『銀河の一票』第9話より (C)カンテレ

『銀河の一票』『月夜行路』『エラー』が示した女性ドラマの新潮流 “男性バディ”一強時代に変化か

2026.06.09 17:34
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終盤戦へ突入した春ドラマを見渡して、ふと気づいた。今クールの作品には「女性バディ」が主役になった作品が目立っている。

◆見た目も性格も正反対だから成立したバディ

まずは月曜22時放送の『銀河の一票』(カンテレ、フジテレビ系)。誇りだった政治秘書の仕事をある日突然、奪われてしまった星野茉莉(黒木華)が、元スナックのママ・月岡あかり(野呂佳代)と東京都知事選に挑む、政治をテーマにした作品だ。長年関わっていたおかげで国政、公的システムに造詣が深い。そして正義感も強く、しっかり者だ。対するように政治に大きな関心もないけれど、大らかで温かくて、どこかに信念を感じさせてくれる女性。つまりドラマでは定番の、全くタイプの異なる二人が中心となっている。互いに救い、救われてという構図だろうか。

放送前からプロデューサーは佐野亜裕美さんが担当、もはや連続ドラマの女王となった野呂佳代の出演と、視聴者の期待が膨らみっぱなしだった『銀河の一票』。ちなみに私はあかりタイプで、さほど政治には興味もなければ、期待もしないように生きてきた。ただ毎週、茉莉の選挙演説のような気持ちをセリフで聞いていると、自分の心もやや動いているのは確か。我が家に毎度送られてくる、投票用紙は自分の幸せを保持するためのチケットだと、改めて思い知る。SNSでブツブツ言っているくらいなら、このドラマを観たほうがいい。

水曜22時放送の『月夜行路 -答えは名作の中に-』(日本テレビ系)。文学オタクでバーのママ・野宮ルナ(波瑠)と専業主婦の沢辻涼子(麻生久美子)が、事件やルナの父の「ある秘密」を探すミステリー。カギを握るのはルナの文学に関する膨大な知識だ。こちらも『銀河の一票』と同じく、まったくタイプの異なる女性ふたりがバディを組んでいる。TVerのお気に入り登録数が70万人を超えて、4月期のドラマでは第一位らしい(5月29日現在)。内容も面白いけれど、気になったのは演じる波瑠の飛び抜けた美しさ……。彼女が結婚発表をしてから初めての出演となったわけだが、夫との相思相愛がもたらす充実ぶりを見た。

◆男性バディが目立っていた日本の芸能界

そして最終話を迎えて放送が終了した『エラー』(ABCテレビ、テレビ朝日系)。母親を飛び降り自殺で亡くした大迫未央(志田未来)と、その母親の背中を過失によって押してしまった中田ユメ(畑芽育)の関係性を描いたサスペンス。ふたりの間に生まれた友情は、本物なのか、それとも崩れていくのか。スピード感のある物語の展開が、第一話から最終話まで飽きさせなかった。未央とユメは前述の2作とは違っていて、ビジュアルも生活環境もどことなく似ていた。だからこそ、ドラマの先が読めず、考察班が苦労したと思う。バディといえば、凸凹コンビが演じるからこそ面白みが増すといった定説もあるけれど、似ていても成立するのだと『エラー』が証明してくれた。

以上の3作品が春ドラマを「女性バディ」として彩り、人気を得た。個人的にいい傾向だと思った。なぜ日本ドラマには「男性バディ」が多いのかと、ずっと疑問に感じていたからだ。時折、各所のコラムで書いているけれど、日本は50代を越えた女性の俳優の主演作品が圧倒的に少ない。主演作品があったとしても、20〜30代の女性であるパターンが多かった。自由で社会の動きには理解がありそうな芸能界にも、男尊女卑はあるのだと今でもジリジリしている。決して男性俳優の主演を否定しているわけではなくて、才能は性別に関わらず溢れていると思うだけだ。

昨今、50代の女性の俳優が主演する作品も増えてきた。牛歩とは言わず、普通の歩みでよいので、男女の俳優がふつうに並んでいる日本に進みますようにと願うばかり。

(文/コラムニスト・小林久乃)

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