

VTuberや「おそ松さん」も…多様化する「応援広告」、「私の力で売れさせたい」ファンによる"推し活”が進化中

近年、街中や駅の構内、あるいはSNSなどで、特定のタレントを宣伝する広告を見かけたことがある人もいるだろう。CDリリースやライブ告知で事務所やレーベルが出すものではなく、オーディション番組での投票呼び掛けや、誕生日を祝うメッセージなどを表現したこれらは「応援広告」と呼ばれ、ファンの手によって掲出されている。かつて広告とはタレント側が宣伝のために出すものだったが、今はそれだけではなく、ファン自らが応援しているタレント=「推し」を広めたいという目的で出されることが増えている。そんな「応援広告」が盛り上がっている経緯を掘り下げると共に、応援広告の出稿を担当する広告会社に今後の潮流を聞いた。
応援広告とは?韓国発祥、日本でも盛り上がり中
「応援広告」のルーツは、韓国の「センイル広告」であるといわれる。「センイル(생일)」とは「誕生日」を意味し、元々はアイドルの誕生日を祝う目的から始まった。同様に日本でも、2012年ごろからアイドルの誕生日を祝う広告の出稿は見られた。例えば乃木坂46メンバーの誕生日を祝うポスターを、乃木坂駅構内に掲出した例などがある。しかし最近の応援広告は、より大規模かつ多様なメディアで展開されるようになり、それに伴って目的や対象も変化してきている。
応援広告の出稿が日本で一般的になったきっかけのひとつに、2019年に放送された人気オーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN」通称「日プ」がある。元々韓国で放送されていたシリーズの「PRODUCE 101」を日本に輸入した番組だ。日プは視聴者が「国民プロデューサー」と呼ばれ、視聴者投票によってのみオーディション通過者が決定する仕組みだった。そのため、自身の推しを通過させるために多くのファンが応援広告を出稿した。番組側が候補者の写真素材利用などを許可していたこともあるが、番組側からすれば、視聴者が自主的に広告で番組を盛り上げてくれるのは喜ばしいことだったろう。
それまでに日本で掲出されていた誕生日広告は、「推しを喜ばせたい」という目的が強いものだった。しかし日プの隆盛によって、「推しの知名度を上げたい」「推しを効果的に宣伝したい」という直接的な目的がより強まり、より大規模な出稿が増え始めたと思われる。日プからデビューしたアイドルグループ・JO1は、デビュー後もレギュレーションを明記した上で応援広告出稿を許可しており、新譜発売時にも多くの応援広告が掲出された。しかしデビュー後はメンバーの写真を切り出して使用することは難しくなったため、ファンは似顔絵やイメージデザインを利用するなど工夫しているようだ。
その他、日プ出身メンバーによるグループ「OWV」、日プの第2シーズンからデビューした「INI」、SKY-HIプロデュースのオーディション出身グループ「BE:FIRST」なども応援広告を許可している。ちなみにジャニーズでも、嵐が活動休止した際の新聞広告など、過去にファンによる出稿事例は存在しているが、事務所は「弊社が関与しないクラウドファンディングの企画やプロジェクトにつきましては、その内容を慎重にご確認いただきますよう、お願い申し上げます。」との注意喚起メッセージを発信しており、一線を引いている様子だ。
ビジネスチャンスと見て参入する企業も
このような応援広告の盛り上がりを、ビジネスチャンスと感じて参入する企業も出てきた。ジェイアール東日本企画(以下jeki)では、今年より新たに「応援広告事務局」を設け一般ファンの相談を受け付けている。担当スタッフはいずれもアイドルファンで、自身でも応援広告を掲出した経験があることから事業化につながったという。当初は駅広告などで掲出先鉄道会社の理解が得られず難航するケースもあったが、徐々に応援広告の事例が増加しつつあること、また掲出された広告を見るためにファンが現地を訪れ活気につながることから、最近では掲出先も徐々に積極的になってきている実感があるそうだ。
またデザイン会社Y’sは、昨年8月より応援広告事業「OSHITAI(オシタイ)」を立ち上げた。従来の応援広告は発起人自身がSNSなどで参加者を募集することが多いが、オシタイではクラウドファンディング形式をとり、参加者を募るためのプロモーションを一気通貫で代行する。またデザイン会社のリソースを生かして、プロのデザイナーによる広告のクリエイティブ作成も代行している。
