田中涼星と稲垣成弥、2人の奇縁が刑務所に変化をもたらす…舞台『99』ゲネプロレポート
BARRELプロデュース舞台『99(ナインティナイン)』が2021年4月7日、東京・博品館劇場で開幕した。
本作は冨田昌則が演出・アクション監督、亀田真二郎が脚本を手掛ける新感覚舞台。
2.5ジゲン!!では初日に行われたゲネプロの様子を共にお届けする。ストーリーのネタバレは含まないが、劇中ショットを多数掲載しているので、新鮮な気持ちで楽しみたい方は観劇後に読んでほしい。
失意の中、献身な想いに救われ、前へと踏み出す
主人公・神木坂つばさ(田中涼星)は、子役時代に「中学生刑事(デカ)」という映画で脚光を浴びたスーパースターだった。しかし成長して仕事が減り、大学生となった今、その栄光は人々の記憶から消え始めている。
そんな中、つばさは傷害事件を起こして警察に捕まり、刑務所に収容されてしまう。皮肉にも刑事役を演じていた彼は真逆の立場に転落し、囚人番号「99」を背負うこととなってしまうのだった。
その先で、ある運命的な出会いが待っていた。
囚人たちを「犯罪者はクズだ」と日頃から厳しく罵り、“鬼刑務官”と恐れられる黒澤(稲垣成弥)。冷たく近寄りがたい印象の彼だが、実はつばさの熱狂的ファンであり、自身の高校生時代に「中学生刑事(デカ)」の影響を受けた人間だった。
そんな2人が、囚人99番と鬼刑務官として刑務所で巡り合うことに。お互いはもちろん、他の囚人や刑務官たち、果ては塀の外の人間たちに変化をもたらしてゆく。
つばさはどこか冴えない、放っておけない部分がある青年。
しかし一たびスイッチが入ると、そんな頼りなさはどこへやら。持って生まれた才能をフルに発揮し、その場の空気をいとも簡単に自分のものにしてしまう。人たらしともいえる真っ直ぐさで、彼はこの刑務所にすぐに溶け込むことができた。
そんな姿に黒澤の氷のような態度が溶けてゆく。いつかつばさを銀幕の世界に返り咲かせるために、刑務所内を巻き込んでダンスや殺陣、歌のレッスンをしたりと様々な画策を練る。
途中から彼のキャラクターが崩壊し、ただただ献身的につばさへ尽くし始める姿に、面白さを通し越していっそ愛おしさを感じる。
余談だが、メインキャストである田中と稲垣の、プロポーションの美しさにも声を失うのはきっと筆者だけではないはずだ。
黒澤だけでなく一癖も二癖もある囚人や刑務官たちにも注目を。
囚人77番・セブン(廣野凌大)は荒い言動で一見とっつきにくそうではあるが、自分の懐に入った人間には黒澤と同様に献身的。つばさと仲良くなってからはマネージャー的なポジションに。
55番・マツイ(赤澤遼太郎)は人当たりがよく、メンバー内のムードメーカー。彼の明るさが救いとなる場面も少なくはない。
登録者100万人以上のYouTuberを両親に持つ33番・ジュニア(二葉要)は、進行役的存在。家族へ対するツッコミの切れ味がバツグン。
つばさとは違った角度で冴えないのが29番・DT(後藤恭路)。まじめ気質で目立たない…かと思いきや、この出会いの中で彼にも変化が生まれる。
個性豊かな囚人仲間たちと刑務所内でダンスや殺陣、歌の練習にいそしむ中、33番・ジュニアの兄であり雑誌記者でもある淡路島(二葉勇)はつばさの傷害事件について追っていた。「冤罪だったのでは」という疑惑が持ち上がることで、物語は終盤に向けて一気に加速していく…。
冨田監督が仕掛けるアクションシーンに瞠目
本作品はオペラやプロジェクションマッピング、アクションやダンスなど斬新な要素が盛りだくさん。
中でも殺陣のシーンは圧巻の一言だ。舞台の端々まで目一杯使って動き回り、それぞれのキャラクターごとに用意された見せ場はどれも息をするのも忘れるほど。
演出・アクション監督の冨田昌則によるエネルギッシュなかつ計算された仕掛けと伏線にまんまとはまり、のめり込んでしまうことだろう。
今回が初の主演となる田中涼星はゲネプロカーテンコールの際、冨田監督からの「初主演の初日、どうですか?」という問いに、「初日! なんかいい感じですよね(笑)。皆さんバンバン宣伝してください。怪我のないように(全公演を)終えられたらと思います。」と、つばさのような“人たらし”な笑顔と発言が飛び出るシーンも。
なんとも末恐ろしくも、彼の伸び伸びとした中に芯の強さが光る一面が垣間見えた。
笑いあり感動あり、アクションありの同舞台、決して見て損はないと断言できる。ぜひ会場でこの臨場感を生で味わってみてほしい。
取材・文・撮影/ナスエリカ
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