

実は裁判も起こされていた、俳優転身の川上なな実が振り返る半生「騙されたのは自分のせいでもあった」
2019年にNetflixドラマ『全裸監督』に出演したことでも話題を呼んだ川上なな実。かつての芸名「川上奈々美」から「川上なな実」に改名し、AV女優としての仕事を引退して専業の役者として生きていくことを発表したが、実はこの2年間、彼女が被告になった裁判が進行していた――。今まで公表していなかった訴訟のことや、個人事務所を営みながら映画製作や写真展の開催に奔走する現状について、包み隠さずに語ってもらった。
――ちょうど今日(1月12日)が、デビュー10周年の日だったんですね。
川上 そうなんです。それで今日は小説と写真集の発売日で(※)、たまたま裁判の判決も出るので、私ここから生まれ変わるんです(笑)。
(※自ら執筆した自伝的小説『決めたのは全部、私だった』と、写真家の熊谷直子と制作した写真集『すべて光』)
――先日お会いした際にその裁判のことを聞いて、いても立ってもいられず今日インタビューさせてもらっているわけですが、そもそも誰に訴えられたんですか?
川上 二十歳くらいのとき、渋谷で私に声をかけてきたスカウトマンです。デビューしてから数年間、私はそのスカウトマンから毎月決まった給料をもらってたんですけど、途中でその振り込みが途絶えたんですね。その人、飛んだみたいで。それまでにもいろいろおかしなことはあったんですけど、何年も経ってからいきなり裁判を起こされて。
――どういう内容だったんですか?
川上 私の仕事に関する今までの活動費っていうことで、5000万円の損害賠償請求をされました。もともと、スカウトされたときに私がサインした契約書を出されたんですけど、そもそもスカウトマンは一切仕事を取ってきたりしない立場なので、活動費を請求するっておかしいんです。相手の弁護士も証言を出さないで事実とは違うことを言い続けていて。
――判決はもう出たんですか?
川上 出てるんですけど、この取材を受けるまでは見ないようにしてました(笑)。ちょうどさっき、LINEが届いたんで、見ますか? えーっと……。あ、勝ちました! 私からしたら、「でしょうね」って感じなんですけど(笑)。
――2年に渡った裁判も、これで一段落という感じですね。
川上 はい。あのスカウトマンは、人類で唯一許せない人ですかね。小説にも書いたように、私の周りにはいろんな人がいて、騙されたり巻き込まれたりしてきましたけど、みんな人間味があったんです。でも、あのスカウトマンだけは直接会ったときも人間味を感じたことはなかった気がします。――小説を読んでびっくりしたんですが、最初はAVの撮影だって知らずに現場に行って、流されるまま出てしまったんですよね?
川上 そうですね。でも、私はその場の空気を壊すことが怖くて、明るく「はい! 脱げます!」みたいに振る舞ってしまったんですよ。プライドの高さもあって、みんなの期待にとにかく応えなきゃって思っちゃったんですね。
――それでも、普通は最後までいかないと思うんですが、その極端に空気を壊すのを恐れる性格はなにが原因だと思いますか?
川上 ずーっとさかのぼると、生まれた環境が影響してると思います。私、福井出身なんですけど、福井県ってずっと幸福度ランキング1位なんですよ。いろんな理由はあると思うんですよ。お金に困っている人が少ないとか。だから外に出る必要がない。とりあえず田舎の中で協調性を持って生きることが一番幸せな土地なのかなって。私みたいに外に出て、AV女優になった人って、会ったことないですもん(笑)。
――今思ったんですが、田舎出の世間知らずで、若くてかわいい女性なんて、悪い大人が寄ってくる要素しかないですね。
川上 あはは! 騙されて巻き込まれるさだめだったんですかね(笑)。でも、こうして小説を書いてみて思ったのは、全部自分のせいでもあったのかなってこと。これだけトラブルが続いた原因は、空気を読んじゃうところとか、プライドが高いところとか、男に依存する性格にあったと思うんです。だから相当反省しましたし、今はそういう部分は無くなりましたね。個人事務所を作ったのも、イエス・ノーを言えるような自分を持つためっていうのが、ひとつの理由ですから。
――こういう取材も自分で直接やりとりしていますし、写真展の開催やクラウドファンディングもぜんぶ自分で仕切っているそうですね。
川上 はい。まずはすべて自分でやろうって決めたのは、2年くらい前ですかね。それまで、周りから嘘の情報ばかり教えられて、ファンの方を裏切ってしまうこともあったりしたので、もうこれからは自分で自分のことを把握できる環境で生きようって決心したんです。それで2LDKの家からワンルームの家に引っ越して、無駄な出費を削って、個人事務所を設立して自分の給料を決めました。
――お金の流れから整理したと。
川上 そうです。この写真展もクラウドファンディングを自分で立ち上げて、写真のプリント代なんかを自分で振り込んで、会場で物販するための金庫も買ってきました(笑)。個人の活動に関しては現場マネージャーもつけてないから、ロケも大荷物を抱えてくまこ(熊谷直子)とふたりで電車に乗って行ったんですよ。今日もこれからトークショーがあるので、大荷物で帰ると思います(笑)。
――大変じゃないですか?
川上 もう、死ぬかと思いました(笑)。写真展の他にも、写真集、小説、ドキュメンタリー映画、あとAVの仕事とストリップも並行して行なっているので。去年は、13時から23時までロック座の舞台に立ちながら、深夜にもろもろの作業をして、次の日の午前中からズームで打ち合わせするっていう日々を過ごしてました。
――そのズームの会議室も自分で作って、人を招待するわけですよね。
川上 そうそう。私もともとめっちゃアナログな人間で、機械が怖かったんですよ。「機械に犯される! 洗脳される!」って思ってて(笑)。機械恐怖症なところはいまだにあるんですけど、コロナ禍で仕事をしていくにはこれじゃ駄目だと思って、まずは携帯で決済できるようにして、ズームの使い方も勉強しました。短期間でめちゃくちゃ進化しましたね(笑)。
>>後編はから
▽川上なな実福井県出身。2011年にAVデビュー。アダルト業界に身を置く傍ら、「恵比寿マスカッツ」としての活動や、ドラマ『全裸監督』への出演で話題を呼ぶ。2022年1月にAVを、2月にストリップを引退し、今後は俳優として活動。自伝的小説『決めたのは全部、私だった』、写真集『すべて光』が発売中。1月16日まで、東京・渋谷の2会場で写真展を開催。その他、現在進行中のプロジェクトの情報は下記にて。Twitter:@nanamikawakamiInstagram:@nanamikawakamiHP:https://kawakaminanami.com/


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