ドラマ『銀河の一票』スナックのママが都知事選へ、改めて気づかされる“政治は私たちの話”
政治、選挙について考えた時間はあるだろうか。SNS上の事象ではなく、資本主義の国に住み、選挙権を持った成人の一人の主張としての考えだ。正直、私はそんなにない。深すぎる構造になってしまった政治について真剣に考えようとすると、かなりの時間を要する。何が正しくて、何が悪いのか。この判断で思考を進めることをあきらめてしまう。
さらに家族、友人同士でこれらについて話し合うシーンもない。第2次ベビーブーム世代以降に生まれた日本人は「政治、宗教、国籍について軽々しく口にしてはいけない」といった意義のよく分からない教育を受けて育ってきたせいだ。両親と選挙に出かけてはいたが「誰に入れたの?」と聞くと、お茶を濁されていた記憶がある。
◆自らの一票について考えるドラマが始まった
大人になって痛切に思うが、小さなころに浸透させられたあの感覚は、果たして意味があったのだろうか?もっと親しみやすく、知る機会があったら、もう少し若者世代や日本人の選挙に対するセンスが変わっていただろうに。いびつなメカニズムになってしまった社会に暮らしていると、切に思う。
ただこの春、その回答のひとつになりうる地上波ドラマが放送されている。それが『銀河の一票』(関西テレビ、フジテレビ系)。ストーリーはこうだ。
“星野茉莉(黒木華)は、父である幹事長・鷹臣(坂東彌十郎)の秘書を務めていた。議員の家に生まれ、政治をとことん愛している女性だ。彼女には「いつか都知事になりたい」と密かに願う夢もあった。が、父の行動によって一つの命が奪われたことを知った茉莉。このことを相談した幼なじみの日山流星(松下洸平)のリークによって、父の元に情報が届き、家も秘書の立場も追い出されてしまう。さらに今までの貯蓄も根こそぎ取られてしまい、まさに身包みを剥がされた状態。絶望の淵に立たされた茉莉を偶然救ったのは、スナックのママの月岡あかり(野呂佳代)。家も金もない茉莉に真っ直ぐな言葉をかけて、励ましてくれる。そんな姿を見て何かを感じ取った茉莉は、あかりを都知事選に出馬しないかと誘う。突然の申し出に、自分はそんな立場ではないと断るあかり。そんな彼女も自ら命を落としたくなるような過去を持っていた。さて、ふたりのこの先に明るい政治、社会は待っているのか”――。
◆星と月が物語る、これからの社会
茉莉とあかりはまるで真逆の環境下で暮らしている。日本だけではなく、世界の情勢について知見も深く、今は苦戦しているけれど高い志を持っている。何よりも実家が太い。礼儀正しく知性があり、スーツがユニフォームの女性、それが茉莉。対するようにあかりの職業は現在、スナックのママ。いつもニコニコしている、街のおじさんたちの人気者で明るい色のカジュアルな服装だ。社会構造にも大して興味がなさそうだ。いや、ないふりをしているのかもしれない。ちなみに私はあかりタイプだ。
このドラマの良いところは、視聴者が茉莉の生徒になれること。あかりに諭す言葉ひとつひとつが私たちに向いている。セリフでは現在の日本や国外の政治についても触れている。
「政治の話じゃないです。私たちの話です。私とあなたたちの(中略)政治家は偉い人じゃないです。私たちの代表です」
「手放さないでください。幸福追求の権利」
「政治家は上に立つのではなくて前に立つ人(中略)同じ地面に足をつけて、同じ景色の中で、同じ気温を感じながら、同じ道を歩くんです、先頭を。明るい方向へ」
セリフはニュアンスなのでお目こぼしを。茉莉の言葉を聞いていると、政治の“あいうえお”について、改めて接しているような気持ちになる。そうか、社会の雰囲気に乗せられるように政党や立候補者の粗探しをしている節があったけれど、まずは自分の意見が最優先。その先に日々がある。選挙権は強制に出向くものではなくて、日々の幸福を得るもの。
この話を聞き、応えるあかりもいい。
「綺麗事じゃないよ、きれいなことだよ。きれいなことをあきらめないって、いちばん強いよ」
心打たれた視聴者も多かったようだ。名前が示すように、星のように輝いて「まつりごと」を、亡くなった茉莉の母言っていた「明るい方へ」導く、あかり。日本が明るい方向へ進むことを提示していく『銀河の一票』は、今だからこそ観る意味がある。
(文/コラムニスト・小林久乃)
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