織田裕二『踊る大捜査線 N.E.W.』はなぜ期待されるのか 不安を覆した「老けた青島刑事」の説得力
9月18日公開の映画『踊る大捜査線 N.E.W.』に対する期待が、ここにきて急速に高まっている。発表当初は不安の声が多かったが、特報などで「青島俊作の今」がリアルに提示されたことで、評価が大きく変わったようだ。
1997年の連続ドラマから長く愛されてきた『踊る』シリーズは、2012年公開の映画『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』で一区切りついたと思われていた。だが、2024年に二部作映画『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』でプロジェクトが再始動し、その流れの先に主人公・青島俊作の新たな物語として『踊る大捜査線 N.E.W.』が置かれたことで、再び大きな注目を集めている。主演は織田裕二、脚本は君塚良一、監督は本広克行、プロデュースは亀山千広というおなじみの布陣だ。
もっとも、再始動が報じられた当初は手放しで歓迎する雰囲気ではなかった。名作の続編には常に「思い出を壊してほしくない」というファンの警戒心がつきまとうが、『踊る』ほど時代の空気を背負った作品ならなおさらだ。実際、シリーズ再稼働に対しては懐疑的な見方もあった。
ところが、3月18日に解禁された新ビジュアルと、4月18日に公開されたアナザー特報が流れを変えた。1997年と2026年の青島を並べたビジュアルは、単なる懐古企画ではなく「29年後の青島」を正面から見せ、アナザー特報には「青島俊作、相変わらず警察官やってます。」という一文に加え、「走って腰痛」「新宿副都心全域封鎖命令」「新管理官」「AI刑事」など、気になるワードが矢継ぎ早に盛り込まれ、ファンの考察熱を一気に押し上げた。
その中でも最も大きかったのは、年齢を重ねた青島のビジュアルが持つ説得力だろう。白髪交じりでシワも増えた青島に対し、ネット上では「老けた」といった声が少なからず上がった。だが、それ以上に目立ったのは、無理に「90年代の青島」に寄せなかったことを肯定する反応だった。青島はもともと、スーパーヒーローではなく、現場で泥をかぶりながら走り続ける刑事として支持されてきた人物だ。だからこそ、年齢を重ねた痕跡が刻まれた姿には、和久平八郎の教えや室井慎次との約束を胸に、組織と現場の狭間でもがき続けてきた時間がにじむ。若い頃と変わらない姿で戻ってくるより、ずっと青島らしい。ファンの反応が期待へ傾いたのは、制作陣が「昔の青島の再現」ではなく、「今の青島の人生」を描こうとしていることが伝わったからではないか。
さらに追い風になっているのが、織田裕二の現在地だ。2026年2月より放送・配信を開始した連続ドラマ『北方謙三 水滸伝』(WOWOW、Lemino)では主演を務め、同作は早くも続編制作が決定している。織田は久々の大型主演作でしっかり存在感を示し、俳優としてキャリアと年齢を重ねたからこそ出せる重みを手に入れている。その流れの中で「青島刑事」としてスクリーンに戻ってくるからこそ、『N.E.W.』にも単なる"同窓会"ではない手応えが生まれている。
とはいえ、不安の種が消えたわけではない。副題の『N.E.W.』は「NEXT EVOLUTION WORLD」を意味し、本広監督は今作の青島について「周囲の世代交代が進む中で、変わらずにいて、『繋いでいく人』の物語」と説明しており、世代交代が物語の重要な要素になる可能性を感じさせている。
『踊る』シリーズは青島という異物が官僚的な警察組織へ風穴を開けていく面白さが核だっただけに、世代交代のストーリーがうまく機能するかどうかは未知数だ。加えて、シリーズの肝だった青島と室井の関係性も、これまでと同じ形では描きにくい状況にある。青島のドラマを何によって支えるのかという点にも、不安は残る。
それでも現時点で言えるのは、ファンにとって期待が不安を大きく上回っていることだ。制作陣は、「昔のまま」の青島でも、変わらない決めゼリフを並べた青島でもなく、刑事として29年の歳月を生きていた青島を提示した。主人公の変化を描くのは勇気のいることだが、作品世界への敬意はむしろそこに宿る。どのような展開になるにせよ、青島が過ごした時間の重みをきちんと物語に落とし込めるなら、この新作は「まだやるのか」ではなく、「今こそ見たい続編」になり得るはずだ。
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