恋か洗脳か、ドラマ『るなしい』があぶり出す新興宗教ビジネスと若者心理のリアリティ
日本国内ではオウム真理教の事件以降、宗教を題材にしたドラマや映画に関して、比較的慎重になっている傾向が高い。それでも映画『八日目の蝉』(2011年)の一幕、『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(関西テレビ、フジテレビ系・2017年)の第8話、『神の子はつぶやく』(NHK総合・2023年)など、新興宗教を取り扱った作品は続いている。それだけ多くの関心が寄せられるのだろうし、社会生活の近くにある問題でもあり、救いだ。
◆恋愛と洗脳。どちらが脆く、どちらが強いのか
個人的には祖父母も葬式を思い出すと我が家は仏教徒で、神社に参拝へ行く程度の信仰心しかない。そもそも宗教の類に興味がなく、“スピっている”部類には当たらないと思っている。そんな私でも気になる信者ビジネスを扱った、面白いドラマがあったので、魅力を綴りたくなった。それが現在放送中の『るなしい』(テレビ東京系)。ストーリーは以下となる。
“「火神の子」として生まれた郷田るな(原菜乃華)は高校生になり、同じ学校の成瀬健章(通称・ケンショー/窪塚愛流)に恋心を抱く。ただ火神の子に恋愛は許されない。禁忌であると分かりながら、ケンショーに告白をするものの、敢えなく振られてしまう。この復讐手段として思いついたのが、るなの祖母が行っている信者ビジネス。自宅で鍼灸をして、艾(もぐさ)を販売して、一人当たり数万円の高額費用を得ている。その裏にあるのは祖母の巧みな洗脳だ。この方法でケンショーを自分の傘下に取り込もうとする。るなに一時的優位があったものの、捨てきれずにいた恋心が動き出してしまう”
このドラマを取り上げたいと思った理由は、洗脳と恋愛の距離感が表裏一体に近く、魅惑的である危険性を作品が示していること。第一話で振られて、人が変わったようにケンショーをビジネスへ引き込んでいく、るな。実家で営む鍼灸院の虜にさせて、施術費用(お布施ともいう)を支払わせるためにゲームと称して、生徒たちから金を巻き上げさせている。ケンショーは校内でもトップクラスの人気者、女子生徒たちを自分に夢中にさせるのはお手のものだった。自分といるための時間を売り、徐々に値段を引き上げていく。やり口はホストと同じだ。
恋は盲目とはよく言ったもので、恋愛感情は時として人を狂わせ、自分も狂ってきた記憶がある。周囲から「やめろ」と止められる異性ほど、その魅力が高かった。国内でも恋愛感情、交際、別れのもつれ、ロマンス詐欺などによる、日本国内での犯罪件数は2025年で約900件前後。他にもストーカー相談件数は約2万、配偶者によるDV行為の相談件数は約9万件……と、地上のもつれは枚挙にいとまがない(警察庁「令和7年の犯罪情勢」による)。るなの恋心が揺れているのを見ると、宗教と恋愛どちらが強いのか考えさせられている。
そして最終的には誰がイニシアチブを持つのか。るな、ケンショー、祖母に加えて、るなと幼なじみの石川スバル(本島純政)たちの行動には、いつも裏がある。宗教と利益と恋愛が軸にあって、その周囲を登場人物たちがぐるぐると回遊しているようなイメージだ。ラブストーリーや、刑事ドラマであれば着地点の予測がなんとなくできるものの、本作は予想がつかない。毎話、緩やかで大胆な波打つラインのように物語が流れてくる。そんな警鐘にも近い見応えあるドラマだ。
洗脳は怖い。いつの時代も止まらないうえに、仕掛ける側も時代に沿ってアップデートしているから。いつの間にかかっているというもので。そうならないためにも自己防衛として、常に自分を裏切らない選択できる力を持とうと思う。
(文/コラムニスト・小林久乃)
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