると、僕はそう思って演じてはいなかった。
この『鎌倉殿の13人』って頼朝が死んでからが大事なお話というか。頼家の時代になってからが本番になる。だから当初、小栗くんとはLINEでよく「早く大泉死んでくれないと困る」とか「三谷さん頼朝を描きすぎた」とか言ってたんだけど、最近、僕が死んでからは相当厳しい決断が続いているらしくて、「いやぁ、頼朝さんは死ぬのが早すぎた」って手のひらを返された(笑)。頼朝がやってた厳しい決断を、今度は自分で下してるんだろうなと想像しているんだけど。
大泉洋、三谷幸喜脚本に理解できなかったこと「ここにその尺割きます?」
― さきほど自分と、自分の一族のことだけ考えているとおっしゃっていましたが、頼朝から見た頼家のかわいさはどんなところでしたか?大泉:実は頼家とのシーンは少なかったんだけど、「金子大地が演じているんだからかわいい」としか言いようがないんじゃないかな(笑)。同じ北海道出身ですし。頼家は巻狩りで獲物がとれなくてね。こっちが用意した動かない鹿ですら当たらないんだけど、それでも「いつか必ず自分で獲れるようになる」っていうところとかね、一生懸命でいいですよね。でもあのとき、「頼朝が死んだかもしれない」となってからの差配は的確でしたよね。
でもやっぱり自分は甘やかしちゃったんだろうなと思いますね。まだ頼家が万寿だったころ、万寿と金剛が顔を合わせたとき(第21回)からもうひどかったですもんね。頼朝が「万寿、金剛を大事にせよ」とか言っても思いっきり無視して「母上、庭で遊んで来てもいいですか」って、全然話聞いてないなって(笑)。口のきき方なども含めて、甘やかしてしまったんだなと。
― 第25回では頼家も妻と子がいながら別の女性を妻にしようとするシーンがありました。
大泉:女好きは思いっきり継いでますよね。それを「女好きは我が嫡男の証だ」なんて、あれはバカなシーンでしたね。「頼もしいぞ」とか言って、バカだなと(笑)。なぜ三谷さんはここまで頼朝をダメに描くんだろう。厳しい決断を政治家として下していくのはいい。だけど本当に幸せそうな八重に向かって昔の話をさんざんする、あのシーン(前出・第21回)は大変でした(笑)。
こんなところまで(器の)小ささを表現するのかと。ドラマ本編が43分しかない中で、ここにその尺割きます?っていう。だったらもっと他の人描いた方がいいのではと。聞いちゃったもん、「(頼朝は)なんでこんなこと言うんですか?」って。「いや、単純に腹が立っただけ。幸せな八重を見てイラッとしたんじゃない?」だって。理解できなかったです(笑)。
大泉洋“源頼朝の死”への想い&撮影裏話
― 頼朝が死に向かっていくあたりの台本を見た感想は?大泉:面白いと思いました。一人の、権力の頂点に上り詰めた人がどんどんダメになっていく。巻狩りの最後でも口にしていましたが、どこか天にも見放された気持ちになってきて、どんどん自分の犯してきた、罪とは言いたくないけど、たくさんの人を排除してきた男が、そこに苦しめられていくというか、その亡霊に苦しめられていくというか。
25回の頼朝は精神分裂気味の人になってしまったのかなと思っていました。突然、巴御前のところに行って、義仲を討ったことを申し訳ないって思っちゃった。その気持ちも分かる気がしました。死ぬ直前に今まで自分がやって来たことを謝りたくなるような気持ちでした。
― これまで主要人物が亡くなると「○○ロス」とSNSが沸いてきましたが、頼朝の死はどう受け入れられると思いますか?
大泉:好きに受け取ってほしいです(笑)。どう思うんでしょうね。あまりにも頼朝はひどく描かれてますからね。頼朝が倒す相手はものすごくいい人に、とにかく性格良く描いてるから、そりゃ頼朝が悪く見えるし、「ひどい殺され方してほしい」なんて言われてしまってる(笑)。
でも僕は、実にシンプルというか、素直に頼朝の最期が描かれていて、とっても面白いなと。25回では馬から落ちて、そのあとの26回もまた、三谷さんらしいですよね。頼朝がただ寝てるだけっていうのは面白いなぁと。寝てる頼朝の周りでどんどん動いていく。まさに劇作家・三谷幸喜の真骨頂というか。
基本、三谷さんの舞台はワンシチュエーションですよね。1つの部屋があってそこで何かがずっと起きてくのを描くのが上手な方だから。大河ドラマだから頼朝の最期も大きなうねりの中で描いていきたいだろうけど、それが、頼朝が眠ってるそこだけで起きていく。小さいんだけども、今後の鎌倉がどうなっていくかの大事な話し合いが行われていく。そして頼朝の本当の最期は政子と2人で迎えましたけど、演出の保坂慶太さんが非常によく撮ってくれて、すごく美しいカットだったんです。小池栄子さんの熱演も素晴らしかった。とても印象に残ってます。
こんなドラマとこんな役にはそうそう巡り会えないなと、とっても幸せだなと思いましたね。もう、こんな役をいただいて三谷さんには感謝しかないです。
(modelpress編集部)
【Not Sponsored 記事】
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