『時すでにおスシ!?』『月夜行路』春ドラ注目2作で共通する“迷える主婦の再出発”
4月半ばより続々スタートした春ドラマ。今回はその中で、永作博美主演、 松山ケンイチ共演の『時すでにおスシ!?』(TBS系)と、波瑠と麻生久美子主演の『月夜行路 -答えは名作の中に-』(日本テレビ系)という、迷える主婦の奮闘を描いた2作をレビューする。
連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)などで揺れる心情を抱える母親役を好演してきた永作。
彼女が14年ぶりに民放連ドラで主演を務める『時すでにおスシ!?』は、子育てを終えた女性が「自分のためにどう生きるか」を模索する、切実な人生応援ドラマだ。
本作は一見、そのポップなタイトルから軽快なコメディを連想させるが、主人公・待山みなとが直面する悩みは極めて重層的。
みなとは、14年前に夫を亡くし、一人息子のためにすべてを注いできた。そんな息子が就職し自立。
解放感よりも喪失感が勝り、息子に何度も連絡するも、やっと返ってきた言葉は「もうお母さんしなくていいんだよ」「暇なの?」。
「お母さんじゃなくなったら、私は何なの!?」と自暴自棄になる彼女の姿は、50歳にしてアイデンティティ崩壊の危機に直面する現代のリアリティを映し出している。
そんな崖っぷちの彼女が、友人に誘われるがまま門を叩いたのが、わずか3か月で鮨職人を目指す「鮨アカデミー」だった。
そこで待ち受けていたのは、松山演じる堅物講師・大江戸海弥。鮨職人になるために、その意識と姿勢を厳しく問われることに。
また、年齢も立場も違うクラスメートは、それぞれ明確な目的意識を持って学ぼうとしていた。
そんな周囲に対し、ただ母親ではなくなってしまった焦燥感から逃げるために入学したことが情けなくなったみなと。「鮨アカデミー」から一度は退学しようと決意する。
しかし、他人と深く関わることを避けてきた大江戸が、悩みを吐露するみなとの「手」に着目し、意外な言葉をかけた。
「何千、何万回と相手を心から思って料理を作ってきた」その手を優しく肯定したのだ。
第2話では、新たな局面を迎えることに。「アジの一品料理で自分の味を表現せよ」という大江戸からの課題に対し、みなとは再び壁にぶつかる。
息子から「母さんから滲み出ているのは、家族のために生きてるって感じ」と指摘され、自分自身の味が分からないことに愕然とするみなと。
「母親であることが強みと言えないこんな世の中じゃ」と嘆きながらも、彼女は「自分」を見つけ出すことができるのか。
そんな折、大江戸のクラスを揺るがす事件が勃発する。
みなとと同じく、アイデンティティ喪失の岐路に立たされているのは、文学ロードミステリー『月夜行路』で麻生演じる沢辻涼子だ。
専業主婦である涼子は、不倫疑惑のある夫や冷淡な子供たちに囲まれ、みなと同様、家庭内での尊厳と自らの存在意義を見失っていた。
そんな彼女が、夫の尻尾を掴もうと訪れた銀座のミックスバーで出会ったのは、波瑠演じる野宮ルナ。彼女はトランスジェンダー女性で、小説家志望の文学オタクだ。
ルナは洞察力と推理力に長け、涼子の家族関係や、過去の恋人への未練まで言い当ててしまう。出会った翌日、涼子は元恋人を探しに車で大阪へ連れ出される。
みなとが友人に導かれるまま一歩踏み出したように、涼子もルナによって有無を言わさず外の世界へ飛び出すことになった。
2人は近松門左衛門の『曽根崎心中』ゆかりの神社で、座ったまま硬直する男女の遺体を発見してしまう。異なる結婚指輪をしていたことから、不倫の末の心中と推察された。
ルナと第一発見者として大阪府警で聴取を受けた後、涼子は亡くなった男性の妻が過呼吸になっているところに出くわし、彼女を介抱。
母親として身の回りの人のケアをしてきたからこそ、自然と出た涼子の優しさ。これにより女性の身体的不調にルナが気付く。
亡くなった女性が身に付けていたものに加え、涼子がふと「別の場所だったら心中を連想しただろうか」と疑問を呟いたことも、ルナの推理にヒントを与えることに。
そこから事件の真相が明るみになり、涼子はもはや受動的な家庭人ではなく、能動的で主体性を持った一人の女性となった。
第2話では、谷崎潤一郎の『春琴抄』の舞台・道修町へと舞台を移し、涼子の元恋人探しが本格化。
ルナが“切り札”とするものを探す中、辿り着いた呉服店店主から「一見さんはお断り」と冷たく追い返される。
そして2人は再び不可解な強盗殺人事件の影へと踏み込む。
「家族の元には戻らない」。自らの足で人生を切り拓く覚悟を決めた涼子の旅は、ここから加速していく。
相容れない価値観に翻弄される中で、みなとと涼子は社会的な期待や他人の目から解放され、自分の居場所を見出し、真の自立を達成できるか。アラフィフ女性の葛藤を描いた2作に今後も注目したい。
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