応援広告の特徴として、ファン主導であることから、本人にちなんだ掲出先や媒体、内容の工夫など、効果を重視して掲出される一般的な広告とは異なる軸で企画され、それが話題化につながる点がある。Jekiでは、今年4月にJO1メンバーの誕生日祝いで、西武池袋駅に国内初の「付箋広告」を掲出した。韓国ではメジャーなスタイルで、ファンがメッセージを書いた付箋を広告面に貼り付けていき、掲出終了後はメッセージをまとめてタレントへ届けるという広告だ。該当メンバーがK-popファンであることから、喜びそうな形をファンが考え実現につながったという。また同メンバーの好きな食べ物が寿司ということから、併せて回転寿司チェーン・スシローのサイネージ広告も実施した。このように手の込んだ話題性のある企画や、新たなタッチポイントとなるような媒体の利用は、応援広告の可能性のひとつだろう。
応援広告を事業として行う上での難しさについて尋ねたところ、2社が共通して挙げたのが肖像権・版権の問題だった。現状、公式が応援広告掲出を許可しているタレントは一部に限られており、明記されていないタレント・作品については、事務所や権利元へ都度広告を出す許可を求めることになるが、前例のない取り組みであることや、公式素材を提供する際に伴うリスク、公式のイメージと乖離する懸念などから、許可が得られないケースもあるという。こういった問題を解消し、より広範なジャンルで応援広告を実施できる素地作りのため、Jekiでは自社で公式素材の受け渡しや意匠チェックに責任を持つ形をとり、エンタメ企業への積極的な働きかけを進めている。またオシタイでは応援広告という概念の認知を高める目的で、業界コネクションを生かし、「おそ松さん」「Paradox Live」といった作品について自社発信の応援広告プロジェクトを行っている。その甲斐あってか、最近はVTuberなど、今までなかったジャンルからも相談が寄せられ出稿実現につながっているという。
「この人を有名にしたい!」SNSとファン心理の変化
なぜこのような応援広告がさかんになったのか。ひとつには、SNSの普及によりファン同士がつながりやすくなり、出稿に参加するメンバーを集めやすくなったことがあるだろう。大規模な応援広告の初期の事例として、2016年末に朝日新聞全国版へ掲出された「SMAP大応援プロジェクト」がある。これは元々有志のファン3名によって立ち上がった企画だったが、朝日新聞のクラウドファンディングサイト「A-Port」を利用しTwitterで拡散、プロジェクト公式アカウントのフォロワー数は最終的に1万人を超え、4000万円近い金額が集まった。ここまで多くの人にプロジェクトの情報が届いたのは、SNSの瞬間的拡散力あってのことだといえる。
また同時に、万人がSNSを通じて発信できるようになったことで、一般のファンの中でもインフルエンサー的な強い影響力を持つ存在が生じてきている。そのため「自分たちの力で推しを売れさせる」という意識がいっそう高まっていることもあるだろう。「オシタイ」責任者・中館博貴氏は、「事務所がプロモーションを仕掛けて価値を高めていく時代から、ファン自身の『この人を有名にしたい』というモチベーションが形になる時代に変わってきている」と語る。またコロナ禍の影響も見られるという。「ライブやイベントが中止になったことで、ライブに参加してグッズを買う、イベントのためにCDをたくさん買うというような従来の応援方法で貢献できなくなってしまったことから、今できる新たな応援方法として、広告出稿がより活発になったのではないかと思います」(jeki応援広告担当・河原千紘氏)
応援広告が秘める可能性
近年「推し活」という言葉も一般化し、好きなタレントやキャラクター、作品を積極的に応援する活動が盛り上がってきている。今回話を聞いた2社によると、応援広告はまだ一部ジャンルでの実施に限られており、ごく一般的な取り組みとは言えないそうだが、既にオシタイがVTuber応援広告を手掛けたように事例が生まれているジャンルもあり、より認知が向上して権利関係の問題さえクリアできれば、広範囲に拡大していくのではないか。
また応援広告は他にも様々な可能性を秘めている。まずjeki・河原氏によると、コロナ禍以前はK-popファンの間で、タレントの誕生日に渡韓して応援広告を見て回るという活動が一般的だったという。同様に日本人アイドルの応援広告が一般化すれば、コロナ終息後にはインバウンド需要拡大にもつながりうるのではないだろうか。既に海外ファンから日本のアイドルへの出稿事例は多数存在している。
またオシタイ・中館氏は、ファンとタレントだけではなく、スポンサー企業を巻き込んだ応援広告の可能性について検討しているという。例えばある企業のCMキャラクターを務めるタレントの誕生日に、スポンサーとファンによる出稿で応援広告を掲出し、ファンへのリターンとしてスポンサー企業の商品サンプルを配布する、というような形が考えられるのではないかと語った。
大好きな存在への気持ちを目に見える形にできる応援広告は、今の時代だからこそできる「推し活」である。今後、応援広告がさらなる盛り上がりを見せるのか、注目していきたい。
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