孤独の果てに生まれる絆『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が見せつけた“映像化の正解”
企業プログラマーから作家へと転身したアンディ・ウィアーが2021年に発表し、ニューヨーク・タイムズのベストセラーリスト1位にも輝いた長編小説『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が、ライアン・ゴズリング主演で待望の映画化を果たした。
ウィアー作品といえば、マット・デイモン主演で映画化された『オデッセイ』(2015)が記憶に新しい。エンターテインメント性と科学的リアリティを高次元で両立させた同作は、SFファンからも高い評価を受けた。派手さを優先すれば科学的な説得力が揺らぎ、逆に精密さを突き詰めれば地味になりがち——その難題を軽やかに乗り越えるバランス感覚こそ、ウィアー作品の真骨頂だ。
本作もまた、原作の刊行直後から映画化が進んだことが示す通り、SFファン待望の一作となる。物語は、記憶の一部を失った主人公が、わずかに残る科学知識を頼りに自身の置かれた状況を解き明かしていくところから始まる。極限の孤独のなかで新たな問題に直面し続ける展開は、密室スリラーとしての緊張感も併せ持つ。
宇宙に取り残される孤独と恐怖は、『ゼロ・グラビティ』(2013)や、アンドレイ・タルコフスキーの『惑星ソラリス』(1972)でも描かれてきたテーマだ。本作では最新の映像技術によって、その“空間”がかつてない没入感で表現され、恐怖と美しさが同時に迫ってくる。
小説版では、岩の塊のような地球外生命体(通称・ロッキー)はシークレットにされていたことで、得体のしれないものに触れるようなサプライズがあったのだが、今作に関しては、その存在を全く隠しておらず、すでに予告編に登場している。なんなら「グレースとロッキーで故郷を救う」とまで言ってしまっていて、後半の展開がオープン状態だ。
それによって、作品としての魅力や驚きが半減されるのかというと、決してそんなことはない。逆にロッキーの存在が明かされていることで、地球規模どころか、実は宇宙規模の問題に直面していた壮大なストーリーであることが明確になっている。
姿はもちろん、進化の過程も文明も技術も何もかもが違う、2人の生物がひとつの問題を解決しようと奮闘するなかで芽生える友情、そして自己犠牲の精神は、普遍的な希望と平和へのメッセージを内包している。
監督を務めるのは、『スパイダーマン:スパイダーバース』シリーズ、『ミッチェル家とマシンの反乱』(2021)、『ママと恋に落ちるまで』など、今までにもSF要素のある作品を多く手掛けてきたフィル・ロード&クリス・ミラー。本格的な実写SF映画を手掛けるのは今作が初めてとなるのだが、今まで培われてきた演出力が存分に活かされている。
そして注目すべきは、脚色を務めるドリュー・ゴダードの存在だ。ドリューは、『オデッセイ』でも脚本を手掛けていたが、非常におもしろい視点をもった脚本家だ。
『LOST』や『エイリアス』といった、フィル&クリスとは、また違った角度のSF作品を多く手掛けてきた。とくにドラマ『バフィー~恋する十字架~』や『エンジェル』、映画では『キャビン』(2011)など、ジョス・ウェドンの作品に参加してきた経験は、今作のなかでも間違いなく活かされ、SFと現実社会の境界線のようなものや、人間が持つ“不器用だけど美しい感情”を捉えることが非常に長けているのだ。
ウィアーによる物語の基礎にフィル&クリス、そしてドリューの人物描写や演出力が加わって、単なる小説の映画化ではなく、映像化した意義というものを見せつけてくれたといえるだろう。
【ストーリー】未知の原因によって太陽エネルギーが奪われ、数十年後に地球は氷河期に突入する。原因解明に向けて宇宙に送り込まれたグレース(ライアン・ゴズリング)は、科学の知識だけを武器にイチかバチかのミッション(プロジェクト・へイル・メアリー)に挑むが、この危機を救おうとする小さな相棒と出会い、共に愛する故郷を救うため宇宙の超難題に挑む。手探りの共同作業は、やがて孤独を癒す友情となり、何よりも守りたい〈存在〉に変わる。そして2人が辿り着いた、1つの答えとは……。
▼作品情報原題:PROJECT HAIL MARY監督:フィル・ロード & クリストファー・ミラー脚色:ドリュー・ゴダード 撮影:グレイグ・フレイザー 音楽:ダニエル・ペンバートン 原作:アンディ・ウィアー「プロジェクト・ヘイル・メアリー」(早川書房刊)出演:ライアン・ゴズリング、ザンドラ・ヒュラーほか公式サイト:https://ProjectHM.movie3月20日(金・祝)~全国の映画館にて公開
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